

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
骨嚢腫の概要
骨嚢腫(こつのうしゅ)とは、骨の内部に嚢胞(のうほう:袋状の空胞)ができる病気です。骨嚢胞(こつのうほう)と呼ばれる良性腫瘍に似ています。
上腕骨(腕の骨)と大腿骨近位端(ふとももの骨の股関節側)にできやすく、病的骨折の原因になります。女性よりも男性に多い病気で、小児から若年者に好発します。また、骨の成長とともに病巣が骨の端から骨幹部(骨の中心)に向かって移動する特徴があります。
骨嚢腫の原因として、外傷による骨髄内出血や炎症、骨髄内に残された滑膜組織、静脈の血流障害が挙げられます。
骨嚢腫は発症しても問題ない経過をたどることが多いですが、病的骨折や痛みを伴う場合には手術が選択されます。また、子どもで骨端線(こったんせん:骨が成長する部位)に近い箇所に骨嚢腫ができた場合は再発率が高いため注意が必要です。骨嚢腫の再発が繰り返されると、骨の変形につながる可能性があります。
治療方法は医師の判断によって、ステロイド注入法や自家骨髄液注入法、病巣掻爬(びょうそうそうは)などが実施されています。
骨嚢腫の原因
骨嚢腫の原因は、外傷によって骨髄内に出血や炎症が生じたり、骨の滑膜組織が骨髄に取り残されたりすることで、静脈の流れが滞るからだと考えられています。また、近年の研究では異常な遺伝子の存在によって発症している可能性も言及されています。
骨嚢腫の前兆や初期症状について
骨嚢腫は前兆がなく、捻挫や打撲でレントゲン撮影をしたときに見つかるケースがほとんどです。
また、骨嚢腫は徐々に大きくなる特徴があります。大きくなると病的骨折のリスクが高まるため、見つかった場合には定期的な検査が必要です。
骨嚢腫は初期から痛みを伴うケースは少ないですが、進行してから体重をかけたときや動かしたときに痛みを感じる場合があります。熱感や腫脹などが伴うことも少ないです。
骨嚢腫の検査・診断
骨嚢腫の診断は主にレントゲンやCT、MRIなどの画像検査によっておこなわれます。レントゲンでは、境界線がはっきりとした袋状の組織が周囲の骨に対して透けて見える特徴的な画像が確認できます。
CTやMRIは他疾患との鑑別をおこなう場合に用いられます。骨嚢腫は骨肉腫などの腫瘍性疾患とも所見が似ているため、CTやMRIによる鑑別が重要になります。
画像検査のみで他の腫瘍性疾患との鑑別が困難な場合は、病理検査や血液検査がおこなわれます。
病理検査では病変の一部もしくはすべてを切除し、顕微鏡で腫瘍組織の有無を確認します。
血液検査では腫瘍マーカーを調べることで腫瘍組織の有無を確認します。これらの検査で腫瘍性疾患の可能性が否定されれば、骨嚢腫と確定診断されます。
骨嚢腫の治療
骨嚢腫は骨嚢腫が発生した箇所や大きさ、年齢に応じて、ステロイド注入法、自家骨髄液注入法、病巣掻爬(びょうそうそうは)などが実施されています。
ステロイド注入法とは骨嚢腫のある箇所に抗炎症作用のあるステロイドを注入する方法です。自家骨髄注入法は自身の骨髄を採取して濃縮し、病巣に注入することで改善を促します。
病巣掻爬(びょうそうそうは)は骨嚢腫を袋ごと除去する方法です。原因となる病巣を除去した後、人工骨やピンで補強するため関節や骨への負担も軽減でき、再発が少ないといわれています。
病巣に対し、人工骨移植法やシャント法をおこなうこともあります。
骨嚢腫になりやすい人・予防の方法
骨嚢腫の発症率は女性より男性が高く、小児や若年者で発症しやすいことがわかっています。
骨嚢腫を完全に予防することは難しいですが、骨嚢腫によって起こる病的骨折は定期的な診察や適切な治療によって回避できます。
骨嚢腫は痛みや腫れなどの症状を自覚しなくても進行する可能性があるため、定期的な画像検査による状態の確認が重要です。骨嚢腫が大きくなるようであれば手術も検討し、病的骨折に至る前に対処しましょう。
参考文献