目次 -INDEX-

大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

プロフィールをもっと見る
京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

男性性器損傷の概要

男性性器損傷は、陰茎や陰嚢、精巣といった外陰部に強い衝撃が加わることで起こる外傷性の疾患です。交通事故やスポーツ外傷、暴行、自転車・バイクによる衝撃など、日常のさまざまな場面で発生する可能性があります。陰茎の損傷の中でも代表的なのが「陰茎折症」とよばれるもので、勃起時の陰茎に無理な力が加わることで発生します。受傷の瞬間には「パキッ」という音を伴って強い痛みが起こり、陰茎は腫れて「なす状」に変形することが典型的です。精巣損傷では陰嚢の腫脹や圧痛、皮下出血などがみられ、重症例では精巣破裂に至ることもあります。

診断には、詳細な問診と身体診察に加えて、超音波検査が有効です。陰茎損傷では白膜の断裂を、精巣損傷では血腫の有無や精巣の構造破綻を評価します。超音波検査のみでの評価が難しい場合にはMRIの撮影も行われます。陰茎折症や精巣破裂は可能な限り早期に手術を行うことが、後遺症予防に重要です。

接触型スポーツ時の陰部保護具の着用や、性交時の無理な体位の回避で予防できます。受傷時には恥ずかしさから受診が遅れがちですが、早期診断・治療が予後を左右するため、早めの医療機関を受診してください。

男性性器損傷の原因

男性性器損傷は、陰茎や陰嚢、精巣に外力が加わることで生じる外傷性疾患です。交通事故、スポーツ外傷、暴力、自転車やバイクのサドルによる衝撃など、比較的日常的な場面でも発生しうるため、注意が必要な疾患です。
陰茎損傷では、勃起時に無理な曲げが加わることで「陰茎折症」が発生することがあります。性行為や強制的な陰茎の屈曲、自慰行為、勃起状態での寝返りなどが原因となることが多いです (参考文献 1) 。

精巣の損傷は、交通事故、暴行、スポーツ時の鈍的損傷が原因となることが多いです (参考文献 1) 。

男性性器損傷の前兆や初期症状について

陰茎折症の場合、受傷時に「パキッという音」がして激痛を伴い、勃起した陰茎は急激に縮み、性行為の継続が不可能になります。陰茎が変形して「なすのような形」に変形するほか、血種ができれば陰茎の腫脹、変色が生じます。

精巣損傷では、陰嚢の腫脹、圧痛、時に痛みのために吐き気や冷汗を伴うことがあります。陰嚢の皮膚の下に血液がたまって紫斑を形成し、精巣が触れにくくなることもあります。

後述するように、男性性器損傷は後遺症を残しうる疾患です。股間部に衝撃を受けたのちはお近くの泌尿器科を受診するか、時間などの問題で泌尿器科を受診できない場合には救急外来を受診してください。

男性性器損傷の検査・診断

診断の第一歩は、詳細な受傷状況の聴取と視診・触診です。出血や変形の有無、圧痛、精巣の位置・形態を確認します。男性性器損傷が疑われる場合には次のような画像検査を行います (参考文献 1) 。

  • 陰茎損傷

    超音波検査で白膜が断裂部位を確かめます、そのほかMRI検査も有用です。陰茎損傷では尿道損傷を併発する場合があるため、症状や尿検査の所見から尿道損傷が疑われる状況では海綿体造影や逆行性尿道造影、尿道鏡検査を行います。

  • 精巣損傷

    超音波検査で陰嚢内血種、陰嚢壁の腫脹、精巣内外のエコーパターンに異常がないか確かめます。白膜の連続性が保たれていなかったり、精巣内のエコーが不均一である場合には精巣破裂が疑われます。超音波検査のみで評価が難しい場合にはMRIの撮影をします。

男性性器損傷の治療

男性性器損傷の治療は、損傷部位と重症度に応じて決定されます。原則として、早期診断と適切な外科的介入が、後遺症の予防に直結します。

陰茎折症では早期に手術を行います。早期に陰茎海綿体を包む白膜の縫合を行うことで長期合併症を予防することができます (参考文献 1) 。術後はほぼ全例で勃起機能が回復しますが、心理的影響に悩む方もいます。
尿道を損傷している場合には、並行して尿道の治療も行います。こちらは別記事で詳しく説明しております。

精巣損傷では早期に手術を行います。断裂した白膜の修復や、血行のない組織の摘出 (デブリ-ドメント) を行うほか、修復不可能な状態では精巣の摘出を行います (参考文献 1) 。

男性性器損傷になりやすい人・予防の方法

男性性器損傷は偶発的に起こることが多く、特定の疾患や体質に起因するわけではありません。次のような状況では受傷リスクが高いと考えられます。

  • 性交中に無理な体位や強い力が加わりやすい状況
  • 格闘技やラグビー、サッカーなどの接触型スポーツの最中
  • 交通事故や作業現場での衝突リスクが高い職種

性交においては、勃起時に強い力が股間に加わらないよう注意してください。格闘技をする際にはファウルカップ (陰部保護具) の着用が有効です。そのほかのスポーツ・アクティビティでも、股間のプロテクターがある場合には着用すると予防になります。

羞恥心から受診が遅れると、性機能障害などの後遺症が残るおそれがあります。自己判断せず、早めの医療機関受診が勧められます。

この記事の監修医師