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松繁 治

監修医師
松繁 治(医師)

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経歴
岡山大学医学部卒業 / 現在は新東京病院勤務 / 専門は整形外科、脊椎外科
主な研究内容・論文
ガイドワイヤーを用いない経皮的椎弓根スクリュー(PPS)刺入法とその長期成績
著書
保有免許・資格
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
日本脊椎脊髄病学会認定 脊椎脊髄外科指導医
日本整形外科学会認定 脊椎内視鏡下手術・技術認定医

O脚(内反膝)の概要

O脚とは、両足の内くるぶしを揃えて立ったとしても、膝が外側に開き、左右の膝(大腿骨内果)が接せずアルファベットのOのように隙間ができる状態を指します。
外に向かって彎曲しているため、内側が反っていることとなり、別名「内反膝(ないはんしつ)」とも呼ばれます。
これらは病名ではなく状態を示している言葉です。
この状態は、幼児期によく見られますが、成長とともに自然に改善することが多い傾向にあります。
また成人のO脚は原因が全く異なるため、分けて考えなくてはなりません。

O脚(内反膝)の原因

O脚の原因は、遺伝的要因、成長期の骨の発育異常、外傷、関節炎、肥満などが挙げられます。
特に、骨や関節に過度の負担がかかるとO脚が進行する可能性があります。

1. 生まれながらの疾患

一部の先天性疾患がO脚を引き起こすことがあります。軟骨無形成症や骨軟骨端異形成症などは骨の正常な発育を妨げ、O脚を引き起こすことがあります。
また、ブラント病(Blount病)は、幼児や子どもに見られる下肢の成長障害で、O脚の一因となる疾患の中では発生頻度がやや高いと言われています。

2. 成長期の影響

幼児期にはO脚が自然に見られることが多く、通常は成長とともに改善します。しかし、成長期における栄養不良や代謝性疾患(ビタミンD抵抗性症くる病や腎性骨ジストロフィー症)などが原因で骨の正常な発育が妨げられると、O脚が残ることがあります。

3. 外傷

足や膝の骨折、靭帯損傷などの外傷が適切に治癒しない場合、O脚が生じることがあります。特に成長期の子どもでは、下肢の骨において骨端線損傷(成長軟骨を含む骨折)を経験するとその後の骨の成長に影響を及ぼしO脚に至ることもあり、注意が必要です。

4. 関節炎

成人においては、関節リウマチや変形性膝関節症などの関節炎がO脚の原因となります。これらの疾患は、関節の炎症や軟骨の損傷を引き起こし、膝関節の変形を招くことがあります。

5. 肥満

体重が過剰になると、膝関節にかかる負担が増加し、O脚のリスクが高まります。特に子どもの場合、肥満がO脚の進行を促進してしまうことがあります。

O脚(内反膝)の前兆や初期症状について

小児期のO脚は検診で指摘される場合と、歩くようになって家族が気づく場合が大半です。歩き姿に違和感を覚えることや転びやすいことで気が付きます。
成人の症状は、膝や足首に痛みを感じること、歩行時の不快感、長時間の立位や歩行で疲れやすくなることなどがあります。
膝の変形性関節症(変形性膝関節症)でO脚を呈している場合はすでに膝の軟骨がすり減り、関節の痛みや腫れ、機能障害が生じている可能性が高いでしょう。
O脚の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、整形外科です。O脚は膝の内側への変形であり、整形外科での診察と治療が適しています。

O脚(内反膝)の検査・診断

O脚(内反膝)は、歩行時や運動時に痛みや不快感を引き起こし、時に治療が必要な場合があります。

1. 症状の確認

膝の痛みがある場所や状況、どのような動作で痛みが強くなるか、いつから症状が始まったかなど詳しい症状を問診します。また、過去のケガや病歴、運動習慣なども確認します。

2. 視診と触診

次に、視診と触診を行います。視診では、膝の形状や足の位置、歩行時の姿勢などをチェックします。触診では、膝周辺の筋肉や腱、靭帯に異常がないかを確認します。

3. 画像検査

画像診断として、単純X線撮影やMRIなどが有効です。レントゲンは骨の形状や関節の隙間を確認するために使われ、内反膝の程度を測るのに役立ちます。
MRIは、軟骨や靭帯、筋肉の状態を詳しく見るために使用され、より詳細な診断が可能です。ブラント病では単純X線撮影で脛骨(すねの骨)の膝関節における特徴的な成長傷害を確認することができます。成人における変形性膝関節症や関節リウマチも単純X線撮影やMRIで診断や鑑別することが可能です。

