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包茎
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

包茎の概要

包茎は、陰茎の包皮が亀頭を完全に覆い、勃起時にも露出しない状態を指します。包茎は医学的な問題を引き起こすことは通常少ないものの、治療が必要となる場合もあります。なお、包茎があること自体に問題があるわけではありませんが、何らかの症状が出てきた場合には注意が必要です。包茎には以下の3つの主要なタイプがあります。

1. 仮性包茎
勃起していない通常のときには包皮が亀頭を覆っているが、勃起時には亀頭が露出する状態です。特に医学的な問題は引き起こさないことが多いと言われています。

2. 真性包茎
包皮が亀頭に完全に密着しており、勃起時にも亀頭が露出しない状態です。これにより、清潔を保つのが難しくなり、感染やその他の問題が発生する可能性があります。

3. 嵌頓包茎
包皮が亀頭の後ろに引っかかり、戻らなくなった状態です。これにより血行が妨げられ、緊急の医療処置が必要となる場合があります

なお、包茎の場合、以下の理由で外観上の問題となる可能性があります。ただし、それが直ちに治療が必要である、と言う状況ではないため、医師に相談することが有用な場合があります。

1. 見た目の違和感
包茎により亀頭が常に包皮に覆われているため、ほかの男性と比較して見た目が異なることがあります。特に公共の入浴施設やスポーツ施設などで他人に裸が見られる状況で、違和感や恥ずかしさの原因となることがあります。
2. 見た目に対する自信の低下
見た目の違和感や包茎に対する社会的な偏見が原因で、自己肯定感や自信が低下することがあります。これは特に若年層において顕著で、性的自己認識や対人関係に影響を及ぼすことがあります。
3. 見た目によるいじめやからかい
特に思春期や青年期において、包茎が原因でからかわれたり、いじめの対象となったりすることがあります。これにより心理的なストレスが増加し、対人関係や学校生活に支障をきたすことがあります。
4. 美的感覚
個々人の美的感覚により、包茎の見た目が望ましくないと感じることがあります。特に性行為の際にパートナーから指摘されることがあると、性的自己認識にネガティブな影響を与えることがあります。
5. 衛生状態
包茎による見た目の問題に加えて、亀頭と包皮の間に垢や汚れが溜まりやすくなり、不衛生になりやすいです。悪臭や感染症のリスクを高めることがあります。

包茎の原因

包茎の原因には、以下のような要素が考えられます。

1. 生理的な原因

自然の発達過程
基本的に、男児は生まれつき包茎であり、成長と共に包皮が自然に後退していくことが通常です。多くの場合、思春期までに包皮が亀頭から自然に剥がれるようになります。

2. 先天的な原因

遺伝的要因
家族歴がある場合、包茎が発生しやすいことがあります。陰茎の大きさや包皮の厚さなどは、ちょうど背格好や体格が親に似ていることが多いのと同じで、ある程度の遺伝との相関性はあると考えられます。

3. 環境的な要因

不適切なケア
包皮を無理に引っ張ることや、衛生管理が不十分である場合、炎症や癒着が発生しやすくなります。

4. 感染症

反復する感染
陰茎や包皮内の感染(例えば、バラン感染症や亀頭包皮炎)が繰り返されると、包皮が線維化を起こして瘢痕化し、真性包茎に発展することがあります。

5. 外傷

包皮や亀頭の外傷により、瘢痕組織が形成され、包皮が後退しにくくなることがあります。

包茎の前兆や初期症状について

包茎そのものには明らかな症状のないものが多いのですが、前兆や初期症状として、以下のようなものが出ることがあります。

1.亀頭の露出困難
包皮が亀頭から完全に剥がれないことがあります。
2.包皮の狭窄
包皮が狭くなり、勃起時にも亀頭が露出しないことがあります。
3.炎症や感染
包皮内部の清潔が保たれないことで、尿が残りやすくなったり、尿などでかぶれたりして、炎症や感染症が発生しやすくなります。
4.排尿困難
包皮が狭い場合、尿の出が悪くなることがあります。
5.疼痛
勃起時や排尿時に痛みを感じることがあります。
6.包茎による性交痛
真性包茎や嵌頓包茎では、包皮が狭く伸びにくいため、性交中に無理に包皮が引っ張られると引き裂きや裂傷が発生することがあります。また嵌頓包茎では、包皮が亀頭の後ろで締め付けられ、血流が制限されることがあります。この状態は、亀頭が腫れ、痛みが増す原因となり、性交中に亀頭や包皮に強い痛みや圧迫感が生じます。なお、包皮によって亀頭が常に覆われていると、亀頭が大変敏感になりやすくなります。これは、性交中に過剰な刺激となり、痛みを引き起こすことがあり、早漏や遅漏の原因になることもあります。
7.包茎による性交困難
亀頭を覆ったままの状態が続くと、勃起時に包皮が後退できず、性交の困難を感じることがあります。勃起時に痛みを感じることもあり、性交を避けるようになることがあります。
8. 性行為への心理的影響
包茎により性交時の痛みや不快感を恐れるようになると、性行為に対する不安やストレスが増加します。これも勃起不全や性交困難に繋がることがあります。また、性的活動に消極的になります。

