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小児外反扁平足
山田 克彦

監修医師
山田 克彦(佐世保中央病院)

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大分医科大学(現・大分大学)医学部卒業。現在は「佐世保中央病院」勤務。専門は小児科一般、小児循環器、小児肥満、小児内分泌、動機づけ面接。日本小児科学会専門医・指導医、日本循環器学会専門医。

小児外反扁平足の概要

小児外反扁平足とは、立ったときに子どもの足の土踏まずがなくなり、踵(かかと)が外側に傾く状態のことです。足は筋肉や靭帯によって支えられることで適切な形を保てますが、子どもは筋肉や靭帯が十分に成長していません。そのため、足が体重を支えきれずに形が崩れて、小児外反扁平足につながります。

小児外反扁平足は歩きはじめの子どもにみられることが多く、成長とともに消失していく傾向にあります。そのため、特別な治療を必要としないケースがほとんどです。

しかし足の筋肉が上手に使えなかったり、先天性の病気があったりすると、成長しても外反扁平足が残り、疲れやすさや痛みなどの症状につながることもあります。
そのような場合には、インソール(靴の中敷)を使用して足の形を整えたり、足の筋肉のストレッチ・筋トレをしたりなどの保存療法が効果的です。

また、このような治療は外反扁平足を大人になっても残存させないために効果的といわれています。とくにダウン症などの先天性の病気により小児外反扁平足が生じている場合は、成長により改善がみられないことが多いため、インソールなどの保存療法が推奨されます。

小児外反扁平足の原因

多くの場合、小児外反扁平足が生じる明らかな原因はありません。子どもの場合、筋肉や靭帯が未発達なために足の構造が崩れやすく、小児外反扁平足がみられることは決して珍しいことではありません。

通常、足は筋肉や靭帯によって支えられていて、立って体重を乗せた時に足の内側が浮く構造(内側縦アーチ:土踏まずのこと)になっています。しかし、小児の場合は筋肉や靭帯が未発達のため、体重によって土踏まずが潰れてしまい、外反扁平足になりやすいのです。

そのほか、ダウン症や先天性垂直距骨(せんてんせいすいこつきょこつ)といった先天性の病気が関与することもあります。

ダウン症は知的障害のほか身体異常がみられる先天性の病気で、筋肉や関節が柔らかいために足が不安定になる症状が特徴の1つです。そのため、ダウン症患者は土踏まずが発達せず、成長しても外反扁平足が持続する傾向にあります。

また、先天性垂直距骨では、生まれつき足の形がいびつであり、土踏まずがない状態で生まれてくるため、小児外反扁平足の原因となります。

小児外反扁平足の前兆や初期症状について

小児外反扁平足は歩きはじめに土踏まずがなくなる扁平足と、踵がハの字になる外反足が同時にみられる状態であり、痛みなどはっきりとした初期症状はありません。

足の形が悪いこと以外にみられる症状としては、足が疲れやすい、痛みやすいといった訴えがあります。このような症状は体重が増加し、活動性も高まる小学生低学年ごろからみられると考えられています。

足は土踏まずがあることで衝撃をやわらげる、力を出しやすくなるなどの働きがあります。しかし小児外反扁平足があり土踏まずの形が悪くなると、足が正常に機能しません。その結果衝撃が吸収できず疲れやすくなったり、痛みやすくなったりする場合があります。

小児外反扁平足は足の筋肉や靭帯が発達するとともに消失する傾向にあり、思春期までには自然と改善することが多いです。
しかし、ダウン症や先天性垂直距骨といった先天的性の病気が原因の場合、思春期をすぎても外反扁平足が残ることがあり、改善のために手術が必要なケースもあります。

小児外反扁平足の検査・診断

まずは医師の視診により、立ったときに土踏まずが潰れていないか、踵がハの字になっていないかを確認します。

小児外反扁平足が疑われる場合、必要に応じてレントゲンを撮影して、足の骨の構造や異常を詳しく調べます。
これらの視診とレントゲンによる結果を総合的に判断し、足の構造的な問題がある場合、小児科に相談した上で、専門の整形外科で診断します。

小児外反扁平足の治療

小児外反扁平足は成長とともに消失する傾向にあり、特別な治療が必要ないケースのほうが多いです。しかし、なかには成長しても外反扁平足が残存し、痛みや疲れやすさといった症状につながる場合もあります。

外反扁平足が消失せずに、痛みや疲れやすさが残る場合は、インソール(靴の中敷)を使用して土踏まずを作る矯正や、筋トレ・ストレッチなどの運動療法をおこなう保存療法が適応です。

なお、ダウン症や先天性垂直距骨などの先天性疾患があり、保存療法で効果が見られなかった場合には、手術を検討する場合もあります。

保存療法

保存療法では、インソールを使用します。インソールの目的は小児外反扁平足によって低下した足の機能を高めることで、バランスや筋力が高まったとの報告があります。

とくに2歳になっても、立ったときに足の外側が浮いているような子どもや、ダウン症の子どもに勧められることがありいます。ただし、インソールを使用してバランスや筋力が良くなったとしても、変形そのものが完全に治るわけではありません。

そのほか足の裏にある指の筋肉を鍛えたり、ストレッチしたりする運動療法もおこないます。具体的には足の指でグーパーしたり、タオルを足の指でたぐり寄せる運動、足の指を反らすストレッチなどを行うと、土踏まずの形成に効果的です。

また、先天性垂直距骨の場合にはギプス矯正が適応です。

手術療法

手術が必要になる場合は稀ですが、ダウン症で全身が柔らかいことで生じる小児外反扁平足に対しては、足首にネジを入れて動きを抑える手術が有効です。足首に入れたネジが踵の骨の動きを制限することで足首が安定し、小児外反扁平足を矯正する働きが期待できます。

先天性垂直距骨でギプス矯正での効果が見られなかった場合も手術を検討します。レントゲンで重症度を検査し、経過に応じて2〜4歳で手術します。

小児外反扁平足になりやすい人・予防の方法

小児外反扁平足は歩きはじめの子どもに多くみられる状態で、珍しいものではありません。しかし、大人になっても症状が残る場合もあり、予防のためには、前述した保存療法が効果的といわれています。

足指の運動やストレッチによって土踏まずの筋肉が発達し、小児外反扁平足の改善効果が期待できます。親と一緒に足の指でグーパーするなどして遊んだり、ストレッチしてあげたりすると土踏まずの形成を促せるでしょう。

運動やストレッチのほか、医師の診断の下でインソールを早い段階から使用することも予防に効果的です。立ったときに足の外側が浮いていたり、ダウン症で足が不安定だったりする場合には、歩きはじめから2歳ごろにかけてインソールを使用すると効果的と考えられています。


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