

監修医師:
大坂 貴史(医師)
大理石骨病の概要
大理石骨病は骨の新陳代謝を担う破骨細胞が正常に働けないために、骨が非常に硬く、そして脆くなる病気です。原因となる遺伝子異常が知られていて、遺伝性疾患の側面があります。未熟な骨が骨髄腔を狭めてしまうために骨髄機能不全がおきたり、神経を圧迫することによる難聴や顔面神経麻痺のほか、病的な骨折、骨の形成不全が症状として現れます。治療は対症療法がメインです。出生後すぐに発症する重症型は生命予後不良ですが、幼少期以降に見つかるタイプは成長とともに骨関節の形成不全や機能異常、病的な骨折などに悩まされる方もいます。
指定難病であり、患者の治療は医療費助成の対象です。
大理石骨病の原因
大理石骨病の原因は、骨の新陳代謝を担う破骨細胞に関連する遺伝子の異常です。レントゲン検査で骨が大理石のように見えることから大理石骨病と呼ばれています。
破骨細胞は古い骨を壊し、新しい骨を作る細胞と協力して骨を常に若々しい状態に保つはたらきがあります。骨は硬ければ硬いほどよいというわけではなく、ある程度のしなやかさを持っていることが重要ですが、常に骨の構成成分を新鮮な状態に保つことで、骨の機械的特性が適切な範囲に保たれています。
大理石骨病では破骨細胞が正常に働けなくなり、正常な骨のリモデリングが障害されます。
すると未熟な骨が正常な骨に置き換わらなくなってしまい、骨自体は硬いのに脆 (もろ) くなってしまいます。
硬い一方で脆いものとして、黒板用のチョークが近いかもしれません。チョークはしなやかさがないので横方向の力が加わると砕けてしまいます。人が運動すると骨に様々な方向から力が加わるので、しなやかさを損なう程度に硬くなる大理石骨病患者の骨は折れやすくなってしまうのです。
大理石骨病の前兆や初期症状について
未熟な骨が溜まってしまうことにより「骨髄腔」という骨の中の空間が狭くなってしまいます。骨髄腔に詰まっている骨髄は血球を作る大事な場所なのですが、大理石骨病では血球を作るスペースが狭くなることにより「骨髄機能不全」という状態に陥ることがあります。
大理石骨病は発症時期から、出生後から骨髄機能不全をきたす重症の新生児型と、成長するにつれて偶然発見される比較的軽症の遅発型の、2つに大別されます (参考文献 1, 2) 。
骨髄機能不全の症状としては疲れやすい、元気がないといった貧血症状や、血小板が少なくなることにより痣 (あざ) ができやすくなる、白血球が少なくなることによって感染症にかかりやすくなるという症状があります。
大理石骨病では骨髄腔のみならず、神経の通り道が狭くなることがあります。頭蓋骨の骨が分厚くなることによって難聴や視力障害、顔の動かしにくさといった症状が出ることがあります (参考文献 1, 2) 。
そのほかにも脊柱側弯症や関節障害、歯が正しい形に作れない、下顎の骨髄炎症が代表的な症状です (参考文献 1) 。
出生後から症状がみられる場合には骨髄機能不全や水頭症、電解質異常で気づかれることがあり、致命的になりえます。赤ちゃんの体調がおかしいと思ったら、すぐに担当の医療スタッフやかかりつけの小児科へ相談してください。
小児期以降には「骨折のしやすさ」や「体の変形」で気づかれることがあります。気になる症状があれば小児科や整形外科を受診してください。
大理石骨病の検査・診断
出生後発症の重症型では比較的早期に診断されることが多いですが、軽症の場合にはレントゲン検査をしたときに偶発的に診断されることがあります (参考文献 1) 。これは病名の由来にもなったような特徴的な画像所見が得られるためです。
大理石骨病では原因となるような遺伝子異常がいくつか知られており、病型や重症度診断の評価に有用です (参考文献 1, 2) 。
大理石骨病の治療
大理石骨病の治療は対症療法が中心になります。骨髄機能不全に対しては骨髄移植が試みられているようですが、まだ治療法としては確立していません (参考文献 1) 。現状輸血での対応がメインになります。
骨折に対しては手術での整復が試みられますが、大理石骨病患者の骨は非常に硬くなっているため、通常の手術機材での治療が困難です (参考文献 1, 2) 。また、折れた骨がくっつくのも遅いため骨折すると治療に難渋することが多いです (参考文献 2) 。そのほかにも難聴には補聴器を使うなど、根本的な治療が難しいのが現状です。
大理石骨病になりやすい人・予防の方法
大理石骨病は原因となる遺伝子異常がしられており、遺伝性疾患の側面があります。出生後すぐに発症する重症型は生命の危機に直結する疾患であるうえに常染色体劣性遺伝であるため、次の世代にそのまま遺伝することはほとんどありません (参考文献 1) 。
比較的軽症の遅発型は常染色体優性遺伝形式であり、子どもを作ることも可能なため、次の世代に遺伝する可能性があります (参考文献 1) 。血縁関係者に遅発型の大理石骨病患者がいる場合には発症リスクが高いと言えるでしょう。
遺伝性疾患であるため、遺伝形質を受け継いでいる場合には発症を予防することは難しいです。大理石骨病患者の骨折は治療に難渋します。スポーツ参加が難しくなるほか、職業選択の面でも肉体的負荷が少ない職を選ぶことを余儀なくされます。出産の場合にも分娩の方法を工夫する必要があります (参考文献 1) 。年齢を重ねると骨変形や関節の可動域制限も重くなっていき、神経症状も進行していきます。
自分の望む生活をなるべく保てるように、医療費助成制度をはじめとした様々な福祉制度の利用を検討してください。




