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村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

前立腺肥大の概要

前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia, BPH)は、前立腺の非癌性増殖により尿道を圧迫し、排尿困難や頻尿などの症状を引き起こす疾患です。
前立腺は男性特有の器官で、膀胱の下に位置し、尿道を囲んでいます。精液の一部を生成し、精子の運動性と生存能力を支える役割があります。
前立腺肥大は主に中高年男性に多く見られ、加齢とともにその発症率は増加します。

前立腺肥大の原因

前立腺肥大症の原因は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関与していると考えられています。主な要因には以下が含まれます

1.加齢

前立腺肥大は主に50歳以上の男性に見られます。加齢に伴い、前立腺の細胞が増殖しやすくなることが分かっています。

2.ホルモンの変化

特にテストステロンとエストロゲンのバランスの変化が前立腺肥大に寄与すると考えられています。テストステロンは男性ホルモンの一種であり、加齢に伴いその分泌量が減少し、一方でエストロゲンの相対的な量が増加します。このホルモンバランスの変化が前立腺細胞の増殖を促進する可能性があります。

3.遺伝的要因

家族に前立腺肥大症の既往がある場合、同様の症状を発症するリスクが高まることが示されています。遺伝的な要因が前立腺の細胞増殖に影響を与えると考えられています。

4.生活習慣

肥満、運動不足、不健康な食事などの生活習慣も前立腺肥大症のリスクを高める可能性があります。
特に高脂肪食やアルコールの過剰摂取がリスクを増大させることが指摘されています。

前立腺肥大の前兆や初期症状について

前立腺肥大症の初期症状は以下のような症状が現れます。

頻尿

日中または夜間の排尿回数が増加します。夜間頻尿は特に睡眠の質を低下させ、生活の質を損ないます。

尿意切迫感

突然の強い尿意を感じ、すぐに排尿しなければならない状態。これにより、日常生活に支障をきたすことがあります。

排尿困難

尿の流れが弱くなったり、途中で止まったりする。これにより、排尿時間が長くなることがあります。

残尿感

排尿後にも尿が残っている感じがする。これにより、頻繁にトイレに行く必要が生じます。

尿漏れ

排尿困難がさらに悪化し残尿が多くなると、膀胱からあふれるように尿が漏れてしまうこと(溢流性尿失禁)があります。
前立腺肥大症の前兆や初期症状が見られた場合に受診すべき診療科は、泌尿器科です。前立腺肥大症は尿路の問題を引き起こすため、泌尿器科で診断と治療が行われています。

前立腺肥大の検査・診断

上記の症状が見られる場合、検査を行います。主な検査方法は以下の通りです。

尿検査

尿路感染症やほかの異常も調べるために採尿を行います。尿路感染症は前立腺肥大と類似の症状を引き起こすため、鑑別が必要です。

超音波検査

前立腺のサイズや残尿量を評価するために腹部や直腸から超音波検査を行います。

尿流測定

尿の流量や排尿時の圧力を測定し、排尿機能を客観的に評価します。

スコアリング

IPSSスコアなどを用いて生活への影響や重症度を測ります。

血液検査

前立腺特異抗原(PSA)の値を調べ、前立腺癌の可能性を評価します。PSAが高い場合、経過をフォローするなどより詳しい検査を追加する場合があります。

直腸指診(DRE)

直腸に指を入れて、前立腺の大きさや硬さなどを触診します。これは前立腺の異常を直接確認するための基本的な方法です。

前立腺肥大の治療

前立腺肥大症の治療は、症状の重症度や患者さんの健康状態に応じて異なります。主な治療法には以下が含まれます。

薬物療法

アルファブロッカー
尿道や膀胱頚部の筋肉をリラックスさせ、尿の流れを改善します。タムスロシンやシロドシンなどが一般的に使用されます。
5α還元酵素阻害薬
前立腺のサイズを縮小させる効果があります。デュタステリドなどが使用されます。

ホスホジエステラーゼ5阻害薬
前立腺や膀胱などの平滑筋を弛緩させる作用で排尿障害の改善にも効果があります。タダラフィルが使用されています。

手術療法

内視鏡手術
経尿道的前立腺切除術(TURP)という尿道を通じて前立腺の一部を切除する手術で、最も一般的な手術方法です。ほかにもレーザーを用いて前立腺組織を切除する前立腺蒸散術(PVP)など、多くの方法が存在します。
尿道ステント
前立腺の中を通る尿道にステントを挿入して尿の流れを維持します。

その他の治療

生活習慣の改善
規則正しい運動、健康的な食事、アルコールやカフェインの摂取制限が推奨されます。

定期的な経過観察
症状が軽度である場合、定期的な医師の診察と経過観察が行われます。

前立腺肥大になりやすい人・予防の方法

前立腺肥大症のリスクを高める要因には以下が含まれます。

年齢

50歳以上の男性に多く見られます。

家族歴

家族に前立腺肥大症や前立腺癌の既往がある場合。

生活習慣

肥満、不健康な食事、運動不足など。
予防のためには以下のような生活習慣の改善が効果的です。

規則正しい運動

適度な運動を定期的に行うことで、全身の健康を維持し、前立腺肥大のリスクを低減します。

健康的な食事

バランスの取れた食事、特に野菜や果物、全粒穀物、低脂肪のタンパク質を摂取することが推奨されます。

適切な体重管理

肥満は前立腺肥大症のリスクを高めるため、適切な体重を維持することが重要です。
アルコールとカフェインの制限:これらの物質は膀胱を刺激し、症状を悪化させる可能性があります。

この記事の監修医師