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肋骨骨折
眞鍋 憲正

監修医師
眞鍋 憲正(医師)

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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。

肋骨骨折の概要

肋骨とは、胸郭を形成する背中の胸椎から前胸部の胸骨までの左右12対の細長い骨を指します。心臓、肺といった胸部のほか、肝臓、脾臓、腎臓の一部を保護し、籠のように覆っています。
肋骨骨折は、12対の肋骨のうち一部が折れたり、ヒビが入る状態です。胸部外傷によって起こりやすく、受傷機転は、家具の角に胸をぶつける、スポーツ、交通事故、高所からの転落などから、体幹をねじった、咳をしたという生理的な外力でも引き起こすことがあります。なかでも高齢者は骨粗鬆症により、軽い転倒や咳でも骨折しやすくなります。

肋骨は心臓や肺などの内臓を保護していますが、骨折の影響が大きい場合には胸郭内の臓器損傷を伴うリスクが高まります。さらに、複数の肋骨骨折が発生している場合、気胸や血胸、大血管の損傷などの命に関わる合併症を引き起こすことがあり、迅速な医療処置が必要となります。
肋骨骨折は強い痛みを伴い、深呼吸や咳で痛みが増強します。また、患部の腫脹や皮下出血、骨折部位の軋轢音(きしむ音)が出現することもあります。
安静と疼痛管理によって自然治癒するケースも少なくありませんが、重篤なケースでは外科手術が必要となる場合もあります。高齢者や骨粗しょう症の患者さんには、肋骨骨折の予防としてカルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動が推奨されます。

肋骨骨折の原因

肋骨骨折の原因は多岐にわたります。主な原因は外部から胸部に加わる衝撃です。例えば、交通事故や高所からの転落は、強い外力が肋骨に直接作用し、骨折を引き起こします。また、ラグビーや柔道、格闘技などのコンタクトスポーツでも同様に、激しい接触が肋骨にダメージを与えることがあります。さらに、ゴルフのスイングのように体幹をひねる動きでも肋骨が折れることがあり、繰り返し同じ動作をすることで疲労骨折に至ることもあります。

日常生活でも、机の角に胸をぶつけるなどの軽い衝撃でも肋骨骨折が起こることがあります。高齢者は骨粗しょう症により骨が脆弱化しているため、軽い外傷でも骨折しやすくなります。また、咳やくしゃみなどの生理的な動作が原因で骨折することもあります。例えば、風邪や喘息、気管支炎などで咳が続く場合や、くしゃみを繰り返すことでも肋骨にストレスがかかり、骨折に至ることがあります。

強い外力が肋骨に加わると、複数の肋骨が同時に折れることもあり、その際には肋骨内部の臓器や血管にまで損傷が及ぶことがあります。この場合、命に関わる重大な事態になる可能性があるため、迅速な医療処置が求められます。肋骨骨折のリスクを減らすためには、日常生活での注意や骨の健康を保つための対策が重要です。

肋骨骨折の症状について

肋骨骨折の症状には、受傷部位の疼痛や圧痛、皮下出血、腫脹があります。これらの痛みは、深呼吸、咳、くしゃみ、体を捻る、肩を動かすなどで悪化するのが特徴です。強い外力が加わると、複数の肋骨が折れ、痛みが一層強くなります。重度の骨折では、肺や心臓などの臓器損傷を伴うことがあり、出血性ショックや呼吸不全などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

肋骨骨折では、痛みによって呼吸が浅くなり、肺炎や無気肺のリスクが高まります。骨折部分が動くことで軋轢音が聞こえることもあります。痛みが数週間続き、体幹の動きで悪化する場合は、早急に医療機関を受診することが重要です。

物理的な原因がある場合や打撲・受傷による痛みがある場合は整形外科、咳が続く場合や咳による痛みがある場合は呼吸器内科と整形外科の両方を受診するとよいでしょう。発熱や息苦しさ、胸痛がある場合は肺炎や気胸の可能性があるため、呼吸器内科の受診が必要です。専門の医師の診察を受けることで、重篤な合併症の予防や迅速な治療が受けられます。

