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林 良典

監修医師
林 良典(医師)

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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科を経て現職。診療科目は総合診療科、老年科、感染症、緩和医療、消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、整形外科、眼科、循環器内科、脳神経内科、精神科、膠原病内科。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本老年医学会老年科専門医、禁煙サポーター。

変形性腰椎症の概要

変形性腰椎症は、加齢や腰への負担の蓄積によって、腰椎(腰部の背骨)が変形する疾患です。特に、椎骨間にあるクッション状の椎間板が劣化し、椎骨(背骨の一部)が直接摩擦を起こすことで発症します。その結果、腰痛や下肢のしびれ、歩行障害などが生じることがあります。多くの場合、症状は徐々に進行し、高齢者に多く見られますが、過体重や長年にわたる不適切な姿勢、重い荷物を頻繁に持つことなどもリスク要因になります。

変形性腰椎症は腰椎の関節や椎間板にかかる長期的なストレスにより発症するため、症状は長期間にわたって進行し、慢性的な腰痛を引き起こすことが特徴です。進行に伴い、神経を圧迫して脚の痛みやしびれが現れることがあります。また、場合によっては腰椎の変形により神経が損傷し、排尿や排便の機能に問題が生じることもあります。

変形性腰椎症の原因

変形性腰椎症の主な原因は加齢による体の変化ですが、その他にもさまざまな要因がこの疾患の発症に関与しています。

加齢による椎間板の変性
年齢とともに椎間板は水分を失い弾力性が低下します。その結果、骨同士の摩擦が増加し、腰椎の変形と痛みにつながります。

骨棘(こつきょく)の形成
椎間板劣化に伴う骨摩耗を補おうとして骨棘が形成され、神経や血管を圧迫して腰痛やしびれを引き起こします。

遺伝的要因
家族に変形性腰椎症の患者がいる場合、発症リスクが高まります。

姿勢や生活習慣
長時間同じ姿勢を保つ、重い荷物を持ち上げるなどの行為は腰椎に過度な負担をかけ、発症を早めます。

肥満
過体重は腰に余分な負担をかけ、椎間板の摩耗を助長します。

変形性腰椎症の前兆や初期症状について

腰痛
初期段階では軽度の腰痛や違和感から始まります。長時間座った後や立ち続けた後に痛みが強くなることがあります。

下肢のしびれや痛み
神経圧迫により、お尻から太もも、足にかけてしびれや痛みが広がることがあります。

歩行障害
進行すると神経圧迫が強まり、歩行時に痛みやしびれが生じ、歩きづらくなります。

排尿・排便機能の異常
重度の場合、神経損傷によって排尿・排便に問題が生じることがあります。

これらの症状がある場合は、整形外科を受診することが推奨されます。

変形性腰椎症の検査・診断

身体検査

腰の可動域や筋力、反射異常を確認します。ラセーグ徴候、ケンプ徴候など、神経圧迫を確認するためのテストが行われます。

画像検査

X線検査
骨の形状や骨棘、椎間板の隙間減少などを確認します。

MRI検査
椎間板、神経、脊髄の状態を詳細に評価し、ヘルニアや神経圧迫の有無を確認します。

CT検査
骨の詳細な構造を確認し、骨棘や変形の程度を正確に把握します。

変形性腰椎症の治療

保存療法

薬物療法

非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛薬で痛みと炎症を軽減します。慢性痛には神経作用薬(プレガバリンなど)や筋弛緩薬が使用される場合もあります。

理学療法(リハビリテーション)

ストレッチや筋力トレーニングで腰部周囲の筋肉を強化し、姿勢改善と腰への負担軽減を図ります。温熱療法や電気療法を併用することもあります。

装具療法

コルセットやサポーターで腰椎を安定させ、痛みの軽減と症状の悪化防止を行います。

手術療法

保存療法で効果がない場合や、神経圧迫が進行して日常生活に支障が出る場合、手術が考慮されます。

椎弓切除術
圧迫された神経を解放するために、椎骨の一部を除去します。

脊椎固定術
不安定な腰椎を金属プレートやスクリューで固定して安定化します。

変形性腰椎症になりやすい人・予防の方法

変形性腰椎症になりやすい人

  • 高齢者
  • 肥満の人
  • 長時間座る仕事や不適切な姿勢を続ける人

予防の方法

体重管理
適正体重を維持し、腰への負担を軽減します。

適度な運動
腹筋や背筋を強化し、ウォーキングやヨガで腰痛予防に努めます。

正しい姿勢の保持
日常生活で正しい姿勢を意識し、腰椎への負荷を減らします。


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