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依存症
伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

依存症の概要

依存症とは、特定の物質や行動に対して、やめたくてもやめられないほど強い依存心を抱き、欲求をコントロールできなくなった状態のことです。
依存症は、物質に対する依存症と行動に対する依存症の2タイプに分けられます。物質依存は、アルコールや薬物、タバコなどに対する依存、行動依存は、ギャンブル、インターネット、ゲームなどの行動に対する依存のことです。

次第に特定の物質や行動への欲求が強くなり、仕事や日常生活に支障をきたすようになるのが特徴です。依存症から抜け出そうとすると、強い不安やストレス、身体的な症状が現れることがあります。

依存症は本人が自覚できていないケースも多く、本人だけでの改善は困難な場合があるため、治療には専門家や周囲の友人・家族の協力が重要です。

依存症

依存症の原因

脳には「報酬系」という回路が存在します。これは欲求を満たしたときや喜びを感じたときに活性化する回路で、アルコールやタバコ、ギャンブルなどはこの報酬系を強く刺激することがわかっています。しかし、繰り返すことによって刺激に対する「慣れ」が生じ、同じ刺激では脳が満足しなくなります。それにより、今までよりも使用量や使用頻度が無意識に増えていくことが、依存症が引き起こされる原因です。

このような脳の変化は遺伝的要因、心理的要因、環境的な要因によって発症しやすいと言われています。

遺伝的要因

依存症の種類によっては、遺伝が大きく影響しているものがあります。たとえばアルコール依存症患者の約半分は遺伝が原因だったと報告されている研究があります。アルコールを分解する酵素の遺伝子が影響していますが、具体的な遺伝子は判明していません。
反対に、アセトアルデヒド(アルコールを分解する際に産出する物質)の分解能力が低い遺伝子をもっている人は、、顔が赤くなったり、や動悸がしやすくなったりするため、飲酒の意欲が低下し、依存症になりづらいといわれています。

心理的要因

ストレス、トラウマ、不安、抑うつといった精神的な問題を抱えている人は、問題から逃れるために物質や行動に依存しやすくなります。自己評価の低さや人間関係の問題を抱えている人も、依存症のリスクが高まります。

環境的要因

依存症になりやすい環境に置かれている場合、依存症のリスクが上がります。例えば薬物やアルコールが手に入りやすい環境、友人や家族がギャンブルを日常的に行っている環境などが挙げられます。

依存症の前兆や初期症状について

依存症は初期段階で何らかのサインが見られます。代表的な依存症の前兆や初期症状は以下のとおりです。

アルコール依存症

アルコール依存症では、本人が気づかないうちに以前より頻繁に飲酒するようになり、飲む量も増えます。飲みたいという欲求が強くなり、飲酒を隠すような行動も見られることがあります。

また、周囲からの指摘を気にしなくなったり、激しく否定したりするのも特徴です。次第にアルコールに対する耐性がつき、同じ量では満足できず「もっと多く飲みたい」という衝動に駆られるようになります。

ニコチン依存症

タバコに含まれる「ニコチン」による依存症では、吸う本数の増加が見られるようになります。本人が気づかないうちに、以前より頻繁にタバコを吸い、無意識に手が伸びるようになるのが特徴です。

「禁煙したい」と思っても、やめられずに失敗に終わることが多いです。健康への影響も気にしなくなり、周囲から禁煙を勧められても無視する傾向が見られます。こうしたことを繰り返し、より多くのタバコを吸うようになります。

ゲーム依存症

最初は趣味やストレス解消として始めたゲームが、次第に生活の中心となり、やめられなくなります。

最初は1日1時間程度だったのが、3時間、4時間と徐々に増加し、最終的には仕事や学業に加え、食事や睡眠にまで支障をきたすほどになります。ゲームをしていないと不安やイライラが募ることもあります。

また、ゲームのために人間関係を犠牲にするケースもめずらしくありません。それによって孤立感が増し、ゲームへの依存性が高まる悪循環に陥りやすくなります。

ギャンブル依存症

ギャンブル依存症では、ギャンブルに費やす時間や掛け金が増えていきます。最初は娯楽として始めたギャンブルが徐々に日常生活の中で優先事項になり、やめたくてもやめられない状態となります。
最終的には生活に必要なお金にまで手を出すようになり、貧困につながったり、家族・友人との関係に亀裂が生じたりすることもあります。

薬物依存症

薬物の使用頻度や量の増加が見られるようになります。ストレス解消や好奇心、周囲からの勧めで少量の摂取から始まり、次第に薬物に耐性がついてしまい、より強い効果を求めて摂取量が増えます。

薬物を使用していないときは、不安、イライラ、体の痛みなどの禁断症状を生じます。それによって、薬物を使用して一時的に症状を和らげようとし、さらに依存が深まる悪循環に陥ることがあります。

インターネット依存症

インターネットに多くの時間を費やすようになります。ソーシャルメディア、動画視聴、オンラインゲーム、チャットなどに長時間を割き、気がつけば何時間も過ぎていると感じるのが特徴です。食事や睡眠、家族との時間が後回しになります。

また、インターネットが使えない状況だと、イライラや不安から何とかして接続しようとする行動が見られます。

依存症の検査・診断

依存症の検査では始めに、日常の中で特定の物質や行動にのめり込んでいるものがないかを詳しく問診します。そのうえで、アメリカ精神医学会が定めた精神障害の診断・統計マニュアル「DSM」やWHO(世界保健機構)によって定められた国際疾病分類「ICD」の診断基準をもとに診断します。

一般的に他の病気では、画像検査や血液検査にて確定診断を行うことが多いですが、依存症では「血中のアルコール濃度が高い=アルコール依存症」と診断はできません。

依存症の治療

依存症の治療は、本人に合った方法で治療を続けることが重要です。よく行われる治療法には、依存している物質や行動に対する自己の認識を少しずつ調節する認知行動療法や、依存症の問題を抱えた人同士で集まり共感や支援をし合う自助グループへの参加(集団精神療法)があります。

特効薬のようなものはなく、治療を継続していくほかありません。依存症は、脳の機能の変化が原因で、心の弱さが原因ではないため、治療中に飲酒やタバコなどの特定の物質の利用や行動をしてしまっても、根気強く再び治療を行っていくことが重要です。

依存症になりやすい人・予防の方法

依存症は、遺伝や周囲・家庭環境、うつ病などの精神疾患などの問題があるとなりやすいですが、脳機能の変化で生じるため、誰にでも起こりうる問題です。とくに強いストレスにさらされていると依存症を発症しやすいため、何か悩みがある場合は、周囲へ相談や助けを求めることが大切です。

また、アルコール依存症やニコチン依存症、薬物依存症は、未成年での摂取は依存症になりやすいことが知られています。

依存症は本人が自覚できない場合も多いです。依存症の疑いのある人が近くにいれば、医療機関や精神保健福祉センター、保健所などに相談してください。


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