足関節脱臼骨折

足関節脱臼骨折の概要

足関節脱臼骨折は、足首の関節が脱臼し、同時に周囲の骨が折れてしまうケガです。このような損傷は、通常、激しい外力が加わった場合に発生します。日常生活に大きな影響を及ぼすため、迅速な診断と治療が重要です。

足関節の解剖とその働き

足首は、すねの脛骨（けいこつ）とふくらはぎの腓骨（ひこつ）という2本の骨、そして足の骨である距骨（きょこつ）によって構成されています。これらの骨が正しい位置で組み合わさることで、足首の安定性と動きを保っています。また、足首は歩行時の衝撃を吸収し、体重を足全体に分散させる重要な役割を持っています。この構造があるおかげで、私たちは歩く、走る、跳ぶといった多様な動作が可能になります。

さらに、これらの骨を繋ぎ止める靭帯が足首の安定を保つ重要な役割を果たします。代表的な靭帯には、内側の三角靭帯と外側靭帯があります。靭帯は骨同士を強く固定し、関節が不必要に動きすぎるのを防ぎます。これらが損傷すると、関節の動きが不安定になり、歩行や日常生活が困難になる場合があります。また、足首周囲の筋肉もまた、安定性を高める役割を担っており、これらが損傷すると回復が遅れることがあります。

脱臼の種類

脱臼には、おもに前方脱臼と後方脱臼の2種類があります。前方脱臼は、足首が強い衝撃で前方にずれてしまうタイプで、後方脱臼は逆に足首が後方にずれる状態を指します。前方脱臼は転倒やスポーツ中に前向きの力が加わることが多いのに対し、後方脱臼は交通事故などで足首に後ろ向きの力が加わることが原因になる場合が多いです。どちらも骨折を伴う場合が多く、それぞれに応じた治療が必要です。また、外傷の程度によっては複雑脱臼骨折と呼ばれる、関節と骨が大きく変形した状態になることもあります。

足関節脱臼骨折の原因

足関節脱臼骨折の原因には、以下のようなものがあります。

転倒やスポーツ中の事故

高所からの落下や激しいスポーツで、足首に強い力がかかることで発生します。特に、スキーやバスケットボールなど、足首に負担がかかりやすいスポーツで起こりやすいです。足首が急激に大きな力でひねられるため、関節が脱臼し、周囲の骨が損傷します。

交通事故

車やバイクの衝突で足首が圧迫される場合に受傷します。車のブレーキペダルを踏ん張っている最中に足首に大きな力を受けるケースが多いです。高エネルギーの外力が足首に集中し、骨や靭帯が破壊されます。

骨粗鬆症（こつそしょうしょう）

骨がもろくなっていると、少ない力でも骨折を引き起こしやすくなります。特に高齢者はリスクが高いでしょう。骨密度が低下し、外部からの衝撃を吸収できません。

足関節脱臼骨折の前兆や初期症状について

強い痛み

骨や靭帯が損傷することで、激しい痛みを感じます。痛みは足首だけでなく、下腿や足部にも放散することがあります。これは損傷部位の神経が刺激されるためです。

腫れと変形

脱臼骨折を起こすことで、足首が腫れ上がり、不自然な形になることがあります。腫れは骨折による損傷部位周辺の炎症によるものや、損傷部位に血液がたまることで起こります。また、関節が正常な位置から外れることで目に見える変形が生じます。

関節の可動制限

関節が脱臼しているため、動かせない、または動かすと激痛が発生します。これにより歩行も困難になります。動かすことで、損傷した組織がさらに刺激され痛みが増します。

内出血

皮膚の下に血液がたまり、青紫色になります。内出血は靭帯や血管が破損していることを示します。

診療科について

足関節脱臼骨折を受傷した場合は、おもに整形外科での対応が必要になります。

足関節脱臼骨折の検査・診断

足関節脱臼骨折を診断するためには、以下のような検査を行います。

レントゲン撮影

骨折の有無や関節のずれを確認するために行います。脱臼の方向や骨折の種類の把握に役立ちます。簡便かつ迅速に骨の状態を評価できるため有用です。

CTスキャン

骨の詳細な状態を調べ、複雑な骨折の有無を確認します。3D画像を用いることで、骨折の正確な位置関係を把握できます。手術の必要性を判断するために重要な検査です。

MRI

靭帯や周囲の軟部組織の損傷を確認するために行われます。特に靭帯損傷が重度の場合、その治療計画を立てるために役立ちます。また、軟部組織の腫れや炎症の程度も評価できます。

