

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
射精障害の概要
射精(しゃせい)障害は、男性における性機能障害の一つであり、性行為やマスターベーションにおける射精に支障が生じた状態です。
射精は、精液を尿道へ排出する現象、尿道に排出された精液を体外へ送り出す現象、精液が膀胱に逆流しないように尿道口を閉じる現象の3つから成り立ち、筋肉と陰部の神経がかかわっています。これらの現象に支障が出ることで、射精障害の発症リスクが高まります。
代表的な射精障害としては、早漏や遅漏、膣内射精障害、逆行性射精などが挙げられます。
射精障害の症状は、種類により異なります。
早漏や遅漏では、射精までの時間を自分の意志でコントロールしづらくなります。
膣内射精障害になると、マスターベーションで射精できても、性行為で射精できなくなります。
逆行性射精では射精した感覚はあるものの、精液が膀胱内に逆流して体外へ放出される精液量が減少したり、射出されなくなったりするなどの症状がみられる場合もあります。
射精障害の原因としては、心理的な問題や性的刺激に対する反応が異常な状態、誤ったマスターベーション、薬物による副作用などが挙げられます。
主な治療法には、マスターベーションの方法の見なおし、カウンセリング、薬物療法などがあります。
射精障害は治療に時間がかかるケースが多く、妊娠を希望する場合には人工授精が必要となるケースも珍しくありません。
思春期のうちから正しいマスターベーションの方法を身につけることが予防につながります。

射精障害の原因
射精障害にはさまざまな種類があり、発症する原因もそれぞれ異なります。
代表的な射精障害には、早漏、遅漏、膣内射精障害、逆行性射精などが挙げられます。
早漏の主な原因は、ストレスやプレッシャーなどの心理的な問題、性的刺激に対する反応が異常な状態、ホルモンバランスの異常、遺伝などとされています。
遅漏や膣内射精障害の主な原因は、誤った方法によるマスターベーションです。
強すぎる刺激や、誤ったマスターベーションは性行為による刺激と異なるため、性行為で射精ができなくなる場合があります。
逆行性射精の主な原因は、射精時における内尿道口の閉鎖不全です。
閉鎖不全の要因には、神経の伝達障害や内尿道口括約筋の機能低下、膀胱の形状異常などが挙げられます。
また糖尿病や一部の腹部の手術などは、逆行性射精との関連が報告されています。
事故による脊髄損傷が原因で神経が傷つき、射精が困難になる場合もあります。
さらに、一部の抗うつ薬や前立腺肥大症の治療薬などは、射精障害との関連性が指摘されています。
射精障害の前兆や初期症状について
射精障害の症状も、種類によって異なります。
早漏や遅漏では、射精までの時間を自分の意志でコントロールしづらくなります。
明確な時間の基準はありませんが、自らの意志よりも短すぎたり長すぎたりする場合には、早漏や遅漏の可能性があります。
膣内射精障害が生じると、マスターベーションで射精できても、性行為で射精できなくなります。
逆行性射精においては、射精した感覚はあるものの、精液が膀胱内へ逆流して体外に放出される精液量が減少したり、射出されなくなったりするなどの症状がみられる場合もあります。
一般的に正常な精液量の目安は1.5ml以上とされており、1.5mlに満たない場合は逆行性射精の可能性があります。
いずれの射精障害も男性不妊症の原因となり得ます。
そのため妊娠しづらくなることも射精障害に共通する症状と言えるでしょう。
また、射精障害は勃起不全(ED)との関連性も指摘されています。
「勃起が不十分で満足に性行為を行えない」「勃起がすぐに萎えてしまう」などの症状がある場合は、射精障害を合併している可能性も考えられます。
射精障害の検査・診断
射精障害の診断では、問診や血液検査、尿検査などがおこなわれます。
問診では射精や性行為における悩み、糖尿病の有無などを確認します。
射精障害の種類によっては、性行為や普段のマスターベーションの方法について確認する場合もあります。
