監修医師:
佐藤 章子(医師)
東京女子医科大学医学部卒業 / 川崎市立川崎病院整形外科初期研修医 / 東京女子医科大学東医療センター整形外科リウマチ科医療練士助教待遇 / 東京警察病院整形外科シニアレジデント / 医療法人社団福寿会整形外科 / 菊名記念病院整形外科 / 厚生中央病院整形外科 / 日本医科大学付属病院整形外科リウマチ科助教 / 国立国際医療研究センター国府台病院整形外科 / 現在は無所属だが大学院進学、リウマチ班のある大学への移籍を交渉中 / 専門は整形外科、リウマチ科 / 他に得意分野は骨粗鬆症治療と高齢者治療
【主な研究内容・論文】
リウマチ患者に対する生物学的製剤の治療成績の検討、人工肘関節弛緩術の治療成績の検討、精神科疾患を合併する整形外科手術症例の検討など
【保有免許・資格】
日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
臨床研修指導医
ぎっくり腰の概要
ぎっくり腰は突然激しい腰痛が発生する症状で、罹病期間が4週間以内のもので、別名、急性腰痛症と呼びます。重い物を持ち上げたり、急に体をひねったりする動作がきっかけで発症します。痛みは突発的で非常に強く、日常生活に大きな支障をきたします。この症状は腰を動かすことが難しく、痛みによっては歩行すら困難になります。ぎっくり腰は年齢関係なく誰にでも起こり得るもので、特に中高年の方に多い傾向があります。
ぎっくり腰の痛みは筋肉や靭帯の急激な収縮や緊張が原因で引き起こされると考えられています。痛みの原因となる部位は腰椎周辺の筋肉や靭帯が中心です。症状の重さは個人差があり、軽度の場合は数日で回復しますが、重度の場合は数週間にわたって痛みが続きます。治療法は、痛みの緩和が中心となり、薬物療法、各種ブロック療法が有効です。
ぎっくり腰の原因
ぎっくり腰は多くの場合、腰部の筋肉や靭帯が急激に収縮または引き伸ばされることで発症します。重い物を持ち上げる、急に体をひねる、不自然な姿勢で作業をするなどの動作がきっかけとなることが多いです。なりやすい人の特徴としては、運動不足の方や、筋力が低下している方に多く見られます。
腰部には多くの筋肉や靭帯が集まっており、連携して体を支えています。しかし、過度な負荷がかかると、これらの組織が損傷しやすくなります。例えば、重い物を持ち上げる時に、正しい姿勢を保たずに腰を曲げて持ち上げると、腰部に過度なストレスがかかり、ぎっくり腰を発症する可能性があります。
姿勢の悪い人・長時間の座位姿勢が原因
姿勢の悪さや長時間の座位姿勢も原因となります。特に、デスクワークで長時間同じ姿勢を続けると、腰部の筋肉や靭帯に慢性的な負荷をかけます。このような状態が続くと、筋肉や靭帯が硬直し、ちょっとした動作でぎっくり腰を引き起こします。
冷えやストレスが原因
冷えやストレスもぎっくり腰の原因とされています。寒い環境では筋肉が収縮しやすく、動作がぎこちなくなるため、腰部に負荷がかかりやすいです。また、ストレスで筋肉が緊張しやすくなり、結果的にぎっくり腰が引き起こされます。そのため、日常的に姿勢や動作に注意し、適度な運動やストレッチを取り入れると予防になります。
ぎっくり腰の前兆や初期症状について
ぎっくり腰の前兆や初期症状は、急な痛みとして現れることが多いです。しかし、そのきっかけにはいくつかのサインが見られます。この章では前兆と初期症状を解説していきます。
ぎっくり腰の前兆
ぎっくり腰の前兆として腰に違和感や軽い痛みを感じるようになります。これは、腰部の筋肉や靭帯が疲労や緊張によってダメージを受けているサインかもしれません。
その他に感じる前兆としては、腰に重だるさを感じたり、突っ張り感を覚えたりすることがあります。これは、筋肉や靭帯が緊張している状態を示しており、これ以上の負荷がかかるとぎっくり腰を引き起こします。さらに、腰を動かしただけで軽い痛みを感じることもあり、このような症状が確認できた時に適切な対応をすると、ぎっくり腰の予防につながります。
ぎっくり腰の初期症状
最もわかりやすい初期症状は、突然来る激しい痛みです。この痛みは、腰を動かすことのできない強烈な痛みで、発症した人は動くことが難しくなります。痛みの範囲は腰全体に広がり、多く。痛みとともに腰の筋肉が硬直し、触れると硬く感じることもあります。
