鼻骨骨折
江崎 聖美

監修医師
江崎 聖美(医師)

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山梨大学卒業。昭和大学藤が丘病院 形成外科、群馬県立小児医療センター 形成外科、聖マリア病院 形成外科、山梨県立中央病院 形成外科などで経歴を積む。現在は昭和大学病院 形成外科に勤務。日本乳房オンコプラスティックサージェリー学会実施医師。

鼻骨骨折の概要

鼻骨骨折(びこつこっせつ)は、一般的に「鼻の骨折」として知られており、顔面のけがの中でも特に多いものです。鼻は顔の中央に位置し、骨や軟骨(なんこつ)で構成されているため、外部からの衝撃を受けやすい部位です。このため、転倒やスポーツ中の事故、けんかなどが原因で骨折することがあります。
鼻骨を骨折すると、痛みや腫れ、目の周りのあざなどの症状が現れることがあります。また、鼻の形が変わってしまう場合もあり、見た目に関する悩みにつながることもあります。鼻骨骨折は通常、生命にかかわるものではありませんが、適切に治療しないと変形が残る可能性もあります。このため症状、診断方法、治療法について理解することが大切です。

鼻骨骨折の原因

鼻骨骨折は、顔に直接強い衝撃を受けることで発生します。主な原因は以下のとおりです。

  • スポーツ中のけが
    サッカーやバスケットボールなどのコンタクトスポーツや格闘技では、選手同士の衝突や器具による打撲が原因で鼻を骨折することがあります。
  • 転倒・転落
    レクリエーション中の事故や子どもや高齢者の転倒によって鼻を打つことも、骨折の一因です。
  • けんかや暴力
    けんかによるパンチや頭突きなどの強い衝撃が鼻骨に加わり、骨折につながることがあります。
  • 交通事故
    稀ながら、車の衝突時にエアバッグやハンドルに顔を強打することで骨折するケースもあります。
  • 職場での事故
    機械作業や重機を扱う職場では、不慮の事故によって顔をけがするリスクがあります。

これらの原因を把握し、日常生活や活動時に注意を払うことで、けがを防ぐことができます。

鼻骨骨折の前兆や初期症状について

鼻骨骨折は外傷であり前兆はありません。顔面の外傷を起こしたら、速やかに救急外来を受診することが鼻骨骨折以外の外傷も含めた正確な評価と迅速な治療につながります。受傷から時間が経ってから整容面での治療を希望する場合は形成外科を受診します。鼻骨骨折でよくみられる症状は以下のとおりです。

  • 痛み
    骨折部位に鋭い痛みを感じることが多く、触れたり鼻を動かしたりするとさらに痛みが強まることがあります。
  • 腫れ
    鼻や目の周囲が腫れることが多く、けがをした直後から腫れが目立ち始めます。
  • あざ(皮下出血)
    目のまわりに青紫色のあざができることがあり、これを「パンダ目」と呼ぶこともあります。これは皮膚の下で出血が起こるために発生します。
  • 鼻血
    鼻の粘膜が傷つくことで、片方または両方の鼻孔から出血することがあります。
  • 変形
    鼻が曲がったり、へこんだりすることで見た目の変化が生じることがあります。腫れが強い時は変形がはっきりせず、腫れが引いてからわかるようになることもあります。
  • 鼻づまり 
    腫れや出血や骨片のずれにより、鼻腔ががふさがれることがあります。この結果、鼻呼吸がしづらくなる可能性があります。

これらの症状が見られた場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。

鼻骨骨折の検査・診断

鼻骨骨折は以下の手順で診断されます。

  • 呼吸状態の確認
    鼻づまりや空気の通り道がふさがれていないかを確認します。
  • 問診
    どのようにけがをしたのか、過去に鼻のけがをしたことがあるか、現在の症状について医師が詳しく確認します。
  • 視診と触診
    鼻を直接触って圧痛(おすと痛むこと)や変形を確認します。また、腫れやあざの状態も観察します。
  • 画像検査
    X線撮影やCT撮影を行い、骨折の有無や状態を確認します。顔面の複雑な骨折や合併症も同時に確認します。

正確な診断によって、最適な治療方針を決定することができます。

鼻骨骨折の治療

鼻骨骨折の治療は、骨折の程度合併症の有無によって異なります。
腫れが引いた状態で変形がある場合、骨折による鼻づまりの症状が強い時は手術の適応となります。

保存療法(手術をしない治療)

  • 冷却療法
    患部に氷を当てることで腫れを抑え、痛みを和らげます。

  • 鎮痛剤の使用
    痛みを軽減するために、鎮痛薬(イブプロフェンやアセトアミノフェン)を使用します。

  • 経過観察
    腫れが引くまで数日間待ちます。腫れが引いても変形が目立たない場合は、骨が癒合するまでそのまま経過観察します。

処置・手術療法

  • 徒手整復(としゅせいふく)
    局所麻酔または全身麻酔のもとで、医師が鉗子というペンチのような機械で骨を元の位置に戻します。その後、鼻の穴からガーゼを入れて鼻の内部から圧迫し、ギプスやテープで鼻の外部から固定して安定させます。整復自体はごく短時間で終了します。
    圧迫に使ったガーゼは数日で外れ、ギプスは1週間程度で外せます。受傷から1〜2週間以内であれば直接の整復が可能とされますが、1ヶ月以上経過した場合は骨折した状態で骨が固まっているため、いったん癒合した骨を切ったり、ほかの場所から骨を持ってくる骨移植が必要になることがあります。
  • 血腫の排出
    鼻中隔(びちゅうかく)に血がたまる場合(血腫)は、速やかに排出しないと軟骨が壊死するリスクがあるため、早急に処置が必要です。
  • 形成手術
    徒手整復を行っても変形が残ったり後戻りしてしまった場合、手術をせずに変形した状態で固まってしまった場合など、複雑な骨折や形状の異常が残る際には、腫れが引いてから整容面と機能面の改善を目的とした骨切り術や鼻中隔形成術などを形成外科で行います。

鼻骨骨折になりやすい人・予防の方法

鼻骨骨折になりやすい人は以下の通りです。

  • スポーツ選手
    コンタクトスポーツや格闘技に従事する人たちは鼻骨骨折を起こしやすいグループです。
  • 子どもや若者
    子どもや若者は、スポーツ活動での受傷が多いだけでなく、事故やケンカなどの偶発的な受傷を起こす可能性も高いです。

鼻骨骨折を防ぐためには、以下の点に注意しましょう。

  • 防護具の使用
    スポーツ時にはフェイスガードなどを装着し、顔への衝撃を軽減します。
  • 安全対策の徹底
    シートベルトの着用や、作業時のヘルメット使用を習慣化しましょう。
  • リスク回避
    危険な行動は控え、事故防止に努めます。

これらの対策を実践することで、鼻骨骨折のリスクを減らすことができます。


関連する病気

  • 顔面骨骨折
  • 鼻中隔湾曲
  • 鼻出血

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