目次 -INDEX-

前田 佳宏

監修医師
前田 佳宏(医師)

プロフィールをもっと見る
島根大学医学部卒業。東京大学医学部附属病院精神神経科に入局後、東京警察病院、国立精神神経医療研究センター、都内クリニックにて薬物依存症、トラウマ、児童精神科の専門外来を経験。現在は和クリニック院長。愛着障害やトラウマケアを専門に講座や情報発信に努める。診療科目は精神神経科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経内科。 精神保健指定医、認定産業医の資格を有する。

強迫性パーソナリティ障害の概要

パーソナリティとは、物事のとらえ方、考え方や行動のパターンの全体を指します。考え方や行動のパターンが、一般的に期待される範囲を超えて極度に偏り、社会生活に支障を来す場合に、パーソナリティが障害されていると考えます。
このパーソナリティ障害のなかにいくつかのタイプがあり、強迫性パーソナリティ障害もそのなかの一つです。

強迫性パーソナリティ障害は、規則、秩序を保つことへの固執、完璧主義や細部への強いこだわりを特徴とします。柔軟性が欠如し、自分自身、他者、状況を制御することを必要としており、周囲との摩擦が生じやすく、社会生活に支障を来します。
パーソナリティ障害は、一般の方のなかでもある程度高い割合で存在すると考えられています。そのなかで、強迫性パーソナリティ障害に関して米国では成人の約3〜8%に認められると推測されています。

強迫性パーソナリティ障害の原因

強迫性パーソナリティ障害の原因は、はっきりとはわかっていません。家族内で発症する傾向があるため、遺伝が関係している可能性、また幼少期の体験や環境も影響している可能性が指摘されています。

強迫性パーソナリティ障害の前兆や初期症状について

強迫性パーソナリティ障害の症状は通常、成人早期(20代前半頃)までに現れるとされています。
秩序、完璧主義にとらわれ、些細なことや細部にこだわりすぎることで、結果的に柔軟性、効率性が損なわれ、違う考えを受け入れられなくなったり、本来の目的を達成することができなくなったりします。

症状の具体的な例

  • 物事の細部、規則、手順、リストに強くこだわり、特定のやり方に頑なにこだわる
  • 厳格な基準にとらわれすべてを完璧にこなそうとするあまり、課題を完了することができない
  • 仕事や義務に没頭し、休息が取られず、趣味や対人関係を犠牲にする
  • 他者へ仕事を任せたり、一緒に働いたりすることが困難となる

受診すべき診療科

強迫性パーソナリティ障害の症状が日常生活に支障を来している場合、精神科を受診してください。
ただし、患者さん本人は、これらの強いこだわりや物事への取り組み方について、秩序や完璧主義を達成するために必要なことだと考えており、病識がありません。このため受診につながらないケースもありますが、一方で、仕事や人間関係を失うなど、パーソナリティ障害の症状によって引き起こされた問題のため、自ら受診することもあります。

強迫性パーソナリティ障害の検査・診断

診断のために、精神科の医師や臨床心理士による面接、心理検査などが行われます。これにより、パーソナリティ障害と判断された場合、さらにタイプを分類し強迫性パーソナリティ障害と診断されます。

パーソナリティ障害の診断

パーソナリティ障害の診断には、国際的に認められた基準が用いられており、主に以下の基準が使用されています。

  • DSM-5
    (Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders)
    精神疾患の診断・統計マニュアル第5版
  • ICD-11
    (International Statistical Classification of Diseases and Related Health Problems)
    国際疾病分類第11版

今回は米国精神医学会が発行しているDSM-5に基づいて解説します。診断基準(特徴的な症状のセット)として以下の6つの項目が挙げられます。

1. いつもの思考・行動パターンが社会の標準からずれている
これは以下の項目のうち2つ以上で現れる。

  • 認知(物事のとらえ方や考え方)
  • 感情性(感情の種類や強さ、不安定さ、適切さ)
  • 対人関係機能(人との関わり方)
  • 衝動の制御(自分の行動をコントロールする力)

2. この思考・行動のパターンに柔軟性がなく、家庭、職場など生活のあらゆる場面で認められる
3. この思考・行動のパターンによって日常生活に支障をきたしている
4. この思考・行動パターンが長い間続いており、少なくとも10代後半~20代前半に始まっている
5. ほかの精神の病気による症状ではない
6. 頭のけがや病気、薬物の使用などが直接の原因ではない