肋骨骨折の検査・診断

肋骨骨折の検査・診断は、まず問診と触診から始まります。医師は肋骨を触診し、痛みや圧痛の部位を確認します。触診だけで肋骨骨折と判断できるケースもあります。骨折が疑われる場合、肋骨のエックス線写真(レントゲン)を撮影し診断します。エックス線は骨折や合併症の確認に有用ですが、肺の影と重なるなどで診断が難しい場合があります。

そのため、エックス線で判断が難しい場合には、胸部CT検査が行われます。CT検査では肋骨の3D画像を作成し、エックス線では見えにくい骨折を詳しく診断できます。また、肺や心臓、胸膜、血管などの内臓損傷も同時に確認できます。気胸や血胸の疑いがある場合、胸部エックス線検査やCT検査が必要です。

下位肋骨骨折が疑われる場合、腹部臓器損傷の可能性も考慮し、血尿の検査を行います。内臓損傷が見つかった場合は、超音波検査や血液検査、心電図など追加の検査が行われます。

肋骨骨折が疑われる場合は整形外科を受診し、咳や呼吸困難がある場合は呼吸器内科も検討してください。呼吸器内科では肺炎や気胸の可能性を排除し、適切な治療を受けることができます。

早急に医療機関を受診し、正確な診断と治療を受けることが、重篤な合併症を防ぎ、早期回復につながります。

肋骨骨折の治療

応急処置としては、患部を軽く圧迫することで痛みを軽減できます。肋骨骨折に伴う内臓損傷がある場合は、入院が必要で外科的治療が行われます。具体的には、胸膜腔にチューブを挿入し、血液や空気を抜く胸腔ドレナージや、場合によっては手術による内固定が考慮されます。
症状が軽く、肺や心臓、血管に損傷がない場合の肋骨骨折では、保存療法が中心で、バストバンドやトラコバンドで肋骨を圧迫固定し、湿布や鎮痛薬を使用して安静にします。鎮痛薬が効果を発揮しない場合、ペインクリニックなどで肋間神経ブロックが行われることもあります。また、通常の鎮痛薬で痛みが治らない場合、オピオイド系鎮痛薬が使われることがあります。患者さんには深呼吸や咳を意識的に行うよう指導され、手掌や枕で患部を押さえて痛みを軽減する方法も指導されます。
肋骨骨折は、呼吸がしづらいことも少なくないため、肺炎や無気肺のリスクを避けるため、1時間に1回の深呼吸や咳が推奨されます。
症状に応じた治療を行うことにより、2〜6週間程度で症状の改善が期待できます。

肋骨骨折になりやすい人・予防の方法

肋骨骨折になりやすい人には、高齢者や骨粗しょう症の患者さん、スポーツ活動を行う人が含まれます。高齢者は骨密度が低下しやすく、骨が脆くなっています。そのため、軽い咳やくしゃみ、寝返りなどの動作でも骨折を引き起こすことがあります。また、骨粗しょう症を患っている場合、骨がさらに弱くなり、軽度の外力でも骨折しやすくなります。抗凝固薬を服用している場合も、血胸や無気肺、肺炎などの合併症のリスクが高まります。
スポーツ活動を行う人も、胸郭に繰り返し負荷がかかる場合、肋骨の疲労骨折が起こることがあります。ラグビーや柔道などのコンタクトスポーツでは、強い衝撃が肋骨に直接作用し、骨折のリスクが高まります。
その他に、低リン血症性くる病・骨軟化症といった骨の石灰化に異常がある疾患が隠れている場合もあります。

肋骨骨折の予防には、次のような方法があります。まず、骨粗しょう症の予防として、カルシウムやビタミンDの摂取、適度な運動が重要です。また、転倒を防ぐために家庭内の環境を整えることも必要です。例えば、滑りやすい床を避け、手すりを設置するなどの対策が考えられます。
スポーツを行う際には、適切な防具を着用し、無理な動作を避けることが重要です。トレーニング中に痛みを感じた場合は、すぐに活動を中止し、専門の医師の診察を受けるようにしましょう。
これらの予防策と早期の医療対応により、肋骨骨折のリスクを軽減し、健康な生活を維持することができます。


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