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シゾイドパーソナリティ障害
日浦 悠斗

監修医師
日浦 悠斗(医師)

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福井大学医学部卒業。血清蛋白質と精神疾患の関係について研究をおこなう。日本精神科学会専門医。

シゾイドパーソナリティ障害の概要

シゾイドパーソナリティ障害は数あるパーソナリティ障害の1つです。他者との親密な関係を築くことに対して興味が低く、1人で過ごすことを好む傾向があります。

孤独で喜怒哀楽を示さないため、周囲からは一見、感情が希薄な人として誤解されることがあります。一部の症例では孤独に対して苦痛を感じる場合がありますが、そのような苦痛の自覚が乏しくなりやすいのも本症例の特徴です。

本人が症状に悩んで受診するというよりかは、家族や周囲の人のすすめで受診することが多く、精神科医や臨床心理士による問診や行動の観察に基づいて診断します。

治療は認知行動療法をはじめとした心理療法が中心で、併発している症状によっては薬物を使用することもあります。

シゾイドパーソナリティ障害への理解と適切な支援をおこなうためには、本人の内面を尊重し社会生活における困難さに配慮することが重要です。

シゾイドパーソナリティ障害の原因

シゾイドパーソナリティ障害の原因は、遺伝的要因や環境的要因などの関与が示唆されています。

遺伝的要因

統合失調症や統合失調型パーソナリティ障害を持つ人の家族に多く発症する傾向があることから、遺伝的な要素が関連している可能性が考えられています。

環境的要因

温かみのない冷淡な養育をされた経験やネグレクト、愛情不足などが、他者との感情的な結びつきを避ける傾向を生み出している可能性があります。

ほかにも、社会的スキルを身につける機会が少なかったり、孤立した生活を送ったりすることも発症リスクが高まると考えられています。

シゾイドパーソナリティ障害の前兆や初期症状について

シゾイドパーソナリティ障害の子どもの頃から見られる特徴は、他者との交流を避ける、1人遊びを好む、集団活動への参加を嫌がるといった様子です。

また、喜怒哀楽の表情が少なく、周囲に対して感情的な反応を示さないことも少なくありません。

成人期になってからも自ら孤独になることが多く、1人での活動を好む傾向があります。趣味や関心事も他者との交流を必要としないものを選ぶことが多く、コンピューターゲームや1人でできる創作活動などに没頭することがあります。

他者からの賞賛や批判に対して無関心で、微笑みやうなずきなど社会的に適切な反応が少ないことも特徴です。

シゾイドパーソナリティ障害の検査・診断

社会とのつながりに対して無関心で、対人関係においても感情表現が少ない場合、シゾイドパーソナリティ障害の可能性が高いといえます。

シゾイドパーソナリティ障害の診断は、アメリカ精神医学会の診断基準「DSM-5」などの国際的な診断基準を用いておこないます。

具体的には、以下のような項目のうち一定数以上が該当する場合に診断されます。

  • 親密な関係を求めない
  • 1人での活動を好む
  • 性的活動への関心が低い
  • 楽しみを感じる活動が少ない
  • 近親者を除き、親しい友人がいない
  • 他者からの評価に無関心
  • 感情表現が乏しい

なお、シゾイドパーソナリティ障害は、疾患自体の症状を自覚して受診するよりも、抑うつや不安などの二次的な症状がきっかけで医療機関を受診することも多いです。

シゾイドパーソナリティ障害の症状は、ほかの精神疾患や別のパーソナリティ障害の症状に類似しているため、一時的な状態だけで判断せず、長期間にわたるさまざまな場面での行動を評価する必要があります。

シゾイドパーソナリティ障害の治療

シゾイドパーソナリティ障害は、心理療法や薬物療法などによって治療します。

心理療法

心理療法は対人関係におけるスキルの向上や感情認識の強化、社会への適応力を高めることなどを目的としています。

認知行動療法や精神分析的療法、人間関係療法などによって、否定的な思考を発見して修正し、自身を現実的に見るようにサポートすることや、適切な会話の仕方、感情表現の方法などを取得できるようにします。

薬物療法

シゾイドパーソナリティ障害自体にはたらきかける薬剤は現在のところ存在しないため、二次的に生じる抑うつや不安などの症状に対して、抗うつ薬や抗不安薬を処方することがあります。

症状の程度や日常生活への影響によっては、周囲の人も含んだ総合的な支援が必要となる場合もあります。シゾイドパーソナリティ障害の患者と信頼関係を築き、安定した環境の中で少しずつ治療を進めていくことが重要です。

シゾイドパーソナリティ障害になりやすい人・予防の方法

シゾイドパーソナリティ障害になりやすい人は、統合失調症や統合失調型パーソナリティ障害などを持つ家族がいる場合です。

また、幼少期の養育環境も重要な要素です。愛情表現が乏しい環境で育った人や、ネグレクトを受けた経験がある人は発症リスクが高まる可能性があります。

社会的なスキルを学ぶ機会が少なかった人も、シゾイドパーソナリティ障害の発症リスクがあるといえます。

予防方法としては、乳幼児期からの適切な親子関係の構築が重要です。子どもに対して感情豊かに接し、適切な愛情表現をすることで、健全な感情発達を促すことができます。

また、子どもの社会性の発達を支援するため、子どもたち同士が交流する機会をつくることも大切です。

すでにシゾイドパーソナリティ障害の特徴がみられる場合、専門家による早期からの介入が重要です。

心理療法などを通じて社会的なスキルを学び、対人関係の構築方法を身につけることで、症状の悪化を防げます。

シゾイドパーソナリティ障害を含むパーソナリティ障害を完全に予防することは難しいものの、適切な養育環境と早期からの支援によって症状を軽減し、日常生活への支障を抑えることが可能です。

何らかの症状に気づいた場合は、専門家に相談することをおすすめします。

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