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舟状骨骨折
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

舟状骨骨折の概要

舟状骨骨折とは、手首の近くにある8つの手根骨(しゅこんこつ)のうち、親指側にある骨の骨折です。スポーツや交通事故によって手首を甲側に反った状態で地面に手をついたときに、強い衝撃が加わることで受傷します。骨折による骨のずれが小さい場合には痛みが少なく、腫れがあまりみられないケースも多くあります。捻挫と勘違いされることもある骨折ですが、勘違いしたまま過剰に手首を動かしていると少しずつ骨がずれて痛みが強まることもあります。

舟状骨は他の手根骨と比較すると見えにくい角度に位置しているため、レントゲンで見逃しやすいことが特徴です。舟状骨骨折を見逃した結果、骨が正常にくっつかず、偽関節(骨折部分が関節のように動く状態)に移行するケースもあります。

また舟状骨は血流が乏しく、栄養素も届きにくいため、骨折の治癒が遅れたり、一部が壊死したりすることもあります。舟状骨は真ん中のくびれ部分が骨折しやすく、くびれ部分の指先側と手首側で血管の量が異なります。血管の量が少ない手首側が骨折した場合、血流が行き渡らず壊死する可能性が高くなります。

舟状骨骨折後は舟状骨が動かないようギプスで手関節を固定しますが、骨の癒合に時間がかかるため長期間おこなう必要があります。長期間のギブス固定を避けるために、手術によってスクリューで骨折部を固定するケースも増えています。

舟状骨骨折

舟状骨骨折の原因

舟状骨骨折はスポーツ動作や日常生活での転倒によって手を甲側に反った状態(背屈位)で地面に手をつく衝撃によって骨折します。高齢者よりも、10−20代の若年者に多い骨折です。

スポーツでは転倒だけでなく、野球やテニス、ゴルフ、バトミントンなどのスイング動作で骨折することも稀にあります。バットやラケットのグリップを握ると、舟状骨に当たるため、スイング動作の衝撃が蓄積して疲労骨折につながることがあります。

舟状骨骨折の前兆や初期症状について

初期症状は骨折部の痛みを伴い、手関節や親指を動かすと痛みを感じます。腫れがみられることもありますが、他の部位の骨折と比較すると少ないのが特徴です。

痛みや腫れは時間と共に軽快しますが、舟状骨は血行が少ない骨であるため、修復するのに時間がかかる特徴があります。骨がくっつかないまま手や手首を動かしてしまうことで骨折部が偽関節化し、痛みが落ち着くまでにさらに時間がかかるケースもあります。
偽関節が生じると手術を検討する必要もあるため、初期段階で正確に診断されることが重要です。

舟状骨骨折の検査・診断

舟状骨骨折はレントゲン撮影で骨折の有無を確認します。しかし、舟状骨は構造上、骨折線が映りにくい特徴があり、レントゲン撮影では判明しないケースもあります。

レントゲン撮影で診断が難しい場合は、CT撮影やMRI撮影によってより詳細な確認が可能です。
CT撮影は骨折線がより明確に確認でき、MRI撮影では骨折に伴う出血や炎症も確認できます。CT撮影やMRI撮影を用いることで、確定診断につながりますが、初期段階で目立った腫れや痛みがでなければおこなわないケースも多いです。

あわせて圧痛や動作時痛などの臨床所見も確認します。舟状骨骨折は親指を反ったときに親指と手首の間にあるくぼみ(解剖学的嗅ぎタバコ入れ)に圧痛があることが特徴です。また親指や手首を反ったときも舟状骨に負担がかかるため痛みが生じます。

舟状骨骨折の治療

舟状骨骨折の治療では手関節と親指をギプスで固定します。固定によって舟状骨の治癒を促進し、偽関節化を予防することが目的です。しかし、ギプス固定をしても舟状骨の血行が悪いため、骨が完全にくっつくまで時間がかかるケースも多いです。

また、長期間のギプス固定は関節可動域の制限や筋力の低下を伴うため、ギプスが外れた後はリハビリが必要になります。リハビリで手首の関節可動域訓練や筋力トレーニングをおこなうことで少しずつ手関節や親指を動かせるようになります。しかし、ギプス固定の期間が長くなるほど、リハビリで回復する時間も長くなるケースが多いです。

長期間のギブス固定を避けるために、最近ではスクリューを舟状骨に挿入し固定する方法も選択されるようになりました。スクリューを挿入する手術は切開部分が1cm程度と小さいため、レントゲンで確認しながらおこないます。体への負担が小さいため入院する必要もなく、ギプス固定と比較して日常生活での負担を抑えられるため若年者だけでなく高齢者にも向いている方法です。

舟状骨骨折の治癒が不良で偽関節化した場合は、修正するために大きく切開する必要があります。偽関節の修正には舟状骨だけでなく、周囲の手根骨を含めた他の骨の配列も改善する必要があるため、治癒するまでにより時間がかかります。

舟状骨骨折になりやすい人・予防の方法

舟状骨骨折は、高齢者などの頻回に転倒する人や、サッカーやラグビーなどの激しい接触を伴うスポーツ、野球やテニスなどのバットやラケットを使うスポーツをする人に受傷しやすいです。

予防方法は転倒を防ぐことが重要です。普段の生活で転倒しやすい人はバランス練習や筋力トレーニングをおこない、バランス能力や脚の筋力を維持して転倒を防ぎましょう。スポーツで転倒しやすい人も、強い身体の接触に負けない体作りが予防につながります。

転倒したときに骨折しないように骨を強くすることも大切です。骨の強度は骨密度に依存しているため、骨密度を上げるカルシウムやビタミンDを摂取しましょう。加えて、適度な運動も骨密度を高めるために有効です。普段から食事を3食バランスよく摂取し、適度な運動を習慣化することで舟状骨骨折のリスクを減らせます。


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  • 偽関節

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