へバーデン結節
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

へバーデン結節の概要

へバーデン結節は、主に指の第一関節に発生する痛みと変形を特徴とする疾患です。原因は明らかではありませんが、遺伝的要素、更年期以降の女性に多く見られるホルモンバランスの乱れ、手を酷使する職業などが関与していると考えられています。初期症状としては、第一関節の痛みや腫れ、変形、さらに水ぶくれのようなミューカスシストの形成が見られます。これらの症状は時間とともに進行し、日常生活に支障をきたすことが多いです。

へバーデン結節の診断には問診、触診、レントゲン撮影が用いられ、症状の進行状況を把握することが重要です。治療法には、症状の軽減と関節の機能維持を目的とした保存療法や、症状が重篤な場合には手術が検討されます。さらに、抗生物質を用いた新しい治療法も存在します。

また、へバーデン結節の発症リスクを減らすためには、手に過度な負担をかけない生活習慣の改善や、適切な食事管理が重要です。特に、更年期以降の女性や遺伝的要素を持つ方は注意が必要です。予防策として、大豆製品や青魚を積極的に摂取し、カフェインやアルコールの摂取を控えることが推奨されています。

このように、へバーデン結節はその原因や症状、治療法において多岐にわたる要因が関与しており、総合的なアプローチが必要とされる疾患です。

へバーデン結節の原因

へバーデン結節の原因はまだ明らかになっていないとされています。原因は不明とされているのですが、主に以下の要因が関与していると考えられています。

遺伝的要素

へバーデン結節の原因として、遺伝的要因が考えられます。近親者にへバーデン結節にかかった方がいる場合は、自身もその近親者と体質が似ていることも考慮して、できるだけ指先に負担をかけないようにして生活するのがよいでしょう。

更年期以降の女性

更年期以降でホルモンバランスが乱れていることもへバーデン結節の原因として考えられます。女性のライフステージは、思春期・性成熟期・更年期・更年期以降の4種類に分類され、45歳からが更年期に分類されると言われるので、45歳以上の方もへバーデン結節に注意しましょう。

手を酷使する職業に就いている方

へバーデン結節の病態は、第一関節の変形や関節同士の隙間が狭くなることです。そのため、手を日常的に酷使していることもへバーデン結節の原因と考えられています。

へバーデン結節の前兆や初期症状について

へバーデン結節の前兆としては、人差し指から小指の第一関節(DIP関節)に痛みが出てきます。親指にも同様に痛みがでる場合もあります。その後、第一関節の変形、赤い腫れ、屈曲や痛みが強くなるといった症状が出てくるとされています。指を曲げ伸ばししたり、手を強く握ることが難しくなったりもし、第一関節近くにミューカスシスト(粘液嚢腫)と言われる水ぶくれができることもあります。

また、手を酷使する動作の後に症状が悪化することがあります。これらの症状は徐々に進行し、長期間にわたって続くことが多いとされています。

へバーデン結節の検査・診断

第一関節に痛みが感じられたり、上記のへバーデン結節の前兆や初期症状が現れたら、医療機関に検査や診断を受けにいくのがいいでしょう。へバーデン結節の疑いがある場合は、以下の検査や診断が行われます。

問診:
医師は患者さんの症状や病歴を詳細に聞き取ります。いつから症状が始まったか、痛みの場所や程度、日常生活への影響などを確認します。また、家族に同じ症状があるかどうかも重要な情報です。

触診:
問診の後、医師は指の関節を実際に触れて診察します。結節の大きさや硬さ、痛みの有無、腫れ具合を確認します。指の動きがどの程度制限されているかも評価します。

レントゲン撮影:
レントゲン検査では、関節の内部構造を画像で確認します。関節の変形や骨棘の有無、関節の隙間の狭まりなどを評価します。これにより、へバーデン結節の進行状況を詳しく把握することができます。
関節リウマチといったヘバーデン結節と症状が似ている病気があるのですが、レントゲン撮影をすることで関節リウマチとの区別が可能であると言われています。

へバーデン結節の治療

へバーデン結節の治療は、症状の軽減と関節の機能維持、根治を目的として行われます。以下に主な治療法を紹介します。

保存療法

保存療法では、へバーデン結節の症状が見られる箇所をテーピングで固定して安静にします。安静に保った状態でアイシングや、場合によっては投薬を行います。また、発症直後の急性期の際は関節内ステロイド(トリアムシノロンなど)の少量の注射も効果が期待できるとされています。

手術

上記の保存療法で症状の改善が見られない場合や、日常生活に悪影響を及ぼすほど変形が進んでいる場合などは手術が検討されます。関節を固定する関節固定術やある程度の可動域を残す人工関節手術が行われます。

