足趾挫滅創

監修医師：
井林雄太（井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院）

足趾挫滅創の概要

足趾挫滅創（そくしざめつそう）とは、足の指が強い力で挟まれたり、押し潰されたりすることによって生じる外傷の一種です。
挫滅とは、皮膚や筋肉、血管、骨などの組織が激しい圧力で破壊される状態を指します。交通事故や重い物の落下事故、機械作業中の挟み込みなどが主な原因となります。重症の場合は指の壊死や切断が必要となることもあるため、迅速な対応が重要です。

足趾挫滅創の原因

足趾挫滅創は、足の指やその周辺に強い打撲や圧迫などの外力が加わることによって生じる外傷です。日常生活のなかでも頻繁に見られる外傷の一つであり、その重症度は軽度な皮膚の損傷から、神経や血管など深部組織にまで損傷が及ぶ重度のものまでさまざまです。

受傷のきっかけとしては、家庭内で家や車のドアに足の指を挟んでしまう、転倒して足をぶつける、家具の角に足を打ちつけるなど、日常的な行動のなかで起こるものが多くみられます。

一方で、工場や農場での作業中に機械に巻き込まれたり、交通事故で歩行中に車両のタイヤに足をひかれたりするような場合には、より重度の足趾挫滅創が生じることがあります。このように、足趾挫滅創はその発生状況や外力の強さによって多様な形態をとる外傷であり、適切な初期対応と治療が重要です。

足趾挫滅創の前兆や初期症状について

足趾挫滅創は、皮膚や皮下組織、血管が強い外力によって損傷・離断されることで生じる重度の外傷であり、多くの場合、激しい痛みや大量の出血を伴います。損傷の程度が軽い場合でも著しい腫れや内出血を引き起こすことがありますが、重症の場合には神経や筋肉、腱の断裂、さらに骨折を合併することもあり、足の指の曲げ伸ばしが困難になる、感覚が鈍くなる、冷たく感じるといった機能障害が生じることがあります。これらの症状は、適切な治療を受けなければ、永続的な障害や変形につながる可能性もあるため注意が必要です。

また、挫滅創では組織が壊死しやすく、外部からの細菌感染にも弱いため、受傷直後から感染のリスクが高まります。特に、傷が深く開いている、泥や油などの異物が混入している、あるいは出血が止まらないといった場合には、迅速な処置が重要です。

受傷後にはなるべく早く医療機関を受診し、感染予防のための抗生剤投与や、必要に応じた洗浄・縫合・デブリードマン（壊死組織の除去）などの処置を受けることが推奨されます。

特に、足趾の変形や強い痛み、感覚異常、皮膚の色が悪くなるなど血流障害を示唆する症状がある場合は、緊急性が高く、早急な医療介入が求められます。

受診先としては、まずは救急科が対応しますが、損傷の程度や必要な処置内容に応じて、整形外科や形成外科での専門的な評価・治療が行われます。早期の診断と的確な治療によって、感染の予防や後遺症の軽減、回復の促進が期待できます。

足趾挫滅創の検査・診断

足趾挫滅創は、見た目だけでは損傷の程度を判断しにくいため、早期の医療機関受診と正確な診断が極めて重要です。無理に歩いたり患部に負荷をかけたりせず、できるだけ安静を保った状態で専門的な医療を受けることが望まれます。

受傷時の状況（どこで、どのようにして怪我をしたのか）については、本人もしくは周囲の方が救急隊員や医師に正確に伝えることが診断・治療の助けとなります。

医療機関では、創部に付着した異物や汚れ、血液を取り除くために、生理食塩水などを用いて洗浄が行われます。この処置の前に、痛みを軽減する目的で局所麻酔が施される場合もあります。

創傷の状態を詳しく評価するために、洗浄と同時に各種検査が迅速に進められます。レントゲン検査やCTなどの画像診断、問診および診察を通して、創の深さや骨折の有無、神経・血管への損傷の程度などを確認します。

緊急性が高いと判断された場合には、これらの検査と並行して、ただちに治療が開始されます。

足趾挫滅創の治療

足趾挫滅創の治療は、損傷の程度や受傷部位、合併する症状（骨折・神経損傷・感染など）の有無によって大きく異なります。

軽度の挫滅創では、まず傷口の洗浄と異物の除去を行い、感染予防のために抗生物質を投与します。傷が深い場合や出血が続いている場合には、止血処置や縫合が必要になることもあります。また、創部が不潔な状態であれば、壊死した組織を取り除くデブリードマンという処置を行い、創の清浄化を図ります。

中等度から重度の損傷では、皮膚や皮下組織の壊死、腱や神経、血管の断裂、骨折などが伴うことが多く、より高度な治療が求められます。
こうした場合には、形成外科や整形外科での専門的な外科的処置が必要となり、壊死組織の切除後に皮膚移植や皮弁による再建術が行われることもあります。神経や腱の断裂がある場合は、マイクロサージャリー （顕微鏡下手術）による修復手術が検討されることもあります。

さらに、感染リスクが高い状態やすでに感染を起こしている場合には、点滴による抗生剤治療、場合によっては感染部位の再手術が必要になります。特に糖尿病や末梢循環障害を持つ患者さんでは、感染が進行しやすく、治療が長期化する傾向があります。

重症例においては、損傷の程度によっては患部の部分切断を余儀なくされる場合もありますが、その際も患者さんの機能面・生活面への影響を最小限にとどめるよう、義肢装着やリハビリテーションが計画的に行われます。

治療後には、関節の拘縮予防や筋力・感覚の回復を目的としたリハビリテーションが重要となります。早期から理学療法士の指導のもと、可動域訓練や荷重訓練を進めることで、より良好な機能回復が期待できます。

足趾挫滅創になりやすい人・予防の方法

足趾挫滅創は、重い物を落としたり、足を何かに挟んだりすることで生じる怪我であり、日常生活のなかでも頻繁に見られます。

特に、重機や工具を扱う職業の方や、安全靴を着用していない作業者はリスクが高く注意が必要です。また、家庭内では、子どもがドアに足を挟まれて受傷する事故が多く報告されており、高齢者においても転倒による受傷のリスクが高まります。

このような足趾挫滅創を予防するためには、いくつかの重要な対策があります。まず、作業現場では安全靴や足部のプロテクターを着用することが基本となります。周囲の安全確認を怠らず、足元に物が落下する危険を回避する意識も必要です。靴の選択も大切であり、自分の足に合った適切なサイズ・形状の靴を履くことで、足指への圧迫や衝撃を防ぐことができます。狭すぎる靴は足指を締めつけ、大きすぎる靴は歩行中の安定性を損なうため、いずれも怪我の原因となり得ます。

家庭内では、小さな子どもがドアに足を挟まないように、ドアストッパーを設置するなどの工夫が有効です。また、高齢者の転倒予防のために、段差をなくしたり、滑りやすい床材に対策を施したりするなど、生活環境の整備も重要です。

さらに、日常的な足のケアも忘れてはなりません。爪を正しく切ることや、保湿、マッサージなどを行って足の健康を維持することも、予防の一環となります。

足趾挫滅創は、正しい知識と日々の注意によって予防できる怪我です。万が一受傷した場合でも、適切な治療と早期対応により、回復を早めることが可能です。痛みが続く場合や腫れが引かない場合は、速やかに医師の診察を受けることをおすすめします。