包茎の合併症

包茎は適切に管理されないと、いくつかの合併症を引き起こす可能性があります。

1. 亀頭包皮炎
包皮内の清潔が保たれないことで、細菌や真菌が繁殖し、炎症を引き起こします。症状には痛み、腫れ、発赤、分泌物の増加などがあります。
2. 尿路感染症
包皮が狭く、尿の流れが妨げられることで尿が残り、細菌が膀胱や尿道にも感染することがあります。排尿時の痛み、頻尿、尿の濁り、発熱などの症状があります。
3. 性行為障害
特に真性包茎の場合、性交時に痛みを感じることがあり、これが性行為の障害となることがあります。性交時の痛み、出血、性交不快感などが認められます。
4. 嵌頓包茎
包皮が亀頭の後ろに引っかかり、血行が妨げられる。亀頭の腫れや、痛みや血行障害による壊死のリスクもあります。

包茎の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、泌尿器科です。包茎は泌尿器の問題であり、泌尿器科で診断と治療が行われています。

包茎の検査・診断

包茎の診断は、主に身体診察によって行われます。具体的な手順は以下の通りです。

1. 視診と触診

医師が亀頭と包皮を視診および触診し、包皮の状態を評価します。亀頭が露出しにくい場合や包皮が狭窄している場合、さらに詳細な検査が行われます。

2. 病歴の確認

反復する感染症の有無や、排尿時の問題、勃起時の痛みなどについて患者さんの病歴を確認します。

3. 尿検査

感染症の疑いがある場合、尿検査を行い、感染の有無を確認します。

包茎の治療

包茎の治療は、包茎のタイプや症状の重篤度に応じて異なります。以下に代表的な治療法を紹介します。

1. 保存的治療

ステロイド軟膏

ステロイド軟膏を使用することで、包皮を柔らかくし、亀頭からの剥がれやすさを改善します。軟膏を包皮に塗布し、数週間から数ヶ月間使用します。

伸展療法

効果:包皮を徐々に伸展させることで、亀頭からの剥がれやすさを改善します。
方法:毎日数回、数分間包皮を引っ張ることで伸展を促します。

2. 手術療法

包皮切開術

包皮の一部を切開することで、亀頭の露出を容易にします。局所麻酔下で行われる、簡単な手術です。

包皮環状切除術(包茎手術)

包皮を完全に切除し、亀頭を常に露出させる状態にします。局所麻酔または全身麻酔下で行われる一般的な手術です。術後の回復には数週間を要します。

包茎になりやすい人・予防の方法

包茎になりやすい人には、特定のリスク要因があります。以下にそれらのリスク要因と予防方法を詳しく説明します。

リスク要因

1. 家族歴

遺伝的要因により、家族に包茎の既往歴がある場合、包茎になりやすい可能性があります。

2. 不適切な衛生管理

包皮内の清潔が保たれない場合、感染症や炎症が発生しやすく、包茎に繋がることがあります。

3. 反復する感染症

亀頭包皮炎などの感染症が繰り返されると、瘢痕組織が形成され、包茎のリスクが高まります。

予防方法

1. 適切な衛生管理

日常的に包皮を清潔に保つことが重要です。入浴時に包皮を優しく後退させ、亀頭と包皮の内側を洗浄すると良いです。

2. ステロイド軟膏の使用

軽度の包茎や早期の症状に対しては、医師の指示に従い、ステロイド軟膏を使用することが予防に役立ちます。

3. 無理な包皮の引っ張りを避ける

幼児期や小児期に無理に包皮を引っ張ることは避け、自然に剥がれるのを待つことが推奨されます。

4. 定期的な医師の診察

異常を感じた場合や、症状が改善しない場合は、早めに医師に相談し、適切な診断と治療を受けることが重要です。特に、嵌頓包茎の場合は緊急手術が必要なこともあります。

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