

監修医師:
前田 佳宏(医師)
目次 -INDEX-
統合失調型パーソナリティ障害の概要
パーソナリティとは、物事のとらえ方、考え方や行動のパターンを指します。考え方や行動のパターンが、一般的に期待される範囲を超えて極度に偏り、社会生活に支障を来す場合に、パーソナリティが障害されていると考えます。
このパーソナリティ障害のなかにいくつかのタイプがあり、統合失調型パーソナリティ障害もそのなかの一つです。
統合失調型パーソナリティ障害は、親密な人間関係に対して居心地の悪さを感じ、思考や知覚の歪み(幻覚ではないが現実とは違うように感じること)、奇妙な行動や風変わりな会話を特徴とします。このため、対人関係で孤立することが多く見られます。統合失調型パーソナリティ障害は、通常は青年期までにこういった症状が現れます。
パーソナリティ障害は、一般の方のなかでもある程度高い割合で存在すると考えられており、それぞれのタイプは人口の1〜2%に認められるとされています。統合失調型パーソナリティ障害に関して、米国では一般集団の人口の約3.9%に認められると推測されています。
統合失調型パーソナリティ障害は、ほかの精神疾患を合併することがあります。また、発症の原因ははっきりとわかっておらず、生涯にわたって症状が続く可能性もあるとされています。明確な予防法があるわけではありませんが、早期の治療介入によって症状の軽減が期待されます。
統合失調型パーソナリティ障害の原因
統合失調型パーソナリティ障害の原因は、解明されていません。統合失調症、その他の精神疾患を持つ方が家族内にいる場合、発症しやすいことが報告されており、遺伝的要因の関与が考えられています。また、幼少期の精神的トラウマや慢性的なストレスなどの環境要因も、発症に影響を与えている可能性があると考えられています。
統合失調型パーソナリティ障害の前兆や初期症状について
統合失調型パーソナリティ障害の患者さんは、社会的な交流に対する歪んだ解釈や、奇妙な発言、行動などにより親密な人間関係を築き、維持することが困難となります。
前兆や初期症状として、子どもの頃に学校生活をうまく送ることができなかったり、周りの友達とうまくなじめず、からかいやいじめの対象となったりすることがあります。成長に伴い、より症状は顕著に表れてきます。具体的な症状は次のとおりです。
症状の具体的な例
- 偶発的な出来事を自分にとって特に特別な意味を持つと誤って解釈する
- ある出来事が起こる前に感知したり、他人の考えを読んだりする特別な力があると感じる
- 他人を魔法のように支配できると考える
- 特定の行動をすることで、ある有害な結果を避けられると考える
- ほかの人がそこにいると感じる、自分の名前をささやく声が聞こえたりする
- 職場の人が自分の評価を辱めようとしていると信じる
- 話し方が曖昧で、脱線したり、支離滅裂になったりする
- 同僚など人とのやり取りに加わることができない
受診すべき診療科
統合失調型パーソナリティ障害の症状がみられる場合、精神科もしくは心療内科を受診してください。
統合失調型パーソナリティ障害の検査・診断
統合失調型パーソナリティ障害の診断のために、精神科の医師や臨床心理士による面接、心理検査などが行われます。これにより、パーソナリティ障害と判断された場合、さらにタイプを分類し統合失調型パーソナリティ障害と診断されます。
パーソナリティ障害の診断
パーソナリティ障害の診断には、国際的に認められた基準が用いられており、主に以下の基準が使用されています。
DSM-5
(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
精神疾患の診断・統計マニュアル第5版
ICD-11
(International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)
国際疾病分類第11版
今回は米国精神医学会が発行しているDSM-5に基づいて解説します。診断基準として以下の6つの項目が挙げられます。
-
いつもの思考・行動パターンが社会の標準からずれている(以下のうち2つ以上)
・認知(物事のとらえ方や考え方)
・感情性(感情の種類や強さ、不安定さ、適切さ)
・対人関係機能(人との関わり方)
・衝動の制御(自分の行動をコントロールする力) - この思考・行動のパターンに柔軟性がなく、家庭、職場など生活のあらゆる場面で認められる
- この思考・行動のパターンによって日常生活に支障をきたしている
- この思考・行動パターンが長い間続いており、少なくとも10代後半~20代前半に始まっている
- ほかの精神の病気による症状ではない
- 頭のけがや病気、薬物の使用などが直接の原因ではない
これらのパーソナリティ障害の診断基準を満たした場合、次にどのタイプに分類されるかを検討します。
統合失調型パーソナリティ障害の診断
