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病的骨折
眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

病的骨折の概要

病的骨折とは、何らかの疾患が原因で骨が脆くなることで生じる骨折です。
たとえば、骨粗鬆症や転移性骨腫瘍などの疾患では骨の内部がスカスカになり、通常なら骨折しない程度の小さな衝撃でも骨折が生じやすくなります。

病的骨折に対する治療は通常の骨折と同様に、骨がくっつくまで骨折部位を固定し、動かさないことが重要です。骨折部位の固定と並行して、原疾患に対する治療もおこないます。

病的骨折の検査はレントゲン検査が主流です。しかし、レントゲンでは映らないほどの小さな骨折である可能性もあるため、必要に応じてMRIやCTなども検討します。

病的骨折の予防のためには、原疾患の治療とあわせて、転倒防止のための環境整備や筋力向上のためのリハビリが重要です。

病的骨折の原因

病的骨折の原因となる疾患は、主に以下のようなものが挙げられます。

  • 骨粗鬆症
  • 転移性骨腫瘍(他臓器がんの骨への転移)
  • 原発性悪性骨腫瘍(骨肉腫など骨に発生するがん)
  • 化膿性骨髄炎
  • 先天的な骨の異常 など

これらの疾患によって骨が脆くなり、本来であれば骨折しないようなわずかな外力(転倒などで骨に伝わる衝撃)でも骨折しやすくなります。

通常の骨は海綿骨(骨の内部)が詰まっていて、外力に対して強い構造を持っています。しかし骨粗鬆症や骨肉腫などでは海綿骨が減少し、骨の内部がスカスカな状態になります。
そのため、わずかな外力で折れるほど脆くなり、病的骨折につながりやすくなります。

病的骨折の前兆や初期症状について

骨密度が下がることが病的骨折の前兆といえるでしょう。

骨密度とは骨の強度を表す指標のことで、骨を構成するカルシウムやリンなどのミネラル量によって測定されます。
骨密度は加齢とともに減少し、とくに女性は女性ホルモンのバランスが乱れる閉経後に顕著に下がる傾向があります。

病的骨折後の症状は骨折と同様に、骨折した部位の腫れ・痛みが生じます。また、痛みによって関節を動かせる範囲が狭くなったり、気分が悪くなったりすることもあります。

病的骨折の症状の重さは、骨折の重症度によって変化します。骨密度が低いほど骨が脆く、病的骨折を起こすと重症化しやすいため注意が必要です。

病的骨折の検査・診断

病的骨折の検査・診断は主にレントゲンが用いられます。大きな骨折であればレントゲンで確認できますが、レントゲンに映らないヒビなどの小さな骨折ではMRI・CTが有効な場合もあります。

また、レントゲンや他の画像検査で病的骨折が疑われる場合には、骨粗鬆症や転移性骨腫瘍などの原疾患がないか確認する必要があります。

骨粗鬆症の検査は骨密度の検査をおこないます。加えて、骨粗鬆症の治療法を決定するために、骨代謝マーカーという血液検査も実施します。

転移性骨腫瘍にはMRIや骨シンチグラフィーが有効です。MRIでは骨折部位にある転移性骨腫瘍の大きさや範囲を確認できます。
骨シンチグラフィーは全身の骨代謝(こつたいしゃ:骨を作り変える能力)が測れる検査で、転移性骨腫瘍が全身のどの部位にあるかを確認できます。

病的骨折の治療

病的骨折の治療では、折れた骨が元どおりくっつくまで負担をかけないことが重要です。ギプスやシーネと呼ばれる固定具を利用して、骨が動かないように固定して骨がくっつくのを待ちます。痛みに対しては、消炎鎮痛剤が有効です。

骨折が判明した時点で骨折部がずれて、骨の形が歪んでいる場合には手術で骨折部を正しい位置に整復します。

骨折が治癒して関節が動く範囲や筋力に悪化がない場合にはそこで治療が終了します。ただし、固定期間が長くなるほど可動域も悪くなることが多く、関節の動きや筋力の悪さなどの後遺症がある場合には、リハビリで機能回復を目指します。

また、病的骨折の場合には骨折の治療と並行して、病的骨折の原因となった病気への治療もおこないます。
骨粗鬆症に対しては内服や注射での治療が中心です。血液検査で有効な治療薬を判断し、定期的に投与します。また、適度な運動は骨密度の維持や向上に効果的だと言われています。

骨腫瘍では抗がん剤の内服や点滴のほか、放射線治療や腫瘍組織の摘出手術を検討します。また、がん治療では体力が低下することが多々あるため、リハビリなどを行い再骨折の予防に努めます。

病的骨折になりやすい人・予防の方法

病的骨折は、骨粗鬆症やがんなどを患っている人がなりやすいと言えるでしょう。そのため、過去から現在においてこれらの病気に罹ったことがある人は病的骨折のリスクに気をつける必要があります。

病的骨折は、転倒など骨に衝撃がかかったときに骨折することが多いです。そのため、バランス練習や下半身・体幹の筋力強化は病的骨折の予防に有効です。

また、転倒しないように自宅内の環境なども整えましょう。自宅に手すりを設置したり、外出の際には杖を使用したりして転倒を予防することが、病的骨折の予防につながります。


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