血液検査

外傷に伴う炎症や感染症のリスクを評価するために実施されることがあります。感染症の早期発見や治療が可能となります。

これらの検査は、正確な診断と治療計画を立てるために必要となる場合があります。特に、複雑な損傷の場合は、検査結果から総合的に判断し、治療方針を決定する必要があります。

足関節脱臼骨折の治療

足関節脱臼骨折の治療には、以下のような治療法があります。

応急処置

足首を固定し、腫れを抑えるために冷却します。痛みを和らげるために鎮痛剤が使用される場合もあります。応急処置の目的は、さらなる損傷を防ぐことと、苦痛を軽減することです。

整復（せいふく）

骨折した骨を元の位置に戻す処置を『整復』と言います。一般的に麻酔を使用し、整復後はレントゲンで正確な位置を確認します。整復が適切に行われないと、痛みが長引いたり関節が正常に機能しなくなる可能性があります。

固定

ギプスなどで足首が動かないように固定します。固定期間は損傷の程度に応じて数週間から数ヶ月に及ぶことがあります。骨や靭帯が正しい位置で治癒することを助けます。

手術

骨が大きくずれている場合や靭帯が損傷している場合、骨折によって生じた骨の欠片が血管や神経を損傷している場合には手術が必要です。金属プレートやスクリューを使用して骨折部を固定します。

リハビリテーション

筋力を取り戻し、足首の動きを安定・改善するためにリハビリテーションが行われます。リハビリテーションは、長期的な機能回復を目指すために重要です。

痛みの管理

痛みを軽減するために消炎鎮痛剤を使用することがあります。また、長期的な痛みを防ぐために、定期的なフォローアップと治療が必要です。痛みが残る場合は、神経ブロックや理学療法が用いられることもあります。

足関節脱臼骨折になりやすい人・予防の方法

なりやすい人

• 高齢者：骨が脆くなっているため、骨折のリスクが高いです。特に転倒しやすい環境にいる場合、リスクがさらに高まります。加齢に伴う骨密度の低下が主な原因です。
• スポーツ選手：足首を酷使するため、外傷を受けるリスクが高まります。特にジャンプや急な方向転換を伴うスポーツでは、足首にかかる負荷が大きく、靭帯や筋肉が繰り返しストレスを受けます。
• 肥満：体重が増えることで、足首への負担が増加します。肥満によって筋力低下や姿勢の不安定性を引き起こす可能性もあります。
• 既往歴のある人：過去に足首を捻挫したり骨折した経験があると再発しやすいです。一度損傷を受けた組織は、わずかに後遺症が残っていることがあります。

予防の方法

• 運動前のストレッチ：筋肉や靭帯を柔軟にすることでケガのリスクを軽減します。ストレッチは筋肉の柔軟性を高め、急激な動きによる損傷を防ぎます。
• 適切な靴の選択：足に合った靴を履くことで、足首を安定させます。足首への負担を軽減するために、衝撃吸収性のあるインソールを使用するとより効果的です。
• 骨の健康を維持する：カルシウムやビタミンDを十分に摂取し、骨を強く保ちましょう。定期的な運動も骨密度を高めます。健康な骨は衝撃に対して強くなり、骨折しにくくなります。
• 体重管理：足首への負担を軽減するため、肥満の人は減量することが効果的だと言われています。体重管理は、足首だけでなく全身の健康維持にも効果的です。
• 環境整備：転倒しやすい場所を整理することで、安全な環境を作ることが大切です。特に高齢者のいる家庭では、段差や滑りやすい床を改善することが重要です。

これらの予防法は、足首にかかる負担を減らし、脱臼や骨折の発生を抑える効果があります。さらに、日常的に運動習慣をつけることで、筋肉や靭帯の強度が向上し、足首の安定性が高まります。