統合失調型パーソナリティ障害の本質的な特徴は、社会的・対人関係における能力の欠如と認知または知覚の歪みや行動の奇行です。具体的には以下のような診断基準に照らし合わせて診断します。
A. 社会的・対人関係における欠陥
親密な人間関係に対する強い不快感があり、人間関係をうまく形成する能力が低いこと、ならびに独特な物事の見方や感じ方、奇行を特徴とします。
こうした傾向が成人期の早い段階(10代後半〜20代)までに始まり、さまざまな場面で見られます(以下の5つ以上の項目)。
- 周囲の出来事や人の言動が、自分と関係があるように感じる(関係観念)
- 通常の社会通念から逸脱した奇妙な信念や、超自然的な力を信じる考え方(例えば千里眼、テレパシーなど)を持ち、それが行動に影響を与える
- 身体的錯覚を含む異常な知覚体験(実際にはない声が聞こえるなど)
- 奇妙な思考や話し方(抽象的で曖昧、または極端に具体的な話し方など)
- 強い疑いの気持ちや思い込み(疑念または妄想的観念)
- 状況にふさわしくない感情、または感情表現の乏しさ
- 風変わりで奇妙な行動や外見
- 一親等の親族以外に親しい友人や相談相手がいない
- 過度の社会不安があり、親しくなっても不安は軽減せず、それは自己に対する否定的な判断よりも妄想的な恐怖と関連する傾向がある
B. 統合失調症、双極性障害、精神病的特徴を伴ううつ病、その他の精神病性障害、または自閉スペクトラム症の経過中にのみ、生じるものではない
統合失調型パーソナリティ障害の治療
統合失調型パーソナリティ障害の治療は、パーソナリティ障害全般の治療法に準じて、薬物療法と精神療法(心理療法)が行われます。
薬物療法
現在、パーソナリティ障害そのものに対して効果が認められた薬はありません。症状の一部を和らげる目的で、抗精神病薬や抗うつ薬を使用することがあります。特に、抗精神病薬は妄想的観念などを軽減させる効果があります。
精神療法
精神療法は、対話を通じて、患者さんが自分の感情や考え方を見直し、問題を理解することで対処法を見つけ、克服しようとする治療法です。統合失調型パーソナリティ障害に対する精神療法としては、認知行動療法と支持的精神療法などがあります。
認知行動療法
認知行動療法とは、物事のとらえ方と思考パターンに焦点を当て、現実とは異なっている考え方や思い込みに自分自身で気付き、それを現実に沿ったとらえ方や考え方に修正していく精神療法です。
支持的精神療法
認知行動療法は患者さんの考え方の変化を目指す治療ですが、支持的精神療法はそういった変化を目的としません。現在患者さん自身が持っている資質をうまく活かせるように支援する精神療法です。
統合失調型パーソナリティ障害になりやすい人・予防の方法
統合失調型パーソナリティ障害になりやすい方としては、統合失調症、その他の精神疾患を持つ方が家族内にいる方が挙げられます。また、子どもの頃に虐待を受けたなど幼少期のトラウマや大きなストレスを受けた経験は発症のリスクを高める可能性があります。
統合失調型パーソナリティ障害を予防する方法は確立されていません。原因についてもさまざまな要因が絡んでいると考えられているため、単純な予防策がないのが現状です。
しかし、かかりやすい傾向がある方は、早めの介入が有効であると考えられます。早期に専門的な助けを借りることで、偏った考え方や行動パターンを見直す力を身に着けることにつながります。
統合失調型パーソナリティ障害は、小児期から青年期にかけて症状が現れ、それが長く続くとされています。また、うつ病、社会不安障害、強迫性障害などほかの精神疾患を合併することも多いことがわかっています。早めに精神科を受診することで、統合失調型パーソナリティ障害そのものや、合併した精神疾患に対する治療が可能となります。疑わしい症状がある場合は、早めに精神科を相談しましょう。
関連する病気
参考文献
- American Psychiatric Association, Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,
5th edition (DSM-5), Text Revision (pp.744-748) - 尾崎 紀夫ら(編).(2022). 日本医師会雑誌 第151巻・特別号(2) 精神疾患診療 (pp.224-226)
- Cleveland Clinic, (2022.5.15), DISEASES&CONDITIONS, Schizotypal Personality Disorder
- Mark Zimmerman, (2022年9月), 統合失調型パーソナリティ症(STPD), MSDマニュアルプロフェッショナル版.
- Mayo Clinic, Diseases&Conditions, Schizotypal personality disorder, June 07, 2024.
- Fred K. Berger, (November 06, 2022), Schizotypal personality disorder, MedlinePlus




