

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
目次 -INDEX-
フラッシュバックの概要
フラッシュバックとは、イヤな経験を思い出したりイヤな経験にひも付く行動・感情・事柄に触れた際に、自分の意思に関係なくを当時のイヤな感情・恐怖などを再体験することいいます。
自然再燃現象とも呼ばれ、フラッシュバックという言葉は、覚醒剤などの薬物使用者が薬物をやめた後に起きる症状の1つとしてよく使われます。
アルコール中毒や薬物の乱用によって起きる妄想や幻覚などが、治療によって一時的に回復しても、何かのきっかけで自然再燃してしまう症状のことです。
フラッシュバックを起こすことにより、自傷行為を行ったり、他人を傷つけたりといった問題行動を起こすケースも少なくありません。
フラッシュバックの原因
フラッシュバックを起こす原因には大きく分けて3つの原因があります。
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)によるもの
- 薬物依存を経験したことによるもの
- 発達障害に起因するもの
PTSDとは
命に関わるような危険な体験をしたり、恐怖感を味わったりした人が、そのときの記憶をうまく整理できずに何度もそのときの感覚を思い出してしまう精神疾患です。PTSDの原因は、必ずしも生命の危険を伴うような経験とは限りません。人前で叱られたり、大きなミスをしたりというような経験がPTSDになるケースもあります。また自分自身の生命に関わる経験ではなくても、人が事故にあった瞬間を目撃したというような経験がPTSDを引き起こす場合もあるでしょう。日本人の1.3%がこの疾患を抱えているともいわれています。原因となる体験をした直後にこの症状が起きるのは珍しいことではありませんが、体験後1ヵ月以上が経過しても症状が継続する場合にはPTSDと診断されます。患者さんの半数以上は時間の経過とともに3ヵ月以内に回復する一方、1年以上経過しても回復しないケースがあり、そのようなケースには抗うつ剤や認知行動療法などによる治療が有用です。
PTSDのもたらすフラッシュバック
PTSDの原因となった体験が、本人の意思とは関係なく思いだされ、当時の恐怖感・危機感・不快感などが今も続いているかのように感じてしまいます。PTSDの症状としては侵入症状(再体験症状)といわれるものがあり、何かのきっかけ(トリガー)によって何度も繰り返しそのときの体験を思い出します。
薬物依存とは
初めは気持ちが高揚したり快感を感じたり不安を忘れられたりという感覚から、何度も繰り返し薬物を使用するようになります。何度も薬物を使用するうちに薬物に対して耐性ができ回数や量が増えていくうちに薬物をやめられなくなる状態が薬物依存です。薬物によっては効果が切れるとイライラしたり、身体に苦痛を感じたりするため、より一層薬物を止められない状態になっていきます。このように依存性の高い薬物の度重なる利用は、心や脳に影響を与えます。幻覚が見えたり、被害妄想といった症状が現れることも珍しくありません。こういった薬物に依存してしまった状態から自力で抜け出すのは難しく、薬物依存から回復するためには、医療機関での治療を必要とすることが一般的です。
薬物依存のもたらすフラッシュバック
薬物依存の状態から治療を受けて表面的に回復したように見えても、ちょっとしたストレスなどによって、幻覚や被害妄想などを見たり感じたりする状態に戻ってしまいます。この状態をフラッシュバックと呼びます。これは薬物依存から抜け出した直後に起こることもあれば、数年経ってからも起こりうる状態です。薬物依存に一度陥ってしまうと、フラッシュバックのリスクがなくなることは生涯ないといわれています。
発達障害とは
発達障害は、脳の機能の発達に大きく関わる障害です。大まかに以下のような障害をまとめて発達障害といいます。
- 広汎性発達障害
- 注意欠陥多動性障害(AD/HD)
- 学習障害(LD)
- トゥレット症候群
- 吃音 など
広汎性発達障害は、自閉症スペクトラム・アスペルガー症候群・レット症候群・小児期崩壊性障害などを含みます。また、発達障害の特徴として、以下のようなものがあります。
- 他者とのコミュニケーションが上手にとれない
- 他者の気持ちを想像することが苦手
- 集中すると周囲が目に入らなくなる(過集中)
- 落ち着きがなく集中することが苦手
- 音に敏感で大きな物音を極度に怖がる
- 極端な不器用
- 文字や絵をかくときの筆圧が弱い
- 注意を受けるとカッとなりやすい
- 一度興奮するとおさまるのに時間がかかる
- パニックになりやすい
