

監修医師:
林 良典(医師)
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目次 -INDEX-
変形性頸椎症の概要
変形性頚椎症(へんけいせいけいついしょう)は、頚椎(首の骨)の老化に伴う変性疾患の一つであり、椎間板や椎骨の変形、骨棘(こつきょく)の形成、靭帯の肥厚などが原因で神経や血管を圧迫し、首や肩の痛み、しびれ、運動障害を引き起こす病気です。特に加齢とともに発症しやすく、中高年の方に多くみられます。
頚椎は頭を支える重要な構造であり、日常生活の中で常に負担がかかっています。加齢や長期間の不適切な姿勢が原因で椎間板の弾力性が失われ、頚椎の構造が変化すると、神経の圧迫による痛みやしびれ、場合によっては歩行障害や手の細かい動作が困難になることもあります。
変形性頚椎症は、症状が軽度であれば保存的治療(薬物療法やリハビリテーション)で対処できますが、重症化すると手術が必要になる場合もあります。そのため、早期の診断と適切な治療が重要です。
変形性頸椎症の原因
変形性頚椎症の主な原因は、加齢による頚椎の変性ですが、日常生活の習慣や環境要因も大きく影響します。
加齢
年齢を重ねると、椎間板の水分が失われ、弾力性が低下します。これによりクッションの役割が弱まり、頚椎への負担が増えてしまいます。さらに、関節の摩耗が進むことで、骨の表面に突起(骨棘)が形成され、神経を圧迫しやすくなります。このため、年齢とともに首の動きが硬くなり、痛みやしびれの原因となることがあります。
不適切な姿勢
長時間のスマートフォンやパソコンの使用、デスクワークなどで前傾姿勢を続けると、首の筋肉に大きな負担がかかります。特に「ストレートネック」と呼ばれる状態では、本来カーブを描いている頚椎が真っ直ぐになり、頚椎への負担が増加します。このような姿勢の悪さが長期間続くと、椎間板や関節にダメージが蓄積され、変形性頚椎症のリスクが高まります。
外傷や過去の頚椎損傷
交通事故やスポーツでの強い衝撃が首に加わると、頚椎の構造が損傷し、後々の変形性頚椎症の発症につながることがあります。また、過去の外傷が原因で椎間板の劣化が早まり、症状が若い頃から出ることもあります。
遺伝的要因
頚椎の変形しやすさは、遺伝的な要素も影響します。家族に変形性頚椎症を発症した方がいる場合、自身も同じ病気になるリスクが高くなる可能性があります。遺伝的な体質に加えて、家族で似たような生活習慣を持っている場合も、発症リスクが高まる要因となります。
変形性頸椎症の前兆や初期症状について
変形性頚椎症は、初期の段階では自覚症状が少ないことが多いですが、次第に以下のような症状が現れることがあります。
首や肩の痛み・こり
特に朝起きたときや長時間同じ姿勢を続けた後に、首や肩に強いこりや痛みを感じることがあります。軽度の違和感が続く場合も、早期の対策が重要です。
手や腕のしびれ
神経が圧迫されることで、指先や腕にしびれを感じることがあります。症状が進行すると、物をつかむ力が弱くなったり、細かい作業がしにくくなったりすることがあります。
頭痛やめまい
頚椎の変形によって血流が悪くなると、後頭部の頭痛やめまいが起こることがあります。特に長時間のデスクワーク後にこうした症状が出る場合は注意が必要です。
診療科目
変形性頚椎症が疑われる場合、まずは整形外科を受診してください。しびれや筋力低下が強い場合は、神経内科や脳神経外科の診察が必要になることもあります。また、リハビリが必要な場合には、リハビリテーション科の受診がすすめられます。
変形性頸椎症の検査・診断
変形性頚椎症の診断には、以下のような検査が用いられます。
X線(レントゲン)検査
骨の変形や骨棘(こつきょく)の有無を確認するための基本的な検査です。短時間で撮影でき、頚椎の状態を評価するのに有効です。
MRI(磁気共鳴画像検査)
椎間板や神経の圧迫の程度を詳細に把握するために行われます。神経や椎間板の状態を詳しく観察できるため、症状が強い場合には特に有用です。
CT(コンピュータ断層撮影)
骨の構造を詳細に確認するための検査で、骨棘の形成や頚椎の変形をより詳しく見ることができます。
神経伝導検査