関節固定術:
へバーデン結節は、指先の第1関節(DIP)が変形し、痛みや可動域の制限が進行する疾患です。特に、関節の屈曲だけでなく横方向の傾きが生じると、外観の問題が悩みとなります。関節固定術は、痛みの原因となっている関節を動かなくすることで、痛みを取り除く治療法です。この手術では、DIP関節のしわに沿った横切開を行い、飛び出した骨棘を切除して指の外観を細く美しくします。術後半年までは傷の痛みと赤み(瘢痕)が残りますが、1年以内にほぼ消失します。DIP関節の動きは失われますが、第2関節(PIP)と付け根の関節(MP)が正常に動くため、痛みがなくなったことで日常動作の改善が期待できます。手術前は関節が40度以上曲がった状態で生活していた場合、伸展位に慣れるまでに時間がかかることがありますが、最終的には手術による痛みの軽減と外観の改善がメリットとなります。このように、関節固定術はへバーデン結節の症状を改善し、患者さんの生活の質を向上させる効果が期待できる治療法です。

人工関節手術について:
へバーデン結節に対する人工指関節置換術は、現在のところ積極的には行われていません。理由として、第一に指関節固定術が多くの場合において日常生活に支障をきたすことなく問題を解決できるとされているためです。第二に、DIP関節専用の人工指関節が存在しないため、現状ではPIP関節用に開発されたシリコン製のインプラントの小さいサイズをDIP関節に使用しています。この方法でも良好な結果が期待できますが、特化されたインプラントがないことが課題となっています。

近年、へバーデン結節の治療に対する関心が高まり、外科医だけでなく患者自身も積極的に相談に訪れるケースが増えています。特に、女性の患者さんが多く、強い痛みを伴い日常生活に不自由を感じている方々が多く見受けられます。関節固定術で解決することが多いのは事実ですが、繊細な作業や音楽家など、少しの指の動きが必要な場合には人工関節手術が選択肢となります。

シリコンインプラントによる手術では、痛みが軽減され、指の変形も改善されますが、課題も存在します。インプラントの耐用年数がどれくらいあるのかはっきりとはわからない点、またやわらかい素材であるため側方への動揺性がある点です。5年から10年後に再手術や関節固定術に移行する可能性はありますが、それでもこの手術法は患者さんにとって有意義な選択肢であると考えられています。

その他の治療法

へバーデン結節の治療法として抗生物質が利用される治療法もあります。これは動脈から抗生物質を投与することで、症状による痛みを軽減させるといった治療法です。手術時間も短く5分ほどで終わるとされています。

へバーデン結節になりやすい人・予防の方法

それぞれについて分けて解説します。

へバーデン結節になりやすい人

へバーデン結節は、特に更年期以降の女性に多く見られます。遺伝的要素が強く、家族に同じ症状を持つ方がいる場合、発症リスクが高まります。また、手を酷使する職業や趣味を持つ人も、発症しやすい傾向があります。さらに、関節の老化や軟骨の摩耗が進行している人もリスクが高まります。

へバーデン結節の予防の方法

日常生活:
過度に手に負担がかかるような作業を長時間続けるのは避けた方がいいでしょう。第一関節に痛みがある場合は、極力手や指を使う作業は控えて安静な状態を保つようにしましょう。どうしても痛みがありつつも手や指を使った作業が必要な際はテーピングをするなどして、手や指にかかる負担をできるだけ抑えるようにしましょう。

食事:
へバーデン結節は食生活や肥満の進行が影響している可能性も考えられるため、食事を意識することで予防の効果も期待できます。積極的に摂取した方がいい食事としては大豆製品や豆乳を使用している製品が挙げられます。また、サバ、イワシといったDHAやEPAという脂肪酸を多く含む青魚も炎症を抑える効果が期待できる食品として挙げられます。

反対に摂取しない方がいい食べ物としては、カロリーが多い食品、糖質が多い食品、甘いものなどの糖分が多い食品などが挙げられます。これらの食品は関節の周りに炎症を引き起こす可能性があるため、あまり摂取しない方がいいとされています。具体的にはご飯、パン類、麺類、お菓子など炭水化物を多く含む食品の摂取量を減らすのがいいとされています。

また、へバーデン結節の発生にはカフェインが関係しているという考えもあります。普段からカフェインの摂取量が多い方はカフェインレスのコーヒーに変えるなどの対策ができます。ほかの飲み物としてアルコールの摂取も推奨はされません。アルコールの摂取で血管が拡張され、すでに軽い症状が出ている方はさらに痛みが強くなってしまう可能性があります。


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