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岡田 智彰

監修医師
岡田 智彰(医師)

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昭和大学医学部卒業。昭和大学医学整形外科学講座入局。救急外傷からプロアスリート診療まで研鑽を積む。2020年より現職。日本専門医機構認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定整形外科指導医、日本整形外科学会認定スポーツ医、日本整形外科学会認定リハビリテーション医、日本整形外科学会認定リウマチ医、日本スポーツ協会公認スポーツドクター。

鎖骨骨折の概要

鎖骨とは、肩と胸骨をつなぐ比較的皮膚から触れやすい左右対称のS字型をしている骨のことを指します。
鎖骨骨折は、骨折全体の2〜4%ほどを占めているといわれています。
特にスポーツや転倒などによって鎖骨に強い外力が加わったときに起こりやすく、比較的若年層やアクティブな人にも多い骨折です。
また、鎖骨はその解剖学的な位置から外力に対して脆弱であり、転倒時に手をついて腕が突き上がった際や、肩に直接衝撃を受けた場合に骨折しやすいと言われています。
鎖骨骨折は、鎖骨の中央3分の1ほどの部位で発生することが多く、鎖骨骨幹部骨折と呼びます。
また、高齢者の場合は肩寄りの遠位部の骨折を生じることがあり、鎖骨遠位端骨折と呼びます。
骨折によって、変形したり、骨折した骨が重なり合って長さが短縮すると、患部に皮下血種や腫れが生じてしまい、肩や腕を動かした時に強い痛みを自覚することがあります。

鎖骨骨折の原因

鎖骨骨折の主な原因は、次のような外部からの衝撃です。

事故や転倒
日常生活での転倒や交通事故による衝撃で、鎖骨に外力が加わると骨折が生じます。
特に自転車やバイクなどの二輪車の転倒事故、高齢者が転倒した際に発生します。

スポーツ外傷
サッカー、ラグビー、バスケットボールなど、接触の多いスポーツや激しい動きが要求される競技では、転倒や相手選手との衝突によって鎖骨骨折のリスクが高まります。
また、スキーやスノーボードで転倒して肩や腕をついた際に骨折が起こることがあります。
直接的な外力による衝撃
鎖骨に直接的な外力が加わることでも骨折が起こります。
例としては、重い物が肩に落ちる、あるいは打撃などによって鎖骨に外力が加わることで骨折することがあります。

骨の脆弱性
骨が脆くなる病気を患っていたり、軽い衝撃でも鎖骨が折れることがあります。

鎖骨骨折の前兆や初期症状について

鎖骨骨折の症状は、主に次のようなものが挙げられます。

痛み
鎖骨骨折が起こると、肩や胸の上部に強い痛みが生じます。
この痛みは、肩や腕を動かすと悪化することが一般的です。

腫れや変形
鎖骨の周囲が腫れることが多く、場合によっては骨折した部分に皮膚を通して目立った変形が見られたり、骨折した部分に皮膚の突出が見られることもあります。
腕の可動域制限
鎖骨骨折によって腕や肩を自由に動かせなくなり、痛みがあるために腕を持ち挙げたり使うことが困難になることがあります。
肩の下垂
骨折によって鎖骨が本来の位置からずれることで、肩が下がった状態になることがあり、特に肩を外側から見ると目立ちます。
皮下血種
骨折したことによって骨の中から出血し、骨折部の周辺や腕に皮下血種(あざ)が見られることがあります。

鎖骨骨折の際に受診する診療科は整形外科となります。

鎖骨骨折の検査・診断

鎖骨骨折の検査や診断には、下記の検査が行われることがあります。
検査の結果、骨折を認めた場合に、鎖骨骨折と診断されます。
なお受診した医療機関の設備によって行われる検査が異なります。

身体診察
肩、鎖骨、胸部を視診および触診を行い、腫れや変形、痛みの程度を確認します。
また、腕や肩の可動域の制限、筋力低下の有無を評価します。
X線検査
鎖骨骨折の診断において一般的な手段です。
X線画像では、骨折部位の位置や形状、骨のずれの有無が確認されます。
上下の異なった方向から撮影することにより、細かい骨折線や複雑な骨折の状態をさらに把握することができます。
CT検査やMRI検査
レントゲン検査では骨折の有無がはっきりとわからない場合にはCT検査が、関節や軟部組織の損傷が疑われるなどより詳細な情報が必要な場合にはMRI検査による画像診断が行われることがあります。
これにより、骨折の周囲にある神経や血管の損傷がないかを確認することができます。

