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陰茎尖圭コンジローマ
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

陰茎尖圭コンジローマの概要

陰茎尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルス(HPV)によって性器のまわりに小さなイボができる病気です。性交によってヒトパピローマウイルスが感染することで起こる、いわゆる性感染症の一つです。名前に陰茎(いんけい)とありますが、女性もかかることがあり、特に10代後半から30代くらいの性活動が盛んな年代に多く見られます。カリフラワーのようなイボが現れるのが特徴的で、かゆみや痛みのある場合もあります。発症した場合は外科的な治療や薬による治療が行われますが、予防するためには性交時の適切なコンドームの使用が大切です。(参考文献1)

陰茎尖圭コンジローマの原因

この病気の原因は「ヒトパピローマウイルス(HPV)」という非常に小さなウイルスです。HPVには100種類以上の型があり、型によって発症する病気が異なります。6型と11型というタイプが陰茎尖圭コンジローマの主な原因になります。この2つは低リスク型と呼ばれ、がんになる危険性はほとんどありません。 ただし、まれに16型や18型などの高リスク型が関係している場合もあります。これらは子宮頸がんなどを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。 ヒトパピローマウイルスは感染した細胞の機能を使ってウイルス自身を合成したり、感染した細胞の分裂を促進したりします。感染細胞が異常に増殖することでイボが形成されます。(参考文献1)

陰茎尖圭コンジローマの前兆や初期症状について

陰茎尖圭コンジローマは、ヒトパピローマウイルスに感染してから発症するまで数週間〜3ヶ月程度かかります。また、感染してもすぐには気付かないことも少なくありません。表面がとげとげしたカリフラワーのような、淡いピンクや茶色っぽいイボが現れるのが特徴的な症状です。イボに触れる、性器周辺の違和感、かゆみ、痛み、おりものの増加などの症状から気付くことが多いです。 男性の場合は、陰茎の先や皮の内側、陰のうなどに、女性の場合は、膣の入口や子宮口、外陰部などにできやすいです。おしりのまわりや、尿道口にできることもあります。(参考文献1)

陰茎尖圭コンジローマの検査・診断

陰茎尖圭コンジローマは見た目が特徴的なので、多くの場合は医師が目で見て尖圭コンジローマであるとわかります。ただし、見た目が似ているがんのような病気もあるため、確定診断するためにはイボの一部を取って検査を行います。 詳しい検査としては、ウイルスのDNAを調べて、どの型のHPVに感染しているかを調べる方法があります。これには、イボの一部を採るもしくは膣の内部を擦って細胞を採る必要があります。結果が出るまでには1〜3週間ほどかかり、100種類以上あるウイルスDNAの型のうち、尖圭コンジローマは6型と11型というタイプが検出されることが多いです。(参考文献1)

陰茎尖圭コンジローマの治療

陰茎尖圭コンジローマの治療には外科的な方法と薬による治療があります。まず外科的な治療としては、切除、CO₂レーザー蒸散法、電気メスによる焼却法、液体窒素による凍結法があります。 切除とは単純にイボを切り取る治療法です。CO₂レーザー蒸散法は二酸化炭素のレーザー光を使って、イボを焼いて取り除きます。治りが早く、周りの皮膚を傷つけにくいため、最も行われる方法です。電気メスによる焼却法は、発熱した電気メスを用いてイボを焼き切ります。液体窒素による凍結法はマイナス196度の液体窒素を用いてイボを凍らせて壊します。 薬物治療としては5-フルオロウラシル軟膏やブレオマイシン軟膏などの抗悪性腫瘍剤を含んだ軟膏を使います。ただし、日本では使える薬に限りがあり、海外で使われている薬が日本では認められていないこともあります。 陰茎尖圭コンジローマは再発する可能性があるため、また感染してから発症するまでに1〜3週間ほどかかるため、治療後は少なくとも3か月はしっかりと経過を見て再発していないか確認することが大切です。さらに、本人が治っても、パートナーがまだウイルスを持っていると再感染してしまうことがあります。そのため、パートナーも一緒に検査・治療を受けることが必要です。(参考文献1)

陰茎尖圭コンジローマになりやすい人・予防の方法

陰茎尖圭コンジローマは世界中でみられる病気で、日本では、1年間に10万人あたり30人ほどが新たに発症しているといわれています。1999年以降増加傾向にあり、最近では女性の患者さんも増えてきています。 陰茎尖圭コンジローマは皮膚や粘膜のわずかな傷から感染します。そのため、感染予防で大事なことは性行為をする時にコンドームを正しく使うことです。性器周辺の肌が荒れている場合は特に感染しやすいので注意が必要です。 また、ヒトパピローマウイルスに対するワクチンも開発されています。現在日本国内では、感染を防ぐことができるウイルスの型によって、2価ワクチン(サーバリックス)、4価ワクチン(ガーダシル)、9価ワクチン(シルガード9)の3種類があります。ただ、基本的にどれも高リスク型である16型や18型を予防するワクチンのため、尖圭コンジローマよりも子宮頸がんを予防するためのワクチンです。(参考文献1,2)

関連する病気

  • ヒトパピローマウイルス感染
  • 性器クラミジア感染症
  • 淋菌感染症
  • ヘルペス性尿道炎
  • 性行為感染症
  • 前癌病変

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