神経の障害の程度を調べるために行われます。電気刺激を用いて神経の反応を測定し、神経の機能低下があるかどうかを確認します。
検査結果をもとに、症状の進行具合や治療方針を決定します。早期発見と適切な診断が、症状の悪化を防ぐために重要です。
変形性頸椎症の治療
変形性頚椎症の治療は、症状の重さや進行度によって異なります。軽度の場合は、生活習慣の改善や保存療法を中心に行いますが、進行した場合には手術が必要になることもあります。
保存療法
痛みや炎症を抑えるために消炎鎮痛薬が処方されることがあります。また、理学療法として温熱療法や牽引療法を行い、首や肩の負担を和らげることが推奨されます。長時間の前傾姿勢を避け、首に負担をかけない姿勢を意識することも大切です。
運動療法
適度なストレッチや筋力トレーニングを行うことで、首や肩の筋肉を強化し、症状の悪化を防ぐことができます。特に、肩甲骨を動かすエクササイズや首周りのストレッチが効果的です。リハビリ専門医の指導のもと、無理のない範囲で運動を継続することが推奨されます。
神経ブロック注射
痛みが強い場合、神経の炎症を抑えるためにステロイドや局所麻酔薬を注射することがあります。この治療は、痛みを一時的に和らげる効果が期待できますが、根本的な改善にはならないため、ほかの治療と組み合わせて行うことが望ましいです。
手術
保存療法で改善が見られない場合や、神経症状(しびれや筋力低下など)が進行している場合には、手術が検討されます。主な手術法として、神経の圧迫を取り除く「椎弓切除術」や、損傷した椎間板を人工のものに置き換える「椎間板置換術」などがあります。手術の適応は症状や患者さんの状態によって判断されるため、専門医と十分に相談することが重要です。
変形性頚椎症の治療は、早期に適切な対応を取ることで、症状の進行を防ぐことができます。日常生活の工夫や定期的なケアを続けることで、首の健康を維持し、快適な生活を送ることが可能になります。
変形性頸椎症になりやすい人・予防の方法
変形性頚椎症になりやすい人
変形性頚椎症は、年齢や生活習慣、過去の外傷などが影響しやすいとされています。
まず、50歳以上の方は、加齢に伴い椎間板や関節が変性しやすく、頚椎の構造にも変化が生じやすくなります。そのため、年齢を重ねるにつれて発症のリスクが高まります。
また、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用によって前傾姿勢が続くと、首にかかる負担が増加し、頚椎に過剰なストレスがかかります。このような習慣が続くことで、変形性頚椎症を発症しやすくなります。
さらに、重い荷物を持つ仕事に従事する方や、ラグビーやレスリングなどのコンタクトスポーツを行う方は、首への衝撃を繰り返し受けるため、頚椎の変形が進みやすくなります。頚椎に強い負荷がかかることで、症状の発現や進行が早まる可能性があります。
加えて、過去に頚椎の外傷を経験した方も注意が必要です。外傷後は一時的に症状が落ち着いたように見えても、時間の経過とともに変形が進行し、痛みやしびれなどの症状が現れることがあります。
変形性頚椎症の予防方法
変形性頚椎症は、日常生活の工夫で予防することが可能です。
まず、正しい姿勢を意識し、スマートフォンを使用する際は画面を目の高さに合わせることが大切です。デスクワークの際には、椅子や机の高さを適切に調整し、背筋を伸ばした状態で作業を行うことを心がけましょう。
また、長時間同じ姿勢を続けることを避け、1時間に1回は立ち上がって軽いストレッチを行うと、首への負担を軽減できます。特に、首や肩のストレッチを習慣づけ、適度に筋力を鍛えることで、頚椎への負担を減らすことができます。
さらに、就寝時の姿勢にも注意が必要です。首の自然なカーブを保てる高さの枕を選び、適切な休息を取ることで筋肉の緊張を和らげましょう。
これらの対策を継続することで、健康な頚椎を維持し、変形性頚椎症の発症を防ぐことができます。日頃から適切な姿勢や運動を意識し、首に負担をかけない生活を心がけることが大切です。
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