

監修医師:
前田 佳宏(医師)
目次 -INDEX-
依存性パーソナリティ障害の概要
パーソナリティとは、物事のとらえ方、考え方や行動のパターンを指します。考え方や行動のパターンが、一般的に期待される範囲を超えて極度に偏り、社会生活に支障を来す場合に、パーソナリティが障害されていると考えます。
このパーソナリティ障害のなかにいくつかのタイプがあり、依存性パーソナリティ障害もそのなかの一つです。
依存性パーソナリティ障害は、他者に対する、面倒を見てもらいたいという過剰な欲求を特徴とします。他者に極度に依存し、自立性が乏しく、自分で物事を決めることに強い不安を覚えたり、見捨てられることに対して極端な恐れを抱いたりする傾向が特徴です。このような傾向は、成人期初期までに始まり、さまざまな対人関係や生活に影響を及ぼします。
パーソナリティ障害は、一般の方のなかでもある程度高い割合で存在すると考えられており、それぞれのタイプは人口の約1〜2%に認められるとされています。依存性パーソナリティ障害に関して、米国では一般集団の人口の1%未満であると推測されています。
依存性パーソナリティ障害は、うつ病などほかの精神疾患を合併することがあります。しかし、依存性パーソナリティ障害の患者さん自身は、自分の行動や考え方に問題があると感じていないことも多く、早期の治療介入につながらないことが多くあります。早い段階で適切に治療を行うことで、症状が軽減する可能性があります。
依存性パーソナリティ障害の原因
依存性パーソナリティ障害の原因は、解明されていません。依存性パーソナリティ障害の患者さんが家族内にいる場合、発症しやすいことが報告されており、遺伝的要因の関与が考えられています。また、幼少期の虐待といった環境要因も、発症に影響を与えている可能性があると考えられています。
依存性パーソナリティ障害の前兆や初期症状について
依存性パーソナリティ障害の本質的な特徴は、世話をしてもらいたいという広範かつ過剰な欲求です。それが服従的でしがみつくような行動や、他者との関係が終わることへの極度の恐怖につながります。このパターンは成人期初期までに始まり、さまざまな状況で見られます。
依存性パーソナリティ障害は、初期には一見して問題があるとは気付かれにくいことが多くあります。初期症状として、以下に挙げるような特徴が見られることがあります。
症状の具体的な例
- 仕事に何色のシャツを着るかなど、物事を自分で決められず、他者に委ねる
- 自分の意見と相違があっても、他者の意見に過度に従う
- 物事を自分からは始めず、他者が始めるのを待つ
- 見捨てられることへの強い恐怖を感じる
- 常に支援を必要とするため能力がないように振る舞う
- 不当な要求の言いなりになるなど、無理をしてまで関係を維持しようとする
受診すべき診療科
依存性パーソナリティ障害の症状がみられる場合、精神科もしくは心療内科を受診してください。
依存性パーソナリティ障害の検査・診断
依存性パーソナリティ障害の診断のために、精神科の医師や臨床心理士による面接、心理検査などが行われます。これにより、パーソナリティ障害と判断された場合、さらにタイプを分類し依存性パーソナリティ障害と診断されます。
パーソナリティ障害の診断
パーソナリティ障害の診断には、国際的に認められた基準が用いられており、主に以下の基準が使用されています。
DSM-5
(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
精神疾患の診断・統計マニュアル第5版
ICD-11
(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)
国際疾病分類第11版
今回は米国精神医学会が発行しているDSM-5に基づいて解説します。診断基準として以下の6つの項目が挙げられます。
- いつもの思考・行動パターンが社会の標準からずれている(以下のうち2つ以上)
・認知(物事のとらえ方や考え方)
・感情性(感情の種類や強さ、不安定さ、適切さ)
・対人関係機能(人との関わり方)
・衝動の制御(自分の行動をコントロールする力) - この思考・行動のパターンに柔軟性がなく、家庭、職場など生活のあらゆる場面で認められる
- この思考・行動のパターンによって日常生活に支障をきたしている
- この思考・行動パターンが長い間続いており、少なくとも10代後半~20代前半に始まっている
- ほかの精神の病気による症状ではない
