

監修医師:
眞鍋 憲正(医師)
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信州大学医学部卒業。信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学教室博士課程修了。日本スポーツ協会公認スポーツドクター、日本医師会健康スポーツ医。専門は整形外科、スポーツ整形外科、総合内科、救急科、疫学、スポーツ障害。
扁平足の概要
扁平足(Flatfoot)は、足底のアーチが低下または消失している状態を指します。通常、足には内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチの3つのアーチがありますが、扁平足ではこれらのアーチが平坦になり、足底全体が地面に接触します。 幼児期に発症した場合は発達に伴い、自然にアーチが形成されることが多く、痛みを伴うことは稀とされています。成人期の発症は特に中年女性に多く、痛みや疲労感、つま先立ちが難しくなる、歩行困難などの症状を引き起こすことがあります。 基本的な治療は足の裏の筋肉を鍛えたり、アキレス腱を柔軟性にするストレッチや、アーチをサポートするための足底板を使用することですが、重症の場合は手術が必要になることがあります。扁平足の原因
扁平足の原因は多岐にわたりますが、主に以下の要因が挙げられます。発症者として最も多いのは50代以降の中年女性で、体重の増加と加齢によるアーチを維持する構造が緩むことが主な原因とされています。 先天的要因 幼児期の発症は個人の体質や骨の先天的な異常によるもので、ダウン症などの遺伝子異常を持つ場合は関節が柔らかく、扁平足を発症することがあります。 加齢 加齢に伴う筋肉の減少や靭帯が柔軟性を失うこと、体重の変化によってアーチ構造を保つ腱が切れてしまうことでアーチ構造が緩む場合があります。 過度の負荷 長時間の立ち仕事や過度の運動、過剰な体重などが足底に負担をかけ、アーチを低下させることがあります。 外傷 足首や足の関節の損傷が扁平足の原因となることがあります。特に靭帯や腱の損傷によってアーチ構造が破綻する場合があります。扁平足の前兆や初期症状について
成人期の扁平足の初期症状は、主に足の痛みや疲労感として現れます。初期には足の変形は目立ちませんが、症状が進むと足が扁平化し、つま先立ちができなくなったり、歩行障害をきたします。一方で、幼児期に発症する場合は痛みはむしろ稀で、発達とともに徐々に改善し、小学校低学年くらいまでにアーチが形成されていきます。 痛み 足の内側や足底に痛みを感じることがあります。また、足首や膝、腰にも痛みが波及することがあります。 疲労感 長時間の歩行や立ち仕事の後に足が疲れやすくなります。 靴の偏り 靴の内側が早く摩耗することがあります。これは歩行時の足の異常な動きが原因です。 歩行の異常 つま先立ちができなくなったり、歩行時に足の外側が内側に倒れる、オーバープロネーションという現象が見られることがあります。 足の形態の異常 扁平足という病名の通り、足のアーチが崩れ、足が扁平になっていきます。靴が合わなくなったり、着地の際のクッション性が失われることで痛みが増強することがあります。 扁平足の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、整形外科です。扁平足は足の構造的な問題であり、整形外科で診断と治療が行われています。扁平足の検査・診断
検査方法には以下があります。ほかにも小児期の発症の場合は原因となる疾患がないかを確認する検査を追加する場合があります。これらの評価を総合して重症度を判定したうえで、治療方針を決定していきます。 視診 足底のアーチを確認するための視診を行います。立った状態での足の形状や歩行時の動きを観察したり、関節の柔軟性などを評価します。 触診 足底筋膜や腱の状態を触診し、痛みや緊張の程度や範囲などを確認します。 X線検査 骨の異常やアーチの崩れ具合を詳細に評価するために体重をかけた状態で行います。 超音波検査、MRI 靭帯や腱はX線には写らないので、損傷の有無や程度を評価し、詳細な状態を確認するために超音波検査やMRI検査を行うことがあります。扁平足の治療
扁平足の治療は、症状の重症度や患者さんの全身状態に応じて異なりますが、基本的にはまずは保存療法が行われます。それでも症状が改善しない場合など、より重症な場合に手術が選択されます。保存療法
インソールやアーチサポート 足底に装着するインソールやアーチサポートが、アーチを支え、痛みや疲労感を軽減します。 適切な靴の選択 アーチサポートが内蔵された靴や、柔軟性とクッション性に優れた靴を選ぶことが重要です。 理学療法 足底筋膜や足の筋肉を強化するためのエクササイズやストレッチが推奨されます。また、足底の筋肉を鍛えるためには裸足での生活が有効とされています。薬物療法
鎮痛薬 痛みが強い場合には、鎮痛薬が処方されることがあります。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が一般的に使用されます。 ステロイド注射 炎症が強い場合、ステロイド注射が行われることがあります。ただし、長期的な使用には注意が必要です。手術療法
保存療法が効果を示さない場合、手術を行う場合があります。手術の方法は原因や重症度によってさまざまです。アーチを再建するために切れてしまった腱を他部位の腱を用いて再建する手術などが行われることがあります。幼児期発症で骨形成の異常を伴う場合は扁平足のそもそもの原因に対する手術が必要な場合があります。扁平足になりやすい人・予防の方法
扁平足になりやすい人は先述のとおり、中高年の肥満体型の女性がリスクとされています。予防の方法としては以下のようなものがあります。 適切な靴の選択 サイズのあった靴、アーチサポートが内蔵された靴や、柔軟性とクッション性に優れた靴を選ぶことが重要です。 体重管理 適切な体重を維持することで、足底にかかる負担を軽減します。 定期的な運動 足底筋膜や足の筋肉を強化するエクササイズやストレッチが推奨されます。特に、足のアーチを支える筋肉を強化する運動が効果的です。裸足での生活や足の指でタオルを掴む、じゃんけんをするといった足の指を使う運動が有効とされています。ほかにもアキレス腱などの周囲の腱の柔軟性を保つことも有用とされています。 適度な休息 長時間の立ち仕事や過度の運動を避け、足を休める時間を確保することが重要です。関連する病気
- 足底筋膜炎
- 膝関節痛
- 腰痛
- 捻挫
- アキレス腱炎




