

監修医師:
岡田 智彰(医師)
膝内障の概要
「膝内障」(しつないしょう)は、一言で言えば「膝が痛い・腫れる・動きにくい」症状の総称です。関節が動きにくい(または動かない)、違和感や膝抜け、腫れ、痛みを引き起こす症状全般を指します。具体的には膝の骨、靭帯、半月板、関節軟骨などの骨、軟骨、腱などに症状がある病態の総称です。
「膝内障」という名前は正式な疾患名ではありません。半月板損傷、靭帯損傷、膝特発性骨壊死など、多くの疾患が含まれた仮名です。
複数の疾患が絡んでいるケースもあるため、早急な確定診断が必要です。早期に適切な治療とリハビリを続け、適切な期間休むことが完治につながります。
病状だけで原因疾患を断定することが難しいため、自己判断せず早めに整形外科を受診しましょう。
膝内障の原因
膝内障の原因はとても多く、スポーツや日常生活での膝の負荷、怪我や事故、肥満、成長期、加齢などがあります。
特にスポーツ事故で多く発生します。膝に無理な力が加わると、膝関節のクッションの役目をする軟骨、半月板が損傷することがあります。(半月板損傷)膝のじん帯が切れる(膝関節捻挫)、脱臼なども膝内障の疾患です。
これらの外傷は、サッカーやラグビーのように選手同士が激しくぶつかり合うスポーツ、スキーのように膝で衝撃を受けるスポーツ、陸上競技やバレーボールやテニスなどジャンプや走行、反復運動などで膝に過度な負荷をかけるスポーツで生じることがあります。
事故などで膝に強い負荷がかかると、同様の症状が起こることがあります。長期的な膝への負荷も原因になります。登山やジョギング、肥満などで発症率が上がります。
膝蓋骨の形の異常や膝蓋腱の太さや方向の異常などで、生まれつき膝蓋骨が脱臼しやすい方がいます。歩くだけでは異常はないですが、ジャンプするなど膝を曲げ伸ばす運動をすると膝蓋骨が脱臼し、一部が骨折することもあります。(膝蓋骨脱臼)
高齢になると膝関節が変形し、変形性膝関節症などの発症リスクが上がります。加齢で半月板が固くなる、半月板損傷や化膿性関節炎の後遺症で症状が悪化することがあります。
膝内障の前兆や初期症状について
スポーツなどの接触事故や、膝に過度な負荷をかけた後に、膝が痛い、腫れた、熱を帯びている、動かしにくいなどの症状があれば、膝内障の可能性が高いでしょう。骨折した骨や軟骨のかけらが膝関節にはまり、物理的に突然膝が曲がらなくなり激痛を覚える症状もあります。(ロッキング)
膝に痛みがなくても、O脚が悪化した、関節が動かしにくくなった場合も、膝内障を疑います。階段を上がるときに、急に膝に力が入らなくなる症状(膝くずれ)も同様です。
放置しておくと悪化する一方で、完治が難しくなります。痛みがほとんどなくても、痛みを感じにくいじん帯(前十字靭帯など)が断裂していることは珍しくありません。
スポーツや事故で膝に激しい衝撃を受けた場合はもちろん、運動習慣がなくても膝に少しでも違和感があれば、できるだけ早く整形外科を受診しましょう。
激しい痛みや腫れ、ロッキングがあれば、膝を固定して無理に動かさず、早急に整形外科を受診して下さい。
膝内障の検査・診断
患者さんの症状や病歴、触診、関節可動域の評価、画像検査など、多角的に膝関節内の異常を調べます。
問診
問診では患者さんの症状について尋ねます。
- 膝の痛みや腫れ、動きにくさ、動かない感覚などの症状があるか
- 症状がいつ頃から始まったか
- 事故やスポーツなどで、外傷や膝に過度の負荷をかけたか
- 登山やジョギング、サイクリングなど膝の負担が強い運動習慣があるか
- 体重が増えたか
問診は膝内障の原因や病態を推測する重要な手がかりとなります。
身体診察
身体診察は病状を把握するために欠かせません。腫れ、熱感、関節液の貯留(関節水腫)の有無などを確認します。
膝関節を動かし、可動域制限の有無や痛みの発生部位を調べます。また靭帯損傷や半月板損傷に限定した診察などを行い原因を予想します。
画像診断
関節の骨の異常はレントゲンやCTで、半月板やじん帯などの異常はMRIで確認します。MRIは半月板の損傷、靭帯断裂、滑膜の炎症、関節内遊離体など、膝内障の原因となる軟部組織の異常を詳細に写し出します。確定診断と、今後の治療計画の指標になります。
関節鏡検査
関節の内部を直接観察する必要がある場合は、関節鏡検査が行われることもあります。関節内に小さなカメラを挿入し、直接観察する手法です。
患者さんの負担が強い検査ですが、診断と治療を同時に行えるのが利点です。切開手術よりも負担が軽いのも特徴です。
膝内障の治療
膝内障の治療法は疾患により異なりますが、おおよその流れはほぼ同様です。
軽症の場合は痛みや炎症を抑え、安静を保つ「保存療法」を行います。
サポーターなどで膝を保護し、アイシング(冷却)して炎症を鎮めます。
一般的な治療は抗炎症剤の服用、ヒアルロン酸注射、ステロイド注射などです。
リハビリテーションで膝周囲の筋力の強化、関節の安定性の向上を図り、症状の緩和や完治を目指します。
関節液や血が過剰に溜まっている場合は、定期的に注射器で抜く事も消炎鎮痛に効果的です。
一方、「手術療法」は
- 保存療法で十分な改善が得られない
- 半月板や靭帯が完全に損傷している
- 関節内に遊離体がある
などの場合に選択される傾向にあります。
手術は関節鏡視下手術が主流です。関節内に小さなカメラを挿入し、患部の観察、損傷した半月板の修復や切除、断裂した靭帯の再建、関節内遊離体の摘出などを行います。
靭帯損傷の場合には、腱移植を用いた再建術が行われることもあります。
変形性膝関節症が原因の場合、症状が進行している場合には人工関節置換術が必要となることもあります。この手術では、損傷した関節面を人工の素材(金属やポリエチレン)で置き換えることで、痛みの緩和と機能の改善を目指します。
膝内障になりやすい人・予防の方法
疾患により発症しやすい人はさまざまです。
変形性膝関節症は高齢女性に多く、半月板損傷はスポーツ選手や重労働者、半月板が加齢で劣化する高齢者に目立つ疾患です。
膝の軟骨が剥がれる膝離断性骨軟骨炎や骨が靭帯によって引き伸ばされ痛みとなるオスグッド病などは、成長期の小児に発症リスクがあります。
半月板損傷はスポーツ、登山、頻回の階段昇降によって発症するリスクがあります。膝を不自然な方向に曲げてしまった、膝に強い衝撃を受けた場合は、痛みがなくても早めに医療機関を受診しましょう。
いずれの膝内障も予防は「無理をしない」ことです。
試合に復帰できない焦りがあっても、必ず指示された期間は安静にしましょう。痛みが消えても、自己判断で再開することは厳禁です。再開するときはテーピングなど処置を行い、完治するまでは定期的に医療機関を受診することも大切です。
日常生活にも制限があります。治療中の方は正座や和式トイレなど、膝を折り曲げる習慣は控えましょう。適切なリハビリを続け、膝を支える筋肉を鍛えることで悪化を防ぐことができます。
参考文献