

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
線維性骨異形成の概要
線維性骨異形成とは、遺伝子の異常により骨の表面に発生する良性腫瘍です。1つの骨に発生する「単骨型」と、複数の骨に発現する「多骨型」に分類され、遺伝はしません。
線維性骨異形成は出生後に生じる色素沈着が特徴的です。
そのほか頭蓋骨に生じた場合には顔面の非対称や視神経障害などが起こり、下肢に生じたときには歩行障害などの症状がみられます。
骨がもろくなることで、外的な刺激によって病的骨折も生じやすくなるため注意が必要です。また、内分泌疾患を生じることもあるため、発症後は定期的な検査が重要になります。
線維性骨異形成には根本的な治療薬がなく、症状が進行している場合には手術での摘出が選択されます。そのほかの症状に対しては、各診療科の専門医との連携が必要になります。
線維性骨異形成の発症予防は困難ですが、定期検査によって重症化を抑えることは可能です。病的骨折につながらないよう、激しい接触を伴うスポーツなどには注意しましょう。

線維性骨異形成の原因
線維性骨異形成は、骨を形成する遺伝子に異常が生じることで発症します。
遺伝子異常が起こる原因については解明されていません。
ただし、遺伝子異常は親から子に遺伝するものではないため、家族には影響がないといえます。
線維性骨異形成の前兆や初期症状について
線維性骨異形成では、出生後に生じるカフェオレ斑とよばれる、皮膚にあらわれる薄い褐色調の色素斑が特徴的です。また、骨として成長すべき組織が変質し、骨の表面が線維性の組織になりもろく変形します。
変形により、神経や内臓が圧迫されてさまざまな症状を引き起こします。
頭蓋骨に線維性骨異形成が生じた場合、顔面の非対称や視力の低下、複視、頭痛などの症状がみられます。
大腿骨(ふとももの骨)や脛骨(すねの骨)に生じた場合には歩行障害のほか、転倒などの衝撃により病的骨折につながる可能性もあります。
背骨に生じた場合には側湾症のリスクが高くなります。線維整骨異形成による側湾症は急激に進行する可能性があるため、注意が必要です。
そのほかの症状として成長ホルモンの異常分泌や思春期早発症、甲状腺機能亢進症などの内分泌機能異常も起こることがあります。これらの症状の有無や重症度によって線維性骨異形成の予後が判断されます。
線維性の組織は良性腫瘍の一種と考えられていて、ほとんどのケースで悪性化しません。
線維性骨異形成の検査・診断
線維性骨異形成は、皮膚症状や骨の変性、内分泌疾患などの特徴的な症状が2つ以上あれば診断されます。視診では特徴的な皮膚の色素沈着(カフェオレ斑のような色素沈着)の有無について確認します。
加えて、画像検査ではレントゲンやMRI、CTが有効です。レントゲンでは、腫瘍組織に関わる骨の変形が確認できます。
CTやMRIでは骨の厚さや神経の圧迫も確認できるため、線維性骨異形成が頭蓋骨に発症した際の視神経への影響を確認できます。
画像検査によって線維性骨異形成が疑われる場合、生検をして病理検査をおこないます。病理検査で遺伝子の異常が確認できれば、線維性骨異形成の確定診断になります。
特徴的な内分泌疾患に対しては、血液検査や超音波エコー検査をおこないます。
血液検査によって甲状腺機能や成長ホルモンを測定し、超音波エコー検査で精巣・卵巣の状態を確認することで、思春期早発症の判断が可能です。
線維性骨異形成の治療
線維性骨異形成の治療において、現在のところ根本的な治療薬はありません。
線維性骨異形成が大きくなったり、神経症状が発現していたりする場合は手術での切除が適応となります。
無症状の場合は治療せずに経過観察となるケースもありますが、線維性骨異形成はまれに悪性化するリスクがあるため、発症後は経過観察が大切です。
また、下肢の線維性骨異形成による歩行障害や病的骨折に対しては整形外科、甲状腺機能亢進症や思春期早発症などの内分泌疾患に対しては内科の治療が必要です。
腫瘍組織の経過観察に加えて、それぞれの症状の対症療法によって線維性骨異形成の予後が決まります。
線維性骨異形成になりやすい人・予防の方法
線維性骨異形成は遺伝子の異常により発症する疾患で、特定のリスクがある人や予防の方法は明らかになっていません。ただし、線維性骨異形成を発症した後は、悪性化や合併症を防ぐための定期検査が重要です。
頭蓋骨に線維性骨異形成が生じた場合は視神経や脳への影響がないか、脊柱にできた場合は側湾症が悪化しないかなどを注意深く観察する必要があります。
思春期早発症や成長ホルモンの異常分泌などが疑われる場合、定期的な超音波エコー検査や血液検査によって、発育過程についても注意深く観察する必要があります。そのための定期的な超音波エコー検査や血液検査も重要です。
また、サッカーやラグビーなどの激しい接触を伴うスポーツは、病的骨折のリスクを考慮して避けるべきでしょう。
関連する病気
- 思春期早発症
- 甲状腺機能亢進症
- 病的骨折
- 脊柱側湾症
参考文献




