骨肉腫
松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

骨肉腫の概要

骨肉腫は、病理組織学的に腫瘍性の類骨・骨を形成する悪性腫瘍と定義されます。通常型骨肉腫が最も一般的ですが、頻度の低い亜種として血管拡張型骨肉腫、小細胞型骨肉種、低悪性度中心性骨肉腫、放射線照射後やPaget病に続発する二次性骨肉腫があります。日本国内での年間発症数は約200人と非常にまれな病気ですが、その発症は10代から20代の若者に集中しています。骨肉腫は骨の成長が活発な時期に発生しやすく、好発部位は長官骨の骨幹端であり、大腿骨遠位、脛骨近位、上腕骨近位の順に好発します。骨肉腫は骨の内部で腫瘍細胞が増殖し、骨を破壊することで痛みや腫れを引き起こします。初期症状としては、運動時や体重をかけたときに感じる痛みがあり、進行すると安静時や夜間にも痛みが生じることがあります。

骨肉腫は、骨の中で腫瘍細胞が増殖するため、骨の強度が低下し、病的骨折を引き起こすこともあります。特に膝や肩の周囲に発生することが多く、これらの部位に痛みや腫れが見られる場合は、早期に医師の診察を受けることが重要です。骨肉腫は進行が早く、早期発見と治療が予後に大きく影響します。診断が遅れると、腫瘍が大きくなり、手術による切除が困難になることがあります。

骨肉腫の治療は、主に手術と化学療法を組み合わせた集学的治療が行われます。手術では、腫瘍を広範に切除し、再建手術を行うことが一般的です。化学療法は、手術前後に行われ、腫瘍の縮小や再発防止に効果があります。近年では、放射線治療や免疫療法も併用されることがありますが、骨肉腫は放射線に対する感受性が低いため、放射線治療は主に補助的な治療として用いられます。

骨肉腫の原因

骨肉腫の原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。遺伝的要因として、特定の遺伝子変異が骨肉腫の発症に関与していることが知られています。近年、がん抑制遺伝子であるRb遺伝子やp53遺伝子を含む染色体異常が認められることが明らかになっており、これらの遺伝子の働きが消失することが骨肉腫の発症に関わっていると考えられています。

また、遺伝性がん症候群も骨肉腫の発症リスクを高める要因の一つです。リー・フラウメニ症候群や遺伝性網膜芽細胞腫などの遺伝性疾患は、骨肉腫を含む複数のがんのリスクを増加させます。これらの疾患は、遺伝子の異常によって引き起こされるため、家族歴がある場合は注意が必要です。

環境要因としては、放射線への曝露が骨肉腫のリスクを高めることが知られています。特に、他のがん治療で放射線療法を受けた経験がある場合、治療部位に骨肉腫が発生するリスクが増加します。また、化学物質への曝露も骨肉腫の発症に関与している可能性があります。例えば、特定の化学物質に長期間曝露されることで、細胞の遺伝子に変異が生じ、腫瘍形成が促進されることがあります。

骨肉腫の発症には、これらの遺伝的要因や環境要因が複雑に絡み合っていると考えられていますが、具体的なメカニズムはまだ完全には解明されていません。今後の研究によって、骨肉腫の発症メカニズムがさらに明らかにされることが期待されています。

骨肉腫の前兆や初期症状について

骨肉腫の初期症状は、痛みや腫れが主なものです。好発部位が大腿骨遠位、脛骨近位、上腕骨近位であることから、膝や肩周囲の疼痛や腫脹を主訴に受診に至る例がしばしば見られます。初期段階では、運動時や体重をかけたときに痛みを感じることが頻繁にありますが、進行すると安静時や夜間にも痛みが生じることがあります。痛みは徐々に強くなり、持続的になることが頻繫にあります。

また、骨肉腫が進行すると、腫瘍が骨を破壊し、病的骨折を引き起こすことがあります。病的骨折は、通常の骨折とは異なり、軽微な外力でも骨が折れることが特徴です。例えば、日常的な動作や軽い運動で骨折が生じることがあります。病的骨折が発生すると、痛みが急激に増し、患部の機能が著しく低下します。

骨肉腫の初期症状は、成長痛やスポーツ障害と似ているため、見逃されやすいことがあります。特に若年者の場合、成長期に伴う痛みやスポーツによる負傷と誤認されることが多いです。そのため、痛みや腫れが数週間以上続く場合や、夜間に痛みが増す場合は、早期に医師の診察を受けることが重要です。

骨肉腫の初期症状には、他にも発熱や体重減少、疲労感などが見られることがあります。これらの症状は、腫瘍が全身に影響を及ぼすことで生じます。特に進行した骨肉腫では、全身症状が顕著になることが頻繁にあります。

早期発見と適切な治療が、骨肉腫の予後を大きく改善することができます。

これらの症状がみられた場合、 整形外科などを受診して適切な検査・治療を受けることをおすすめします。

骨肉腫の検査・診断

骨肉腫の診断には、まず問診と視診、触診が行われます。患者さんの症状や病歴を詳しく聞き取り、痛みや腫れの部位を確認します。血液検査では、しばしばアルカリフォスファターゼ(ALP)の上昇を認め、このような症例では、ALPは術前化学療法に対する反応や治療終了後の経過観察における再発や転移の指標として用いられます。

