離断性骨軟骨炎
岡田 智彰

監修医師
岡田 智彰(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学医学整形外科学講座入局。救急外傷からプロアスリート診療まで研鑽を積む。2020年より現職。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定整形外科指導医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リハビリテーション医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

離断性骨軟骨炎の概要

離断性骨軟骨炎は、関節内の軟骨と骨に亀裂が発生して、かけらとして剥がれてしまうこともある関節の障害です。
これにより関節に痛みが生じたり、動きが制限されたりします。主に10代後半から20代前半の成長期にある若年層に起こり、男児と女児では男児に2倍ほど多くみられます。
離断性骨軟骨炎は主に膝関節で起こり、関節内では大腿骨内側が85%、大腿骨外側が15%とされています。このうち大腿骨外側に起きるときは、円板状半月という半月板の変形を伴うことがあります。
また、肘に起こる離断性骨軟骨炎は外側型野球肘とも呼ばれ、野球選手が過度な球数や不適切なフォームでの投球を続けることで起こるとされます。

この病気は特にスポーツ活動を頻繁に行う若年層に多く、関節への繰り返しの衝撃や負担が関係していると考えられています。症状が進行すると関節の不安定性や変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう:関節の変形や痛みを起こす慢性的な病気)を引き起こす可能性があります。

離断性骨軟骨炎の原因

離断性骨軟骨炎の原因として、以下の要因が関係していると考えられています。

1.血流の低下

関節への繰り返しの負担や小さな外傷の蓄積によって関節の骨への血流が減少することで、骨が弱くなり壊死に至る可能性があります。

2.機械的ストレス

ジャンプやランニングなどの高負荷の動作が関節に過度なストレスを与え、骨や軟骨の損傷を引き起こすことがあります。特に若いアスリートに多く見られる要因です。

3.年齢と活動レベル

主に10歳から20歳のスポーツ活動が活発な子どもや若者に発症しやすいとされています。ただし、何らかの基礎疾患や過去の外傷歴があれば成人でも発症することがあります。

これらのリスク要因を理解し、関節への負担を軽減することで発症リスクを下げることができます。

離断性骨軟骨炎の前兆や初期症状について

この病気の初期症状は人によって異なり、目立った症状がない場合もあります。しかし、以下のような兆候に注意し、疑ったときは整形外科を受診しましょう。

1.関節の痛み

痛みは主に影響を受けた関節周辺で感じられ、長時間活動した後に悪化することがあります。痛みの種類は鋭いものや鈍痛などさまざまです。

2.腫れや違和感

関節内の炎症や関節液が溜まることで腫れや違和感を引き起こすことがあります。

3.関節のこわばり

関節の可動域が制限され、完全に伸ばしたり曲げたりすることが難しくなることがあります。

4.ひっかかりやロッキング

関節内に緩んだ骨や軟骨の破片がある場合、関節で引っかかったり完全に挟まり動かなくなる現象(ロッキング)が生じることがあります。

これらの症状が見られた場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが大切です。

離断性骨軟骨炎の検査・診断

離断性骨軟骨炎の診断には、以下のような手順が用いられます。

1.問診

症状や過去のケガ、運動歴について詳しく確認します。

2.身体診察

痛みの程度や腫れ、関節の動き、ひっかかり感などをチェックします。

3.画像検査

X線検査
関節や骨の異常を確認する基本的な検査です。骨片の分離や位置を評価できます。

超音波検査
X線検査で判断できない早期の損傷の発見に役立ちます。

MRI検査
軟骨や骨の詳細な状態を調べるために行われます。分離した破片の有無や損傷の範囲を把握するのに役立ちます。

関節鏡検査(アルトロスコピー)
関節内を直接観察するために、小さなカメラを挿入する検査です。診断が難しい場合や手術が必要な場合に用いられます。

これらの検査によって、病気の進行度や損傷の程度を正確に評価し、治療方針を決定します。

離断性骨軟骨炎の治療

治療は年齢、症状の重さ、損傷の大きさや安定性などによって異なります。

保存療法(手術を行わない治療)

1.活動制限

スポーツや関節に負担をかける動作を避け、自宅で安静を保つことで自然治癒を促します。損傷の程度により安静期間は異なります。そして復帰後に徐々に活動量を増加させていく必要があります。

2.理学療法

周辺筋肉を鍛える運動とともに柔軟性向上トレーニングも行います。痛みが軽減した後には可動域訓練も開始されます。

3.薬物療法

痛みや炎症を抑えるため、消炎鎮痛のための内服や湿布などが用いられます。

4.装具使用

必要に応じてサポーターやギブスなどで安定化させます。また、この期間中にはリハビリテーションプログラムも並行して行われます。

手術療法

保存療法で改善が見られない場合や重度の場合は手術が検討されます。

関節鏡手術

緩んだ骨片を取り除くか固定する処置です。この方法では傷口が小さく回復も早いため早期リハビリテーションへ移行できます。

微小骨折法

損傷部位への小さな穴を開けることによって血流促進と新しい軟骨再生を促します。この方法では通常数ヶ月かかります。

自家骨移植手術

自分自身の別の部位から採取した傷がついていない骨・軟骨片を損傷部位へ移植します。この方法は特に重度の場合に選択されます。

手術後はリハビリテーションプログラムによって徐々に運動機能回復へ向けた訓練も行われます。

離断性骨軟骨炎になりやすい人・予防の方法

離断性骨軟骨炎になりやすい人

以下のような人は離断性骨軟骨炎のリスクが高いため注意が必要です。

成長期の子どもや若者
特に10代後半から20代前半のスポーツ活動が活発な世代に多く見られます。この時期は骨や軟骨が成長途中であり柔らかいため、負荷に対する耐性が低いといわれています。

スポーツ選手
野球、バスケットボール、サッカーなど、高負荷の動作を繰り返すスポーツを行う選手はリスクが高いでしょう。特に投球動作が多い野球選手に多く見られます。

過去に関節を痛めた人
以前に関節の外傷や負傷を経験した人は、その部位に再度負担がかかることで離断性骨軟骨炎を発症しやすくなります。

不適切なトレーニングを行っている人
正しいフォームや技術を学ばずに運動を続けると関節に過度な負担をかけることがあります。

離断性骨軟骨炎を予防する方法

以下の対策を講じることで、離断性骨軟骨炎のリスクを軽減し、健康な関節を維持できます。

1.正しいトレーニング方法
適切なフォームを身につけ、関節に過度な負担をかけないように注意しましょう。

2.筋力トレーニング
関節を支える筋肉を強化し、安定性を高めます。

3.休息と回復期間の確保
無理をせず十分な休養をとることで、関節への負担を軽減することができます。

4.定期的な健康チェック
スポーツ選手、とくに子どもの選手は、関節の健康状態を定期的に体調をチェックし、地域のスポーツ検診などを受診しましょう。


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