

監修医師:
佐伯 信一朗(医師)
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坐骨神経痛の概要
坐骨神経痛は、お尻から足にかけて走る痛みやしびれを指す症状の名称です。背骨の第4腰椎から第3仙骨の間から出る神経(坐骨神経)が圧迫されたり、炎症を起こしたりすることで発症します。主な原因は加齢による背骨や椎間板の変化ですが、まれに腫瘍や感染症、外傷、骨粗鬆症による骨の圧迫骨折などの重大な病気が原因となることもあるため、適切な診断が重要です。
坐骨神経痛の原因
原因がわからないことが多いですが
そのうち多い原因となるものは以下の2つです。
- 腰椎椎間板ヘルニア:背骨の間にあるクッション(椎間板)が痛んで飛び出し、神経を圧迫する状態
- 腰部脊柱管狭窄症:加齢により背骨の神経が通る部分が狭くなる状態
その他に、脊椎や神経の腫瘍、感染症、外傷、骨粗鬆症による骨の圧迫なども原因となることがあります。
坐骨神経痛の前兆や初期症状について
典型的な症状は、お尻から太もも後ろ側、さらに足の裏にかけて現れます。
症状には以下のようなものがあります。
- 電気が走るような鋭い痛み
- ビリビリとしたしびれ
- 焼けるような感覚や締め付けられる感覚
- だるさや脱力感
これらの症状は、長時間座ったり立ったりする姿勢や、前かがみの動作、歩行などで悪化し、休むと楽になる特徴があります。
坐骨神経痛の検査・診断
診断は主に症状の聞き取りと診察で行われます。医師は神経の反射、感覚、筋力などを確認し、足を伸ばしたまま上げる検査(下肢伸展挙上試験)なども行います。必要に応じてレントゲンやMRI検査を行い、椎間板ヘルニアや神経の圧迫状態を詳しく確認します。
坐骨神経痛の治療
症状の程度に応じて、治療方針が決定されます。
軽度から中等度の場合
初めは痛み止め(非ステロイド性抗炎症薬)が処方されます。一般的にロキソプロフェンなどが使用され、1日3回食後に服用します。これで十分な効果が得られない場合、神経の痛みに効く薬(プレガバリンやミロガバリン)が追加されます。さらに改善が見られない場合は、別タイプの痛み止め(デュロキセチンやトラマドール)に切り替えることもあります。
重度の場合
上記の薬物療法に加えて、坐薬の使用や注射による治療(硬膜外ブロックや神経根ブロック)が行われます。これらの治療でも改善が見られない場合は、手術を検討します。
慢性的な場合(3ヶ月以上症状が続く場合)
神経の痛み止めを中心とした薬物療法に加えて、運動療法や物理療法を組み合わせます。交通事故や労災など心理的な要因が関係している場合は、認知行動療法なども考慮されます。
緊急の手術が必要となることがある場合
以下のような場合は緊急の手術が必要となることがあります。
- 足の麻痺が進行性に悪化する場合
- 排尿や排便の障害が出現した場合
- 保存的治療で改善が見られず、日常生活に著しい支障がある場合
手術が必要な場合は、状態に応じて髄核融解術、ヘルニア摘出術、脊椎除圧術、固定術などから最適な方法が選択されます。
坐骨神経痛になりやすい人・予防の方法
坐骨神経痛になりやすい人
坐骨神経痛は、デスクワークで長時間座る方や、反対に重労働が多い職業の方に発症しやすい傾向があります。また、運動不足の方、喫煙習慣のある方、肥満の方も要注意です。年齢が高くなるほどリスクは上がり、過去の腰痛歴や骨粗鬆症、糖尿病などの基礎疾患がある方も気をつける必要があります。
予防の方法
予防には、適切な姿勢の維持、定期的な運動による背骨周りの筋力維持、肥満の予防と改善が重要です。また、重い物を持つ際の正しい姿勢の心がけや、長時間同じ姿勢を続けることを避けることも大切です。症状が出た場合は、過度な安静は避け、痛みの範囲内で徐々に活動を増やしていくことが推奨されます。
なお、明らかな脊椎の異常がないのに症状が続く場合は、股関節の病気や骨盤内の病気、梨状筋症候群などの可能性も考えられるため、さらなる検査が必要となることがあります。早期の適切な診断と治療が、良好な回復につながります。
参考文献
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- Konstantinou K, Dunn KM, Ogollah R, Vogel S, Hay EM. Characteristics of patients with low back and leg pain seeking treatment in primary care: baseline results from the ATLAS cohort study. BMC Musculoskelet Disord 2015;16:332.
- Peul WC, van Houwelingen HC, van den Hout WB, et al. Surgery versus prolonged conservative treatment for sciatica. N Engl J Med 2007;356:2245-56.