ぎっくり腰の初期症状が現れた時は、無理に動かさずに、安静にすることが大切です。
その後、痛みが改善しない場合は整形外科を受診して、症状の緩和に努めましょう。
ぎっくり腰の検査・診断
問診
ぎっくり腰の検査と診断は、主に問診と身体検査によって診断されます。いつから痛みが始まったのか、どのような動作がきっかけで痛みがでたのか、痛みの強さや部位について確認していきます。
身体検査
状況を把握した後に、身体検査を行います。腰の状態を視診や触診で確認し、痛みの部位や範囲、筋肉の緊張状態を把握します。他にも、腰を動かした際の痛みの程度や、どの動作で痛みが出るのか確認することも重要です。この確認で、腰部の筋肉や靭帯の損傷状態を把握します。
MRI・X線検査
腰の状態によっては、X線検査やMRIなどの画像検査を行うときもあります。腰椎やその周辺の状態を詳しく調べる際に有効で、痛みが長引く場合や他の疾患が疑われる場合は、画像検査を行うことが多いです。X線検査では骨の状態を確認し、MRI検査では筋肉や靭帯、椎間板などの軟部組織の状態を詳しく調べられます。
ぎっくり腰の治療
ぎっくり腰の治療は、痛みの緩和と炎症の抑制が中心となります。この章ではそれぞれの治療法を解説します。
安静
初期段階で、痛みが強いときは無理に動かさないようにするのが望ましいですが、可能な範囲で動いて構いません。
温熱療法
温めることで筋肉の緊張がほぐれ、血流が改善され、回復が早まります。
薬物療法
薬物療法もぎっくり腰の治療に効果的です。鎮痛薬や消炎薬を使用することで、痛みや炎症を抑えられます。これらの薬は医師の指導のもと使用し、適切な量を守って利用しましょう。筋肉の緊張を緩和するための筋弛緩薬が処方されることもあります。
運動療法
運動療法では、ストレッチや運動を実施して痛みの軽減を図ります。痛みが和らいできたら、腰部の筋肉をほぐすためのストレッチを行うと効果的です。また、腹筋や背筋を強化することで、腰部の負担を軽減できます。これにより、再発防止にもつながります。
ぎっくり腰になりやすい人
この章では、ぎっくり腰を発症しやすい人の特徴について解説していきます。
運動不足
ぎっくり腰になりやすい人は、運動不足の方が多いです。運動不足により筋力が低下し、腰部に負担がかかりやすくなります。結果的に体の血流も悪くなるため、ぎっくり腰になる可能性が上がります。
過度なストレス・長時間の同じ姿勢
過度なストレスや長時間同じ姿勢でいることも原因の1つです。特にデスクワークをしてる人、重労働をしている人、長距離運転手などは、ぎっくり腰になりやすいです。長時間同じ姿勢を保つことで、筋肉の血流が悪くなりぎっくり腰を発症します。
姿勢の悪い人
日常生活の中で姿勢が悪い人もぎっくり腰になりやすいです。背中を丸めた姿勢のまま仕事をしたり、腰を反らせすぎて活動をしたりすると、腰部に過度な負担をかけます。そのため日常生活の中で姿勢を意識することは大切です。
ぎっくり腰の予防方法
ぎっくり腰になりやすい人の特徴を把握したら、次に大切なのは予防方法です。この章ではぎっくり腰を予防する方法を説明します。
適度な運動
最初におすすめしたいのは、適度な運動を取り入れることです。特に腹筋や背筋を鍛えることで、腰部を支える筋肉を強化し、ぎっくり腰を予防できます。筋肉を鍛えた後は、ストレッチを日常生活に取り入れるといいでしょう。筋肉の柔軟性を保ち、腰部の負担をさらに軽減することができます。
姿勢の改善
2つ目の予防策は、ストレス発散と姿勢の改善です。正しい姿勢を意識すると、腰部への負担を減らすことができます。デスクワークをしている人や、長距離運転手など一定の姿勢を維持し続ける仕事をしている人は、定期的に立ち上がたり、ストレッチをすると効果的です。重い物を持ち上げる時も、足を前後に開き膝を曲げて持ち上げましょう。
冷えの防止
最後は冷えに対する対策です。寒い環境では筋肉が緊張しやすいため、腰部を冷やさないことがぎっくり腰の予防につながります。冷たい飲み物を飲みすぎないようにしたり、適切な衣服を着用するなどし、腰を温めるようにしましょう。腰や身体を温めることで、ぎっくり腰のリスクを減らせます。