監修医師:
佐藤 章子(医師)
東京女子医科大学医学部卒業 / 川崎市立川崎病院整形外科初期研修医 / 東京女子医科大学東医療センター整形外科リウマチ科医療練士助教待遇 / 東京警察病院整形外科シニアレジデント / 医療法人社団福寿会整形外科 / 菊名記念病院整形外科 / 厚生中央病院整形外科 / 日本医科大学付属病院整形外科リウマチ科助教 / 国立国際医療研究センター国府台病院整形外科 / 現在は無所属だが大学院進学、リウマチ班のある大学への移籍を交渉中 / 専門は整形外科、リウマチ科 / 他に得意分野は骨粗鬆症治療と高齢者治療
【主な研究内容・論文】
リウマチ患者に対する生物学的製剤の治療成績の検討、人工肘関節弛緩術の治療成績の検討、精神科疾患を合併する整形外科手術症例の検討など
【保有免許・資格】
日本整形外科学会専門医、リウマチ認定医
臨床研修指導医
骨粗鬆症の概要
骨粗鬆症は、骨の強度が低下し、骨折のリスクが増大する疾患です。この病気は骨の密度が減少し、微細構造が劣化することによって引き起こされます。閉経後の女性に多く見られますが、高齢者や男性も影響を受ける可能性があります。骨粗鬆症の進行は徐々に進むため、初期段階では自覚症状がないことが多い傾向にあります。
骨粗鬆症の主な症状は骨折です。特に脊椎、手首、大腿骨の骨折が多く見られます。これらの骨折は日常生活の軽微な衝撃でも発生することがあり、骨折後は慢性的な痛みや運動機能の低下を引き起こします。脊椎の圧迫骨折は姿勢の変化や身長の低下をもたらし、生活の質に大きな影響を与えます。
骨粗鬆症の治療は主に薬物療法、栄養管理、運動療法が用いられます。骨粗鬆症を予防するためには、適切な栄養摂取や適度な運動が役立ちます。
骨粗鬆症の原因
骨粗鬆症の原因には加齢、性別、ホルモンバランスの変化、栄養不良、運動不足、遺伝的要因などが挙げられます。
まず、主な原因として加齢が挙げられます。年齢を重ねるにつれて、骨を形成する骨芽細胞の活動は自然と減少し、骨を吸収する破骨細胞の活動が活発になります。この不均衡が進むことで骨密度が低下し、骨が脆くなります。
性別も大きな影響を及ぼします。なかでも女性は、閉経後のエストロゲンの急激な減少が骨密度の低下を加速させます。エストロゲンは骨の吸収を抑える役割を持つため、このホルモンの減少は骨粗鬆症のリスクを高めます。
栄養不良、カルシウムやビタミンDの不足は、骨の健康に直接影響します。これらの栄養素は骨の形成と維持に不可欠であり、不足が長引くと骨密度の低下を引き起こします。また、タンパク質の不足も骨の強度に悪影響を与えます。
運動不足も骨粗鬆症のリスクを増加させる要因です。適度な運動は骨に適切な負荷をかけ、骨密度と強度を維持しますが、運動不足はこれらを低下させることにつながります。
遺伝的要因も見逃せません。大腿骨近位部骨折の家族歴ある場合、骨粗鬆症性骨折リスクが上がるといわれています。
最後に、生活習慣、喫煙や過度の飲酒も骨粗鬆症に影響します。これらの習慣は骨の形成を抑制し、骨吸収を加速させるため、骨の健康を損ねます。
これらの要因を理解し、早期発見と適切な対策に取り組むことが、骨粗鬆症の予防と管理には重要です。
骨粗鬆症の前兆や初期症状について
骨粗鬆症の初期段階では、背中や腰の軽度の痛みが見られることがあります。これは、骨密度の低下によって骨が微細な骨折を起こしやすくなるためです。また、身長の減少も骨粗鬆症の兆候として挙げられます。
脊椎の圧迫骨折により、背骨が徐々に潰れることで身長が縮むことがあります。さらに、姿勢の変化、特に背中が丸くなる(いわゆる円背)ことも注意が必要です。これらの症状は、病気が進行するにつれて明確になることが多い傾向にあります。
骨粗鬆症が進行すると、軽い衝撃や日常的な動作でも骨折しやすくなります。特に、手首や腰椎、大腿骨などの骨折は、日常生活に大きな影響を及ぼし、寝たきりや長期のリハビリを要する場合もあります。このような骨折は、単に転倒などの外的要因だけでなく、くしゃみや軽い打撲でも発生することがあります。
