

監修医師:
大坂 貴史(医師)
急性精巣上体炎の概要
急性精巣上体炎は、精巣の後方に位置する精巣上体に急性の炎症が生じる疾患であり、成人男性の陰嚢痛の原因として頻度の高い病態です。多くはクラミジアや淋菌などの性感染症が原因であり、若年〜中年の性活動が活発な男性に好発します。一方で高齢者では、前立腺肥大症や尿路カテーテル留置、泌尿器科的処置後の尿路感染症が原因となることがあります。症状は片側の陰嚢の痛みと腫れが主体で、進行すると発熱や排尿障害を伴うことがあります。診断には病歴聴取、身体診察、尿検査、必要に応じて超音波検査が行われます。治療は原因微生物に応じた抗菌薬投与が中心で、2~3週間の治療が推奨されています。予防にはコンドームの使用、複数パートナーとの関係に対する感染リスクの理解、泌尿器疾患の適切な管理が重要です。パートナーの同時治療も再感染防止に不可欠です。
急性精巣上体炎の原因
急性精巣上体炎は、精巣の上に位置する精巣上体に急性の炎症が生じる疾患です。
原因として最も多いのは感染症です。クラミジア・トラコマチスおよび淋菌が主な起炎菌です (参考文献1, 2)。これらは性行為時に感染する性感染症で、尿道から精管を逆流して精巣上体へと到達し、炎症を引き起こします。
急性精巣上体炎の前兆や初期症状について
急性精巣上体炎は、発熱を伴う、陰嚢の一側に生じる痛みと腫れで発症することが一般的です (参考文献 1) 。典型的には、数日の経過で徐々に悪化する陰嚢の痛みがあり、数時間で症状が悪化する場合には精巣捻転という他の緊急疾患の可能性が高くなります (参考文献 2) 。
両側で症状が出る場合にはムンプスウイルス感染症 (おたふく風邪) による精巣上体・精巣炎が示唆され、その場合には耳の近くの唾液腺 (耳下腺) の炎症を併発する場合があります (参考文献 2) 。
性活動期の男性は尿道炎から波及して精巣上体炎に至っている場合が多く (参考文献 1) 、 その場合には排尿時の違和感、尿道からの分泌物、尿の混濁などが先行して現れることもあります。
精巣上体炎などの男性の性感染症の治療を得意とするのは泌尿器科です。お近くに泌尿器科がある場合はそちらを受診していただき、近くにない場合は内科を受診してください。
急性精巣上体炎の検査・診断
診断は、病歴の聴取と身体診察が基本です。問診では症状の経過、性交渉歴、排尿症状の有無、泌尿器科的処置の既往などを確認します。
身体診察ではまずは両方の睾丸を触診して痛みの有無を確かめます。前立腺炎を併発する場合があるため、前立腺の触診も行います。
尿検査をして、尿の中に原因微生物がいないか確かめます (参考文献 2) 。
鑑別しなければいけない重症疾患に精巣捻転があります。これは陰嚢の中で精巣がねじれてしまい、精巣への血流が途絶えてしまう疾患で、対処しないと精巣の機能が廃絶してしまいます。超音波検査で血流の評価をすることができるので、 症状や身体診察から精巣捻転が否定できない場合には超音波検査を行います (参考文献 2) 。
急性精巣上体炎の治療
治療は主に原因微生物に応じた抗菌薬の投与です。性感染症が疑われる場合は、セフトリアキソンやドキシサイクリン、レボフロキサシンが使われることが多く、問診からの情報も併せて薬剤を選びます (参考文献 2) 。
抗菌薬治療開始から数日経過した後、最初の抗菌薬の効果判定し、尿培養の結果も併せて抗菌薬治療の内容を最適化していきます (参考文献 1) 。
抗菌薬治療の期間は2〜3週間が一般的です (参考文献 1) 。点滴で投与する抗菌薬もあるため何回か通院しなければなりませんが、根気強く治療してください。
抗菌薬治療にあわせて、対症療法として痛み止めや患部を冷やすことで症状を軽減することもあります (参考文献 2) 。
急性精巣上体炎になりやすい人・予防の方法
性感染症由来の精巣上体炎は、若年で性活動が活発な男性に多いです。特にコンドームを使用しない性交渉や、複数の性パートナーがいる場合はリスクが高いといえるでしょう。また、HIV感染者ではサイトメガロウイルスやトキソプラズマなど非典型病原体による精巣上体炎も報告されているほか、コンドームを用いない肛門性向では腸内細菌によって精巣上体炎が引き起こされる場合があります (参考文献 2) 。
先述の通り、尿道炎を先に発症している場合があり、起因菌も重なります。尿道炎の状態で治療することで精巣上体炎を予防することができるので、排尿症状は放置せずに泌尿器科を受診しましょう。
性交渉以外の原因としては泌尿器系疾患 (前立腺肥大症や神経因性膀胱など) に罹患している人や、尿道カテーテル挿入などの泌尿器科的な操作を直近でした人は急性精巣上体になるリスクが上がります (参考文献 2) 。この経路で感染する人は高齢者が多いです。
予防には性感染症予防の基本であるコンドームの使用が重要であるほか、日常的に尿道カテーテルを用いて排尿している場合には、カテーテルの衛生的な管理と清潔な操作を身に着けることが予防になります。性感染症の場合にはパートナーと一緒に治療しないと感染を繰り返すことになるため、パートナーと情報共有して同時に治療をしてください。
参考文献
- 1. JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015-尿路感染症・男性性器感染症-
- 2. Farooq A et al. Acute epididymitis in adolescents and adults. UpToDate. Jul 22, 2024




