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足根管症候群
眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

足根管症候群の概要

足根管症候群とは、脛骨内果(足の内くるぶし)の後ろ斜め下にある足根管というトンネルを通る神経が、何らかの原因で障害される疾患です。足根管を通る神経(後脛骨神経)はかかとから足の裏を支配する神経であるため、足根管症候群によってかかとから足の裏にかけて痛み・しびれを感じます。また、内ふくらはぎに症状が出るケースもまれに報告されています。

足根管で後脛骨神経が圧迫される原因はさまざまで、捻挫後の組織増殖やガングリオン(コブ状の良性腫瘍)、足に合っていない靴などが挙げられます。また、足首や足の裏が弱く扁平足になっていると歩行時の衝撃が大きくなり、足根管への負担も大きいため足根管症候群につながりやすいといえます。

なお、足の裏に痛み・しびれが生じる疾患は足根管症候群以外にも腰椎椎間板ヘルニアや糖尿病などがあるため、疾患の鑑別が重要です。レントゲンやMRI・超音波などの画像所見のほか、医師による徒手的検査などで総合的に判断します。

足根管症候群

足根管症候群の原因

足根管症候群の原因は足根管が狭くなり、後脛骨神経が圧迫されることです。足根管が狭くなる原因として考えられる要因として、主に以下が挙げられます。

  • 捻挫・骨折後などの組織増殖
  • ガングリオン・骨棘(こつきょく)
  • 足に合っていない靴
  • 扁平足などの足部機能障害

捻挫や骨折の後は出血によって組織が繊維化し、増殖します。その増殖した組織は足根管で後脛骨神経を圧迫する要因となります。
また、ガングリオンや骨棘(骨にできるトゲ)も足根管で神経を圧迫する要因の一つとなります。これらのような身体的な問題だけでなく、足に合っていない靴など外的な要因も足根管症候群を引き起こす原因と考えられています。

なお、足根管症候群を引き起こす原因がはっきりとは分からないこともあり、このような場合は扁平足などの足部機能障害が考えられます。足部の機能障害によって歩行時の衝撃が緩衝されないことで、足根管に負担がかかり、足根管症候群の発症につながることがあります。

足根管症候群の前兆や初期症状について

足根管症候群は捻挫や骨折によって生じる出血後の組織の繊維化・増殖が原因で発症する可能性がある疾患です。そのため、捻挫や骨折が前兆の一つだといえるでしょう。

初期症状では歩行時や足に合っていない靴を履いたときに生じるかかとから足底の痛み・しびれなどが生じます。症状が軽度である場合には、動作中は痛みを感じますが、安静にすると痛みが軽減するケースが多いでしょう。しかし症状が進行してくると、安静時にも痛み・しびれを感じるようになります。

足根管症候群の検査・診断

足根管症候群を疑ったときにおこなう検査は、主に以下の3つです。

  • レントゲン・MRIなどの画像検査
  • 医師による徒手的検査
  • 神経伝導検査

レントゲン・MRIなどの画像検査

画像検査は、足根管の状態が視覚的に確認できるため足根管症候群の診断に有効です。レントゲンでは骨棘などの骨の異常、MRIや超音波では足根管に発生しているガングリオンや足根管自体の変性を確認できます。

また、炎症が起きている場合にはMRI・超音波が有効です。しかし画像所見では異常が確認できないケースもあるため、その場合には他の徒手的検査や神経伝導検査、腰椎などの画像所見と合わせて総合的に判断することになります。

医師による徒手的検査

足根管症候群は足根管を叩くことで症状が誘発されるTinel兆候が特徴です。医師が打腱器と呼ばれる道具で足根管を叩き、Tinel兆候がみられるかどうかを検査します。

また、腰椎椎間板ヘルニアや深部臀筋症候群との鑑別のために、坐骨神経へのテストもおこないます。坐骨神経の伸長テストや腱反射、筋力検査をおこない、異常がみられなければ腰椎椎間板ヘルニア・深部臀筋症候群の可能性が低くなるため、鑑別のためのテストも重要です。

神経伝導検査

神経伝導検査とは皮膚の上から電気刺激を与えて、神経に異常がないか確かめる検査です。足根管症候群の場合には後脛骨神経に刺激を与えると、他の神経と比較して反応が遅くなります。

また、この神経伝導検査も他の疾患との鑑別に有効です。もし腰椎椎間板ヘルニアであれば後脛骨神経だけでなく坐骨神経の反応も悪くなりますが、足根管症候群であれば坐骨神経は正常な数値を示します。このように後脛骨神経と他の神経を比較することでより正確な診断が可能です。

足根管症候群の治療

足根管症候群では、主に以下に挙げる治療をします。

  • 理学療法
  • 薬物療法
  • 手術

理学療法

理学療法では運動療法や物理療法によって筋肉の緊張緩和・血流の促進を図ります。特にふくらはぎから足首・足の裏の筋肉を動かし、扁平足の緩和や痛くない歩き方を練習することで、痛みの緩和効果が期待できるでしょう。

また、足首の装具や足底板(中敷)も効果的です。特に足底板は足のアーチ機能(土踏まず)を支える効果があり扁平足の症状緩和効果が期待できるため、足根管症候群の症状軽減につながります。

薬物療法

薬物療法では、神経の再生を促すビタミン剤や非ステロイド性抗炎症薬を内服して痛みの緩和を図ります。また、足根管への注射も効果的です。ステロイド薬や局所麻酔薬を使用し、炎症軽減・痛みの軽減を図ります。

手術

理学療法や薬物療法などの保存療法でも痛み・しびれの軽減が乏しい場合には手術が検討されます。手術では足根管を広げるほか、骨棘やガングリオンを除去することで後脛骨神経の圧迫を取り除きます。

手術は局所麻酔でおこない切開部分も大きくないため、1時間程度で終わることがほとんどです。入院の必要もないので、日常生活に大きく支障が出ることはないでしょう。

足根管症候群になりやすい人・予防の方法

足根管症候群になりやすい人は以下に挙げる特徴があります。

  • 捻挫癖がある
  • 足首周囲を骨折したことがある
  • 扁平足

これらの特徴は足首・足の裏の筋力低下につながる可能性があり、足首に負担がかかりやすくなります。足首への負担は足根管内の神経圧迫につながるため、足根管症候群を発症するリスクが高まると考えられます。

予防方法は足首・足根管にかかる負担を軽減することです。特に歩行でかかとをつく瞬間にかかる衝撃が大きいと、足根管に大きな負担がかかるため、衝撃を和らげることを考える必要があります。

具体的には足首周囲・足裏の筋肉を鍛えることが大切です。これらの筋肉は歩行時の衝撃緩和作用があるため、筋力効果によって足根管症候群の症状緩和につながります。かかとの上げ下げや足の指をグーパーすることで足首周囲・足裏の筋肉が鍛えられるので、毎日継続してみてください。

また、靴の中にクッション性のある中敷を敷くことも効果的です。クッションによる衝撃の緩和が期待できるうえ、土踏まずを下から支えることで足裏の筋肉の補助にもなります。


関連する病気

  • 腰椎椎間板ヘルニア
  • 深部臀筋症候群

参考文献

この記事の監修医師