鎖骨骨折の治療

鎖骨骨折の治療は、骨折の程度、骨のずれ具合、患者さんの年齢や日常的な活動レベルに応じて異なります。
治療法は保存療法と手術療法に分類されます。
どちらの治療法であっても、鎖骨骨折の早期においては、腕を挙げる行動を控えることが重要だと言われています。
その理由は、骨折部が大きくずれることで、癒合が遅くなったり偽関節の形成されてしまい、力が入りづらくなるなどの後遺症が残る可能性があるからです。

保存療法(非手術療法)

鎖骨骨折の多くは、手術を必要とせず、保存療法によって治療が行われます。

鎖骨バンドの使用
骨のずれが少ない場合、鎖骨バンドを用いて患部を安定させ、骨折が自然に治癒するまで待ちます。
4〜12週間程度の固定期間が必要と言われています。
痛み止めの処方
痛みを軽減するために、飲み薬や貼り薬などの鎮痛剤を処方されることがあります。

リハビリテーション
固定期間中であっても日常生活において無理のない範囲で肩や腕の筋力を回復させるためにリハビリテーションが行われます。
理学療法士の指導のもと、徐々に肩の可動域や腕の筋力を回復させる運動を進めます。

手術療法

骨折のずれが大きい場合や、開放骨折、複雑な骨折では手術が必要になります。
また、手術後はリハビリテーションが重要であり、術後数週間から数ヶ月にわたって続けることが一般的です。

  • 骨接合プレートの使用:骨のずれを元に戻し、金属製のプレートとネジを用いて鎖骨を固定します。
    これにより、骨が正しい位置で癒合することが期待されます。
  • 髄内釘の挿入:鎖骨の中心部分に医療用のワイヤーを挿入し、骨を安定させる方法です。
    この手術法は、骨の中央部分での骨折に有効です。

鎖骨骨折になりやすい人・予防の方法

鎖骨骨折は、外傷によって起こることが多いため、下記のような人に発生しやすいです。

アクティブな生活を送る人々
スポーツ選手や、日常的に身体を酷使する職業の人々は、転倒や外傷のリスクが高く、鎖骨骨折の可能性が高まります。
高齢者
骨粗鬆症などの加齢に伴う骨の脆弱化が進んでいる高齢者も、鎖骨骨折を起こしやすいです。
軽い衝撃や転倒でも骨が折れることがあります。
骨粗鬆症患者
骨粗鬆症は、骨の密度が減少し、強度が低下する疾患です。
そのため鎖骨骨折を含む骨折のリスクが増加します。

鎖骨骨折を予防するためには、次のような対策が有効です。

筋力トレーニングと柔軟性の向上
鎖骨や肩周りの筋肉を強化し、柔軟性を高めることで、外傷時の衝撃を和らげることができます。
また、スポーツなど激しい運動を行う前には、十分なストレッチとウォームアップを行うことで、筋肉や関節の柔軟性が向上し、外傷による骨折のリスクが軽減されます。
適切な準備運動は、転倒や衝撃を受けた際の怪我を最小限に抑える効果があります。
特にアスリートやアクティブな生活を送る人にとっては重要だと言えます。

保護具の着用
スポーツや危険を伴う作業を行う際や、特定のリスクを伴う活動に従事する場合、適切な保護具を着用することが重要です。
ラグビーやスキー、スノーボードなどのスポーツでは、肩パッドや適切なプロテクターを使用することで鎖骨骨折のリスクを減らすことができます。
転倒防止策の実施
高齢者や骨粗鬆症患者にとっては、転倒そのものを防ぐことは重要な予防策です。
自宅の床面を整理してつまずきやすい物を取り除いたり、階段やバスルームに手すりを設置するなどの環境整備が有効です。
また、定期的なトレーニングや歩行訓練も転倒リスクを低減します。
骨密度の管理
カルシウムやビタミンDを多く含む食材を摂取すること、適度な日光浴や運動を行うことでカルシウムの吸収を促進することが重要です。
特に閉経後の女性や高齢者は、骨密度検査を定期的に行い、必要に応じて骨密度を維持するための薬物治療を検討することが重要です。

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