- 頭のけがや病気、薬物の使用などが直接の原因ではない
これらのパーソナリティ障害の診断基準を満たした場合、次にどのタイプに分類されるかを検討します。
依存性パーソナリティ障害の診断
次に挙げる5つ以上の項目に該当する場合に、依存性パーソナリティ障害と診断されます。
- 他者からの過度の助言や保証なしには、日常の意思決定が困難である
- 生活の主要なほとんどの場面について、他者に責任を負ってもらうことを必要とする
- 支援や承認を失うことへの恐怖のため、他者との意見の相違を表明することが困難である
- 判断力や能力への自信の欠如のため、自分で物事を開始したり、進めたりすることが難しい
- 他者からの支援を得るために、不快なことでも自ら進んで行うほど、過剰な努力をする
- 自分では自分自身の世話をできないという過剰な不安のために、1人でいるときに不安や無力感を感じる
- 他者との親しい関係が終わると、世話や支援を得るために、急いで他者との新たな関係を求める
- 1人にされて、自ら自分自身の世話をしなければならないのではないかという恐怖に、非現実的なまでにとらわれている
依存性パーソナリティ障害の治療
依存性パーソナリティ障害の治療は、パーソナリティ障害全般の治療法に準じて、精神療法(心理療法)と薬物療法が行われます。
精神療法
精神療法は、対話を通じて、患者さんが自分の感情や考え方を見直し、問題を理解することで対処法を見つけ、克服しようとする治療法です。依存性パーソナリティ障害に対する精神療法としては、認知行動療法と精神力動的療法などがあります。
認知行動療法
認知行動療法とは、物事のとらえ方と思考パターンに焦点を当て、現実とは異なっている考え方や思い込みに自分自身で気付き、それを現実に沿ったとらえ方や考え方に修正していく精神療法です。依存性パーソナリティ障害の患者さんでは、特に自立への不安や自己主張をすることの困難さに関して焦点が当てられます。
精神力動的精神療法(精神分析的精神療法)
精神力動的精神療法とは、症状や悩み、現在の思考、感情、行動の背景にある、無意識な自分の傾向を認識することで、症状の改善を目指す精神療法です。考えることが困難であった自分のあり方や物事のとらえ方などについて考えられるようになり、自分自身を深く理解できるようになります。これにより他者や環境との関わり方が変わっていくことが期待されます。
薬物療法
現在、パーソナリティ障害そのものに対して効果が認められた薬はありません。症状の一部を和らげる目的で、抗うつ薬や抗不安薬を使用することがあります。いずれにしても、精神療法と併用されることが一般的です。
依存性パーソナリティ障害になりやすい人・予防の方法
依存性パーソナリティ障害になりやすい方としては、依存性パーソナリティ障害の患者さんが家族内にいる方が挙げられます。
依存性パーソナリティ障害を予防することは困難です。しかし、かかりやすい傾向がある方は、早めの介入が有効であると考えられます。
依存性パーソナリティ障害は、うつ病、物質使用障害(薬物やアルコール使用により日常生活に影響を来す状態)、ほかのパーソナリティ障害など、精神疾患を合併することがあります。早めに精神科を受診することで、依存性パーソナリティ障害そのものや、合併した精神疾患に対する治療が可能となります。疑わしい症状がある場合は、早めに精神科を相談しましょう。
関連する病気
- うつ病
- 境界性パーソナリティ障害
- 回避性パーソナリティ障害
- 強迫性パーソナリティ障害
- 心的外傷後ストレス障害
- 分離不安症
参考文献
- American Psychiatric Association, Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,
5th edition (DSM-5), Text Revision (pp.768-771) - 尾崎 紀夫ら(編).(2022). 日本医師会雑誌 第151巻・特別号(2) 精神疾患診療 (pp.224-226)
- Cleveland Clinic, (2023.9.28), DISEASES&CONDITIONS, Dependent Personality Disorder (検索日 2025年5月5日)
- Fred K. Berger, (2024.10.20), Dependent personality disorder, MedlinePlus(検索日 2025年5月5日)