血液検査は、糖尿病の重症度を把握したり、男性ホルモンや性腺刺激ホルモンなどを測定したりするためにおこなわれます。とくにパートナーとの妊娠を希望している場合は、これらのホルモン値に異常がないかを確認し、射精障害の原因を調べることが重要です。
逆行性射精が疑われる場合は、尿検査も実施することが多いです。
射精した後の尿を採取して、精子が含まれているかを観察します。
射精障害の治療
射精障害の治療法は、種類によってさまざまな治療法があります。
早漏や遅漏、膣内射精障害などでは、マスターベーション方法の見直しが重要です。
「陰茎を強く握る」「布団や床に押しつける」などの行為は避け、「弱い力で陰茎を握る」「上下に手を動かす」ようにしてマスターベーションをおこないましょう。
射精障害の発症にはストレスやプレッシャーなどの心理面が関与しているケースもあるため、必要に応じてカウンセリングを実施することもあります。
また、早漏や逆行性射精の治療では、薬物療法が選択されるケースもあります。
早漏の治療ではマスターベーションの訓練と抗うつ薬の併用、逆行性射精の薬物療法では抗うつ薬やビタミンB12を含む薬剤などが選択される場合があります。
妊娠を望む場合で、上記の治療で十分な効果が得られないケースでは、人工受精や体外受精などの治療法が選択される場合もあります。
糖尿病の関与による発症が疑われる場合は、糖尿病の治療を行い血糖値を安定させ、必要に応じて射精障害の治療も平行しておこなわれます。
薬剤による射精障害では、薬剤の変更が検討されることもあります。
射精障害になりやすい人・予防の方法
不適切なマスターベーションは、遅漏や膣内射精障害などの発症リスクを高めます。
疲れている状態や短時間のマスターベーションも、早漏になりやすくなる要因の一つだと考えられています。
射精障害は治療に長い時間を要するケースが多く、根気強く治療に取り組む必要があります。
射精障害が原因で勃起不全を発症したり、妊娠のために人工授精が必要となったりするケースも珍しくありません。
射精障害の予防には、思春期のうちから正しいマスターベーションの方法を身につけることが重要です。
また、糖尿病を患っている人は、逆行性射精をきたしやすいとされています。
糖尿病の悪化は射精障害のリスクを高めるため、健康的な生活習慣や食生活の改善などに取り組みましょう。
ほかにも一部のうつ病治療薬、前立腺肥大症の治療薬などを使用している場合は、射精障害の発症リスクが高まります。
うつ病や前立腺肥大症などの治療薬には射精障害を引き起こすものもあります。妊娠を希望する場合は、医師に相談し、可能であればリスクの低い薬剤へ変更を検討することが望ましいでしょう。
参考文献
- 思春期男子におけるマスターベーション教育の問題点 東邦大学 第30回 日本思春期学会
- 男性不妊症としての逆行性射精の研究 歯科学報 101巻 4号
- 脊髄損傷患者における性機能障害 脊髄外科 34巻2号
- 厚生労働省 抗うつ薬で誘発される性機能障害に関する検討
- 褐色細胞腫の術前血圧コントロールに投与されたドキサゾシンによる射精障害の1例 泌尿器科紀要 55巻6号
- 東邦大学医療センター 大森病院 リプロダクションセンター(泌尿器科)
- 男性不妊 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
- 勃起障害 慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイト
- 日本生殖医学会 不妊症の検査はどこで、どんなことをするのですか?
- 精液検査を受けられる患者様へ 東北大学泌尿器科
- 脊髄反射を介した泌尿生殖器の機能制御に関与するセロトニン(5-HT)受容体とそのメカニズムに関する研究 つくばリポジトリ
- 膣内射精障害患者に対するマスターベーションエイドを用いた射精リハビリテーション 日本泌尿器科学会雑誌 103巻3号




