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岡田 智彰

監修医師
岡田 智彰(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学医学整形外科学講座入局。救急外傷からプロアスリート診療まで研鑽を積む。2020年より現職。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定整形外科指導医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リハビリテーション医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

アキレス腱炎の概要

アキレス腱とは、踵骨(踵の骨)とふくらはぎの筋肉をつなげる厚い腱のことを指し、これが炎症を起こす症状をアキレス腱炎と呼びます。
この炎症は、ランニングやジャンプなどの運動を繰り返し行うことが原因で起こりやすいですが、突然の活動量の増加や不適切な靴の使用、体の他の部分の問題が影響を及ぼすこともあります。
主な症状は、腱の痛みや腫れがあり、特に運動の開始時や朝起きたときに痛みを感じやすいです。
また、腱の周囲を触ると温かく感じることがありますが、これは炎症が存在することを示しており、腱が硬くなったり動かすときに痛みが伴ったりすることがあります。

アキレス腱炎の原因

原因

①過度の運動
アキレス腱炎はランナーやジャンプを多用するスポーツ選手に多く見られます。急激なトレーニング強度の増加、長距離の走行、または凹凸のある地面での走行は腱に過度のストレスを与え、炎症を引き起こすことがあります。

②不適切な履物
サポートが不十分な靴や、運動に適さない靴を使用することもアキレス腱炎の一因です。特に、踵の部分が硬い、または十分なクッションがない靴は、腱への衝撃を増大させるためリスクを高めます。

③身体的特徴と条件
足のアーチが高い、もしくは扁平足の人は、アキレス腱に異常なストレスがかかりやすくなります。
また、筋肉の硬さや左右での不均衡も腱に余計な負担をかける原因となります。

④年齢
年齢とともにアキレス腱は柔軟性を失い、脆くなりがちです。そのため、中高年になると、腱の微細な損傷が修復されにくく、炎症を起こしやすくなります。

アキレス腱炎の前兆や初期症状について

アキレス腱炎の前兆には、以下のようなサインが現れることがあります。

踵周辺の軽い痛み
運動後や翌朝に、踵の上部や腱の周辺が軽く痛むことがあります。
特に階段を登るときや坂道を歩くときに感じやすいです。

腱の硬さ
朝起きたときや長時間座った後に立ち上がるときに、アキレス腱が硬く感じられることがあります。
しばらく動いていると徐々に柔らかくなることも特徴的です。

腱の腫れや熱感
腱の周囲がわずかに腫れて、触ると温かく感じることがあります。
これは炎症が始まっているサインです。

初期症状

アキレス腱炎が発症すると、以下のような症状が現れることがあります。

痛みの増加
運動中や運動後の痛みが増すことがあります。
特にランニングやジャンプをした後に顕著です。

動作時の不快感
踵を使った運動や、踵を地面につける動作がしづらくなります。
また、腱を押すと痛みを感じることがあります。

初期症状に気づいたらどうするか

これらの前兆や初期症状に気づいたら、無理をせずに適切な休息を取ることが大切です。
アイシングや適度なストレッチ、強度を控えた運動に切り替えることで、症状の悪化を防ぐことができます。
痛みが続く場合は整形外科、またはスポーツ整形外科に相談してください。
早期に適切な治療を始めることで、回復に要する時間が短くなります。

アキレス腱炎の検査・診断

問診
問診では、痛みの発生時期、痛みの種類、日常活動における痛みの変動、過去の怪我の治療歴、運動習慣などについて詳しく聞きます。
この情報から、症状がアキレス腱炎によるものか、ほかの可能性があるかの初期評価がなされます。

身体診察
身体診察では、アキレス腱の腫れ、熱感、痛みの確認、腱の厚さや硬さの評価を行います。
また、足首の可動域の制限や動作による痛みが評価されます。
これらのテストにより、腱の状態や炎症の程度が判断されます。

画像診断
症状が標準的な治療に反応しない場合や、診断が不確実な場合には、画像診断が推奨されることがあります。
主に以下のような画像検査が用いられます。

  • 超音波検査
    アキレス腱の構造を詳細に視覚化し、腱の断裂、腱繊維の変性、腱周囲の液体の貯留を確認するのに役立ちます。
  • MRI
    より詳細な画像を提供し、腱の微細な損傷や炎症の程度を評価できます。
    また、周囲の組織や骨の状態も確認できるため、ほかの可能性がある場合の診断にも有用です。

アキレス腱炎の治療

安静
アキレス腱炎の最も基本的な治療は安静です。
痛みがある場合は、炎症を悪化させないために、激しい運動やアキレス腱に負担をかける活動を避けることが必要です。

冷却療法
痛みと腫れを軽減するために、アイスパックを腱に当てる冷却療法が有効です。
運動後や一日の終わりに15分間ほど冷やすことで、症状の緩和が期待できます。

理学療法
理学療法士の指導のもとでストレッチングや筋力トレーニングを行うことで、アキレス腱を支える筋肉を強化し、腱への負担を軽減します。
特に、ふくらはぎの筋肉を柔軟に保つストレッチが重要です。

適切な履物の選択
アキレス腱に余計なストレスをかけないように、クッション性の高い適切な運動靴を選ぶことが大切です。
場合によっては、オーダーメイドのインソールが推奨されることもあります。

長期的な治療とケア

徐々に活動を再開
完全に痛みがなくなったと確信できたら、徐々に通常の活動へと戻していきます。
ただし、運動の強度は徐々に上げていくことが重要で、無理をすると再び症状が悪化することがあります。

薬物療法

痛みが強い場合には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が短期間処方されることがあります。
これにより、痛みの軽減と炎症の抑制が期待できますが、医師の指示に従って適切に使用することが重要です。

サージカルオプション

保存的治療で改善が見られない場合、外科手術が検討されることもあります。
手術はアキレス腱の損傷部分を修復するもので、回復には数ヶ月を要することが一般的です。

痛みを感じたら無理をせず、早めに専門医に相談し、個々の状態に合った最適な治療計画を立てていただきたいです。

アキレス腱炎になりやすい人・予防の方法

アキレス腱炎になりやすい人

ランナーやジャンプを多用するスポーツ選手
長距離ランナーやバスケットボール、バレーボール選手など、反復的な走行やジャンプを行うスポーツは、アキレス腱に大きな負担をかけます。

運動量の急激な増加をする人
トレーニングの強度や頻度を急に増やすと、アキレス腱がそれに適応しきれず、炎症を起こすリスクが高まります。

不適切な靴を履いている人
サポートが不十分な靴や、摩耗してクッション性が低下した靴を使用すると、腱に過度のストレスがかかります。

年齢が高い人
加齢によりアキレス腱の柔軟性が低下し、微細な損傷が修復されにくくなります。

予防の方法

適切なウォーミングアップとクールダウン
運動前後のストレッチや軽いジョギングで筋肉と腱を適切に温め、冷却することが重要です。
これにより、怪我のリスクが減少します。

徐々に運動量を増やす
トレーニングの強度や頻度は徐々に増やし、アキレス腱が適応する時間を与えましょう。

適切な靴の選択と交換
足にフィットし、良好なサポートとクッション性を提供する靴を選び、定期的に新しいものに交換することが大切です。

定期的なストレッチと強化運動
ふくらはぎの筋肉をターゲットとしたストレッチや強化運動を定期的に行い、アキレス腱への負担を軽減します。

この記事の監修医師