4. 歩行分析

内反膝の影響を評価するために、歩行分析が行われることがあります。これは、歩行時の足の動きや力のかかり方を詳細に調べる検査です。特別なセンサーやカメラを使って、正確なデータを収集します。

O脚(内反膝)の治療

治療は、症状の原因や重症度によって異なります。軽度の場合は、運動療法やストレッチ、専用の靴やインソールを使った補正が効果的です。理学療法(リハビリテーション)では、膝周りの筋肉を強化し、正しい歩行や姿勢を身につけることが目的です。重度の場合は、手術により膝のアライメント(ふとももの骨とすねの骨の位置関係)を矯正します。

1. 保存療法

保存療法は、O脚が軽度な場合、痛みや不快感が少ない場合に適用されることが多い傾向にあります。
a. 運動療法
運動療法は、膝周囲の筋肉を強化し、正しい姿勢や歩行を促すことを目的としています。具体的には、太ももの内側の筋肉(内転筋)や、膝を支える筋肉(大腿四頭筋、ハムストリングス)を強化するエクササイズが行われます。また、ストレッチングも重要で、柔軟性を高めることで膝の可動域を改善します。
b. 装具の使用
専用の靴やインソールを使用することで、膝への負担を軽減し、内反膝の進行を防ぐことができます。特に、アーチサポートやヒールカップのあるインソールは、足の位置を正しく保ち、膝の内側への圧力を分散させます。
c. 生活習慣の改善
体重管理も内反膝の治療において重要です。過体重は膝に過度な負担をかけるため、適正な体重を維持することが推奨されます。また、正しい歩行姿勢や座り方を意識することも、膝への負担を軽減するのに役立ちます。

2. 薬物療法

内反膝による痛みや炎症が強い場合には、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤が処方されることがあります。これらの薬物は、痛みや炎症を抑えることで、運動療法や日常生活の質を向上させます。

3. 理学療法

理学療法士による治療も有効です。マッサージや電気刺激、温熱療法などを組み合わせることで、膝周囲の筋肉の緊張を緩和し、血流を改善します。また、理学療法士は、個々の患者さんに合わせたエクササイズプログラムを作成し、適切な運動指導を行います。

4. 注射療法

関節内にヒアルロン酸やステロイドを注射することで、関節の潤滑を改善し、炎症を抑えることができます。ヒアルロン酸注射は、関節の動きを滑らかにし、痛みを軽減する効果があります。一方、ステロイド注射は強力な抗炎症作用を持ち、急性の痛みや炎症を迅速に抑えます。

5. 手術療法

小児のO脚は生理的で軽快するものなのか、病的なものなのかは6歳ころまで判断するのが難しい、と言われています。このときに病的なものと診断された場合には手術療法で膝関節のアライメントを整え、下肢をまっすぐにする手術が選択されます。創外固定術や骨切り術などがあります。
成人のO脚、特に変形性膝関節症や関節リウマチにおいて、保存療法や薬物療法では効果が見られない場合、手術療法が検討されます。手術の方法には以下のようなものがあります。
・創外固定術
小児期のO脚で成長を見込む場合に広く選択される術式です。成長に応じて器械の角度や長さを調節できるため成長障害を残しにくい術式と言われていますが、長期間身体にインプラントを装着して生活しなくてはならないことが欠点です。
・骨切り術
骨切り術は、膝の骨を切り、正しい角度に再配置することで膝のアライメントを修正する手術です。特に、成長期の子どもや若年層に対して効果的です。軟骨や骨の損傷が軽度な際に有効でインプラントを体内に留置したくない方にも適しています。
・人工関節置換術
人工関節置換術は、内反が高度な場合や関節炎が進行し痛みや歩行障害が高度な際に行われる手術です。損傷した関節部分を人工関節に置換することで、痛みを軽減し、膝の機能を回復させます。
インプラントを半永久的に体内に留めたまま生活することになりますが、術後早期から歩行が可能なことが利点です。

O脚(内反膝)になりやすい人・予防の方法

また、小児期においてO脚の兆候が見られた場合は、早期に医師の診断を受けることが推奨されます。
成人においては適切な運動や栄養体重管理が重要です。
早期の対応により、O脚の進行を抑え、将来的な関節の問題を防ぐことができます。

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