画像検査は、骨肉腫の診断において非常に重要です。X線検査(レントゲン検査)は、骨の内部の異常を確認するために行われます。骨肉腫では、骨が破壊されている部分や新たに形成された骨が見られることがあります。CT検査やMRI検査も行われ、腫瘍の大きさや広がり、周囲の組織への浸潤を詳しく調べます。特にMRI検査は、腫瘍の内部構造や周囲の軟部組織への浸潤を詳細に評価するために有用です。

骨肉腫の確定診断には、生検(腫瘍の一部を採取すること)を行い、病理組織学的に診断します。腫瘍性の類骨・骨を顕微鏡で確認することにより、骨肉腫と診断されます。

また、骨肉腫は肺や他の骨に転移することが多いため、転移の有無を確認するための検査も行われます。胸部CT検査や骨シンチグラフィーが行われ、肺や他の骨への転移を調べます。診断時に10~20%の症例で肺などへの遠隔転移を認めますが、病変としては小さなものが多く、多くの場合、転移巣に関する症状はありませんこれにより、病期(ステージ)を正確に把握し、適切な治療方針を決定することができます。

骨肉腫の診断には、経験豊富な医療機関での検査が重要です。専門医による診断と治療が、骨肉腫の予後を大きく改善することが期待されます。早期発見と適切な治療が、骨肉腫の治療成績を向上させるために不可欠です。

骨肉腫の治療

骨肉腫の治療は、切除可能例と完全切除不可能例(多発転移例)にわけて考えます。主に手術と化学療法を組み合わせた集学的治療が行われます。手術は、腫瘍を広範に切除することが基本です。腫瘍が発生した部位や大きさ、患者さんの年齢や全身状態に応じて、最適な手術方法が選択されます。骨肉腫に対する手術は、広範切除術が基本です。適切な切除術が行われた場合には、切断術とほぼ同等の局所根治性を得ることができます。

手術後には、再建手術は頻繁に行われます。欠損した骨の部分には、人工関節を入れたり、自分の骨を別の部分から移植する方法が取られます。特に若年者の場合、成長期にあるため、骨の再建が重要です。最近では、延長可能な腫瘍用人工関節や骨延長術が進歩しており、患肢温存手術が可能となっています。現在、四肢に生じた骨肉腫に対する患肢温存療法は90%程度に達していますが、腫瘍が重要な神経や血管を巻き込んでいる場合などでは、切断を選択せざるを得ないこともあります。

化学療法は、手術前後に行われることが一般的です。術前化学療法は、腫瘍を縮小させ、手術を容易にするために行われます。術後化学療法は、残存する腫瘍細胞を殺すために行われ、再発防止に効果があります。骨肉腫は化学療法に対する感受性が比較的高いため、化学療法が治療の重要な一部となります。
骨肉腫に対するキードラッグは、メトトレキサート大量療法(HD-MTX)、ドキソルビシン(DOX)、シスプラチン(CDDP)です。(MAP療法)

放射線治療は、骨肉腫にはあまり効果がないとされていますが、切除不能な場合や局所の補助的な治療として用いられることがあります。また、免疫療法や分子標的治療などの新しい治療法も研究されています。これらの治療法は、標準治療と組み合わせることで、治療効果を高めることが期待されています。

骨肉腫の治療は、患者さんの年齢や全身状態、腫瘍の大きさや広がりなどに応じて個別に計画されます。専門医と相談しながら、最適な治療法を選択することが重要です。治療後も定期的な経過観察が必要であり、再発や転移の有無を確認するために定期的な検査が行われます。

骨肉腫になりやすい人・予防の方法

骨肉腫になりやすい人には、いくつかの特徴があります。まず、遺伝的要因が関与している場合があります。特定の遺伝子変異や遺伝性がん症候群を持つ人は、骨肉腫のリスクが高まることが知られています。例えば、リー・フラウメニ症候群や遺伝性網膜芽細胞腫などの遺伝性疾患は、骨肉腫を含む複数のがんのリスクを増加させます。これらの疾患を持つ人は、定期的な検査を受けることが推奨されます。

また、放射線治療を受けた経験がある人も、骨肉腫のリスクが高まることが知られています。特に、若年期に放射線治療を受けた場合、その後の骨肉腫発症リスクが増加します。放射線治療を受けた部位に痛みや腫れが生じた場合は、早期に医師の診察を受けることが重要です。

骨肉腫の予防方法としては、定期的な健康診断や早期発見が重要です。特に、成長期の子どもや若者は、骨の痛みや腫れが見られた場合、早期に医師の診察を受けることが推奨されます。痛みや腫れが数週間以上続く場合や、夜間に痛みが増す場合は、骨肉腫の可能性を考慮し、専門医の診察を受けることが重要です。


関連する病気

  • 血管拡張型骨肉腫
  • 小細胞型骨肉腫
  • 低悪性度中心性骨肉腫
  • 二次性骨肉腫

参考文献

  • 国立がんセンター希少ガンセンター「骨肉腫」の解説
  • 日本整形外科学会/国立がんセンターによる全国骨腫瘍登録
  • 環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料」
  • 今井秀樹、他“化学物質の複合暴露による健康影響の新しい評価方法とその課題”日本衛生学雑誌2023 年78 巻論文ID: 22009
  • 東京がんクリニック「骨肉腫の初期段階における症状の全貌とその他処方」
  • 上原記念生命科学財団の免疫療法についての研究報告
  • 順天堂大学による骨肉腫患者に分子標的治療薬Pazopanibを使用して効果を得た研究

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