これらのパーソナリティ障害の診断基準を満たした場合、次にどのタイプに分類されるかを検討します。

強迫性パーソナリティ障害の診断

以下のうち4つ以上の項目が当てはまるとき、強迫性パーソナリティ障害と考えられます。

  • 物事の細部、規則、順序、整理、計画にとらわれて、活動の主な目的を見失う
  • 仕事や生産性に過剰に没頭し、休息をとらず対人関係を犠牲にする
  • 倫理的、道徳的問題や価値観に関して過度に誠実、厳格で柔軟性がない
  • 他人に仕事を任せることができない
  • 感情的な思い入れがないにも関わらず、壊れている物や価値のない物を捨てることができない
  • 自分自身と他人に対して無駄遣いを許さず、過度に倹約する
  • 融通が利かず頑固である

なお、これらの症状は成人早期(20代前半頃)までに現れるとされています。

強迫性障害との違い

強迫性障害という病気があります。強迫性パーソナリティ障害と名称はとても似ていますが、異なる病気です。
強迫性障害の症状には、強迫観念強迫行為があります。自分の意思に反してある考えが頭に浮かんで離れず(強迫観念)、その強迫観念による不安から同じ行動を何度も繰り返してしまうこと(強迫行為)です。例えば、以下のようなものが挙げられます。

  • 手を繰り返し洗ったり、戸締りやガス栓を過剰に何度も確認したりする
  • 自分の決めた手順で物事を行わないと恐ろしいことが起こるという不安から、どのようなときも同じ方法で物事を行う

このような強迫観念、強迫行為に毎日何時間も費やし、日常生活を送るのが困難になることもあります。強迫性障害の患者さんは、通常その症状が問題であることを認識しており、止められないことに苦痛を感じ、治療が必要であることを認めています。一方で、強迫性パーソナリティ障害の患者さんは、自分の行動を必要なものだと考えており、病識がありません。

強迫性パーソナリティ障害の治療

強迫性パーソナリティ障害の治療は、特有の治療ではなくパーソナリティ障害全般の治療法に準じて行われます。精神療法(心理療法)が中心となり、必要に応じて薬物療法が行われます。

精神療法(心理療法)

パーソナリティ障害の治療では、精神療法が重要な役割を果たします。
精神療法は、患者さんが治療者と協力して、自分の思いや気持ちを整える、問題への認識を深め、対処法を築き上げる、といった作業を進めることによって、問題を克服しようとする治療法です。
精神療法のなかに、認知行動療法、精神力動的精神療法などがあります。

認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy:CBT)

現実の受け取り方やものの見方をしなやかにやわらかくときほぐし、極端で強迫的な考え方を、現実に沿ったものの見方に変える練習をする精神療法です。考え方に変化がみられるようになったら、問題を解決する方法や人間関係を改善する方法を模索し練習を重ねます。

精神力動的精神療法(精神分析的精神療法)

症状や悩みの背景にあるものの、まだ十分に意識されていない葛藤や自分の傾向を知ることで、それらの改善を目指す精神療法です。無意識の部分や自分の内面に焦点を当て、自己の理解や、それまでは考えることの難しかった自分のあり方について考えられるようになっていくことが期待されます。

薬物療法

現在、パーソナリティ障害そのものに対して効果が認められた薬はありません。強迫的な思考や頑固さを和らげる目的で、抗うつ薬を使用することがあります。薬物療法はあくまで補助的な役割であり、精神療法と組み合わせて用いることが必要です。

強迫性パーソナリティ障害になりやすい人・予防の方法

強迫性パーソナリティ障害になりやすい方

家族内にパーソナリティ障害、うつ病の方がいる場合に発症しやすいと言われています。また、男性に多く、幼少期のトラウマと関連していることも報告されています。さらに、次のような精神疾患をもつ方は発症リスクが高いと考えられています。

不安障害:パニック障害、全般性不安障害など
気分障害:うつ病、双極性障害など
軽度~中等度の物質使用障害:アルコールや薬物の使用により、心身や社会生活への悪影響が見られる状態

強迫性パーソナリティ障害の予防の方法

原因がさまざまな要因が重なっていることもあるため、予防することは難しいですが、次に挙げるような方法が有効である可能性があります。

  • 完璧を求めすぎず、柔軟に物事を受け入れられるよう考えることを習慣にする
  • 周りの方との適切なコミュニケーションについて学ぶ
  • ストレスの原因となっているものから離れる
  • 早めのカウンセリングを受ける

ただし、本人は自分には問題がないと考えているため、こういったことを早期に行うのは難しいことが多いです。周囲の方も長期的な視点で関わっていく必要があり、負担が大きい場合には、相談できる方や周りを頼ることも重要な対処方法です。異変や問題に気付いたら、早めに周囲の方や病院に助けを求めることが大切です。

関連する病気

この記事の監修医師