程度に個人差があるため、軽度な場合は子どもの時期には気付かれず、大人になってから発見されることも少なくありません。早めに気付ければ、適切な療育を受けて能力を伸ばすことが可能になります。気になることがある場合は、早めに市町村の窓口に相談することをおすすめします。
発達障害のもたらすフラッシュバック
発達障害には苦手が多いという特徴があります。感覚が過敏であったり、思考が0か100かというように極端であったりということから、イヤなことがあった際の記憶がフラッシュバックにつながりやすいといえます。これを発達障害だから仕方ないと諦めてしまうと、PTSDの発症につながりやすくなるため、早めの対応が必要です。自閉症スペクトラムの症状であるカメラアイといわれる瞬間記憶能力も、一度見たものを写真のように覚えてしまい忘れられないという点で、イヤな記憶を忘れられなくなる原因となる可能性があります。
フラッシュバックの前兆や初期症状について
フラッシュバックの原因によっても違いがありますが、フラッシュバックの初期症状には以下のようなものがあります。
- 息苦しくなる
- 急に悲しい気持ちになり涙が出る
- 何もないのに突然恐怖に襲われる
- 頭が真っ白になり、何も考えられなくなる
- 突然怒りが込みあげて抑えられなくなる
- 焦燥感に苛まれる
- 不安でたまらない気持ちになる
このような症状に心当たりがある場合は、精神科または心療内科を受診することをおすすめします。
フラッシュバックの検査・診断
フラッシュバックそのものの検査や診断は難しいですが、その原因となっているものを見つけるための検査や診断は存在します。PTSDを診断する場合には、以下のような基準で判断されます。
- 命に関わるような危険な体験を直接的または間接的にしたことがある
- フラッシュバックのような症状が1ヵ月以上続いている
- 症状が身体または精神に重大な苦痛をもたらしている
- 症状が日常生活を送るうえで大きな支障になっている
- PTSDに分類される症状(侵入症状・回避や麻痺症状・過覚醒症状・気分が否定的になる)が複数ある
薬物依存の場合は、明確に薬物を使用したことがあるかどうかで判断が可能です。
発達障害に関しては発達障害の特徴を参照し、該当部分が気になる場合は市町村の窓口に相談しましょう。
フラッシュバックの治療
フラッシュバックの原因が何であるのかによって治療法は変わってきます。PTSDの治療の場合は、精神療法・薬物療法が一般的です。
薬物やアルコールの依存症については、依存症の治療(物質使用障害治療)が必要になります。
発達障害については、早期に発見できれば療育など適切な対応を取ることで軽減される可能性があります。
精神療法
呼吸法・ストレス管理法などを用いて、リラクゼーション効果を狙う方法です。例えばヨガや瞑想などを通じて不安になる気持ちをコントロールできると、症状が軽減されることがあります。カウンセリングや行動療法によって、フラッシュバックを引き起こしている事象に対して徐々に慣らしていくという方法をとる場合もあります。
薬物療法
PTSDに対しては抗うつ剤が有用だと考えられており、うつ症状のない人に対しても一般的に使われる薬物療法です。医師の診断やカウンセリングに基づいた使用が前提ですが、薬によって症状が軽減する可能性が見込めます。
物質使用障害(依存症)の治療
医師による物質使用障害の診断を行います。そのうえで、物質の種類や使用状況に応じて対策をとります。最初にカウンセリングを行い、必要に応じて薬剤も使います。物質使用障害治療には、最終的に周囲の協力が欠かせません。依存していた薬物を止めた状態を作り、それを持続していくために、家族や支援団体などからのサポートが必要です。依存症の治療はここで終わりというのがないところに難しさがあります。薬物をやめてもフラッシュバックの症状が出る可能性があるため、できるだけ薬物に関連のあるものを遠ざけて生活することを心がけましょう。
フラッシュバックになりやすい人・予防の方法
発達障害のある人は、ない人に比べるとフラッシュバックになる可能性が高い傾向にあります。障害のない人でも、命が危険にさらされるような経験をしたり、DVやいじめなどの経験をした人やそれを目撃した経験を持つ人はフラッシュバックを体験する可能性があります。原因となる体験を避けることは大切ですが、自分の意思でそれを避けられないケースも少なくないでしょう。そのような体験をしてしまった場合は、自分一人で抱え込むのではなく、PTSDになる前に対処することを考えましょう。適切な対応をとることで原因となった体験を引きずることなく未来に進める可能性が高くなるといえます。
関連する病気
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 急性ストレス障害
- うつ病
参考文献