骨粗鬆症に関する疑いや症状がある場合は、整形外科を受診し、医師の診断を受けることが望ましいとされています。健康的な生活習慣を維持し、定期的な健康チェックを受けることが骨粗鬆症の予防と早期発見につながります。
骨粗鬆症の検査・診断
骨粗鬆症の検査・診断は、骨密度の測定から始まります。骨密度の測定は、骨粗鬆症の診断で重要な検査です。DXA(デキサ法)が用いられ、腰椎や股関節などの主要な骨部位の骨密度を高精度で測定し、Tスコアという数値で結果を示します。
脆弱性骨折がなく、YAが80%未満の場合、または脆弱性骨折がありYAMが70%未満またはTスコアが-2.5SD以下の場合、骨粗鬆症と診断されます。また、前腕骨や踵骨の骨密度を測定するQUS(定量的超音波測定法)も補助的に利用されます。
骨密度測定に加えて、血液検査や尿検査も行われます。これらの検査では、カルシウムやビタミンDのレベル、骨代謝マーカーなどを測定し、骨の健康状態や栄養状態を評価します。なかでも、血中ビタミンD濃度の低下は骨粗鬆症のリスクを高めるため、これらの数値を把握することが重要です。
さらに、X線検査も重要な診断手段で、骨の形状や密度の異常を視覚的に確認します。骨密度測定と併せてX線検査を行うことで、骨粗鬆症の重症度や骨折のリスクを総合的に評価します。
最後に、FRAX(骨折リスク評価ツール)を用いて、今後10年間の骨折確率を算出します。これにより、患者さん個々のリスクプロファイルに基づいた予防策や治療方針を立てることが可能となります。
骨粗鬆症の検査と診断は多面的なアプローチを必要とし、早期発見と適切な管理を通じて、患者さんの生活の質を向上させることが重要です。
骨粗鬆症の治療
骨粗鬆症の治療は主に薬物療法、栄養管理、運動療法が用いられます。薬物療法では、骨密度を改善し、骨折リスクを減少させるためにビスフォスフォネート、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、および副甲状腺薬(PTH)が用いられます。
栄養管理では、カルシウムとビタミンDの適切な摂取が重要です。カルシウムは骨の主要成分であり、ビタミンDはカルシウムの吸収を助けます。これらの栄養素を含む食品をバランスよく摂取し、適度な日光浴を行うことで体内でのビタミンD合成が活性化され、骨の健康維持に役立ちます。
運動療法も重要であり、骨に適度な負荷をかける運動は骨密度の維持や向上に有効です。ウォーキングや筋力トレーニングが推奨されますが、患者さんの体力や病状に応じた運動プログラムを医師や理学療法士と相談しながら進めることが大切です。
さらに、生活習慣の改善も治療の一環です。禁煙や適度な飲酒、バランスの取れた食事は骨の健康を保つために不可欠です。転倒リスクを減少させるための環境整備も重要であり、家庭内の対策や適切な履物の選択が日常生活における転倒事故を防ぎます。
骨粗鬆症になりやすい人・予防の方法
骨粗鬆症は高齢者や女性に多く見られます。女性は閉経後にエストロゲンの分泌が減少し、骨密度が急激に低下するため、骨粗鬆症のリスクが高まります。
また、遺伝的要因も影響し、家族に骨粗鬆症性骨折の歴史がある場合、そのリスクが増加します。さらに、カルシウムやビタミンDの不足、喫煙、過度のアルコール摂取、運動不足は骨密度の低下を招きやすいです。
骨粗鬆症を予防する方法は、以下のとおりです。
まず、適切な栄養摂取が不可欠です。カルシウムは骨の主要成分であり、乳製品、小魚、緑黄色野菜などの食品から摂取することが推奨されます。また、ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるため、魚、(卵黄)きのこ類から摂取することが望ましいとされています。
さらに、運動は、骨に刺激を与える負荷のかかる運動が有効です。ウォーキング、ランニング、筋力トレーニングなどの定期的な運動は、骨密度の維持と向上に寄与します。
加えて、喫煙や過度のアルコール摂取は骨の健康に悪影響を及ぼすため、控えることが重要です。骨粗鬆症は進行すると骨折のリスクが高まり、生活の質を大きく損なう可能性があるため、早期の予防と適切な生活習慣の維持を心がけることが大切です。