

監修医師:
前田 広太郎(医師)
ショイエルマン病の概要
ショイエルマン病は若年性後弯症とも呼ばれ、主に思春期に発症する胸椎の変形により脊椎が後弯(ねこ背のように背中がカーブする)する病気です。思春期の背部痛の重要な原因の1つです。脊椎の前方楔状変形が特徴です。通常のショイエルマン病は第7~9胸椎の胸椎カーブに異常をきたしますが、胸腰椎部に生じるショイエルマン病もあります。装具による保存的治療を行いますが、後弯の進行が強く痛みなどがあれば手術を行います。
ショイエルマン病の原因
正確な病因は不明ですが、遺伝的要因、ホルモン、血流、骨代謝が関与していると考えられています。一部では、一過性の骨粗鬆症や、胸骨が相対的に短いことによる脊柱への圧縮負荷が原因と推定されています。スポーツや重量挙げとの関連性については議論が分かれています。ショイエルマン病のメカニズムとしては、脊椎椎体(背骨を構成している骨)は軟骨内骨化により頭尾方向に成長していきますが、椎体の端の軟骨板の中には、環状骨端核という核があり、これが骨を作るのに重要です。環状骨端核は10歳以降に現れ14~17歳で完成します。環状骨端核は最終的に椎体とくっつき骨となりますが、その前に過度の力学的負荷がかかると変形したり、椎間板の終板・椎体への突出がおこり、後弯が生じるとされます。正常の胸椎角度は20~45%程度とされます。
鑑別疾患として半椎などの先天性側弯症、くる病など骨代謝性疾患、軟骨無形成症など後弯を呈する骨系統疾患、外傷、放射線治療、脊髄髄膜瘤や脊髄破裂に伴う脊髄麻痺などがあります。
ショイエルマン病の前兆や初期症状について
発症は思春期初期が多く、背部痛は胸椎部に限局します。痛みは急性ではなく、多くは慢性または間欠性であり、屈曲時や運動後、1日の終わりに悪化し、安静で改善します。脊髄症(四肢の麻痺など)を合併することはまれです。成人後も進行することがあり、平均30年後に年0.45度の後弯進行がみられたという報告もあります。成人期では腰痛や生活の質の低下を来すこともあります。
ショイエルマン病の検査・診断
背中を中心に身体診察を行います。立位側面観察で、明瞭な角度のある固定性後弯(前屈、伸展、仰臥位でも消失しない)を認めます。後弯の代償として腰椎前弯や、ハムストリングの緊張(前屈制限)を伴うこともあります。ただし、身体診察の感度・特異度は高くないとされています。画像診断としては、立位側面脊椎X線が必須です。X線で3椎体以上連続して前方楔状変形(5度以上)があるかどうか確認します。椎体終板の変性像もよくみられます。腰痛がある場合は胸腰椎における脊椎分離症の併存も考慮します。
ショイエルマン病の治療
多くは保存的治療が基本となります。ストレッチと筋力強化運動(背筋)を行うこと、鎮痛薬の使用、誘因の回避(長時間座位や屈曲姿勢)を行います。装具療法(ブレース)や手術(矯正固定術)は、疼痛が持続する場合や後弯角が60度を超える場合などに検討されます。手術の合併症としては神経障害や層部感染、固定具の圧迫による皮膚障害などがあり、術後も疼痛は約40%の患者で残るとされています。
ショイエルマン病になりやすい人・予防の方法
男性にやや多いとされますが男女ほぼ同比率でみられます。思春期における背部痛の最大20%がショイエルマン病によるとされます。欧米での有病率は4〜8%程度で男性に多く、特に背の高い男性は重症化しやすいとされていますが、国内での報告は限られており欧米よりも相当少ないと考えられます。遺伝的要因が大きいとされていますが、予防方法はありません。
参考文献
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