

監修医師:
林 良典(医師)
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名古屋市立大学卒業。東京医療センター総合内科、西伊豆健育会病院内科、東京高輪病院感染症内科、順天堂大学総合診療科、 NTT東日本関東病院予防医学センター・総合診療科を経て現職。医学博士。公認心理師。日本専門医機構総合診療特任指導医、日本内科学会総合内科専門医、日本老年医学会老年科専門医、日本認知症学会認知症専門医・指導医、禁煙サポーター。
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
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目次 -INDEX-
心臓粘液腫の概要
心臓粘液腫は、心臓の中にできる良性腫瘍の一種です。 すべての心臓に発生する腫瘍のなかで最も多くみられるタイプで、原発性心臓腫瘍の多くを占めます。腫瘍の見た目は粘液(ゼリー)状の組織が豊富に含まれており、赤茶色をしたやわらかいかたまりです。名前の粘液腫は、このゼリー状の粘液質な外観に由来します。心臓の中で成長していくため、大きくなると心臓内の血液の流れを妨げたり、腫瘍の一部が剥がれて身体の別の場所で血管を詰まらせたりする可能性があります。 患者さんの男女比では女性に多く、男性の2~3倍ほど発症しやすいことが報告されています。心臓腫瘍は全体としてまれな病気で、ある報告では剖検の記録中で心臓腫瘍が見つかるのは0.1%以下という極めて低い頻度でした。しかし、心臓内部で血液の通り道を邪魔することで心不全や不整脈を引き起こしたり、腫瘍片が飛んで塞栓症を引き起こすリスクがあります。そのため、心臓粘液腫と診断された場合は基本的に手術で取り除く必要がある重要な疾患です。心臓粘液腫の原因
心臓粘液腫がなぜ発生するかは明らかになっていません。一般的には遺伝的な要因や生活習慣との関連は知られておらず、ほとんどが偶発的に生じると考えられています。このような生活をしているとなりやすいといった明確なリスク因子は特定されていません。 ただし、全体のごく一部(文献によって約5~10%)の患者さんでは家族内発生がみられます。これは遺伝性の心臓粘液腫が起こる場合で、カーニー症候群と呼ばれるまれな遺伝性疾患の一部として発症するものです。カーニー症候群では皮膚の色素斑や内分泌異常などさまざまな症状とともに全身の複数の臓器に良性腫瘍が発生し、心臓では若い年代で複数の粘液腫ができることがあります。 このような遺伝性の場合を除けば、心臓粘液腫の明確な原因を日常生活のなかで予防することは難しいのが現状です。心臓粘液腫の前兆や初期症状について
心臓粘液腫の症状は、腫瘍の大きさやできた場所によってさまざまですが、大きく分けて次のようなものがあります。心腔閉塞症状
粘液腫が心臓内部で弁をふさぐことで起こる症状です。特に、左心房にできた粘液腫では、僧帽弁という弁の開口部に腫瘍が挟まり、血液が流れにくくなります。その結果、息切れ(呼吸困難)やめまい、立ちくらみ・失神などの症状が現れます。 特徴的なのは体位(姿勢)によって症状の強さが変わることです。立っていると重力で腫瘍が弁に引き込まれやすくなるため症状が悪化し、横になると腫瘍が弁口部から離れて血流が確保されるため症状が和らぐことがあります。粘液腫がさらに大きくなると、弁を完全に塞いでしまい一時的に心臓から血液が送り出せなくなることもあり、この場合は重度の低血圧や失神発作、場合によっては突然死につながる危険もあります。 右心房にできた粘液腫では三尖弁をふさぐことがあり、下肢のむくみや腹水、肝腫大など、右心不全に近い症状が出る場合もあります。塞栓症状
心臓内の粘液腫から腫瘍の一部や血栓が剥がれて血流に乗り、離れた場所の血管を詰まらせることで起こる症状です。塞栓が起こる場所によって症状は異なります。例えば、脳の動脈が塞がれれば脳梗塞となり、突然の片麻痺や言語障害など脳卒中の症状が現れます。また、右心房の粘液腫から塞栓が生じた場合には肺の動脈が詰まり、肺塞栓症による胸の痛みや咳、血痰が起こることもあります。その他、塞栓が腎臓や手足の動脈で起こればその臓器の機能障害や激しい痛みの原因となりえます。 塞栓症は心臓粘液腫の代表的な合併症であり、このような突然の神経症状や足の痛み・しびれ、血痰を伴う呼吸困難などが発症のきっかけとなる場合もあります。全身症状
粘液腫では、腫瘍から炎症を引き起こす物質(サイトカイン)が放出される影響で、発熱、全身の倦怠感(だるさ)、食欲不振、体重減少、関節痛、貧血などの全身的な症状が現れることがあります。風邪のような症状や原因不明の長引く微熱として現れることもあり、一見すると心臓とは関係ないような症状のこともあります。 心臓粘液腫の症状は多彩ですが、初期には無症状である場合も少なくありません。しかし、これらの症状が出現した場合、早めに循環器内科を受診するようにしましょう。小さな粘液腫で血流障害や塞栓を起こしていなければ、ほかの検査で見つかるまで気付かれないこともあります。粘液腫が大きくなる前に対応をしておくことで、重篤な状態になることを防ぐことが期待できます。心臓粘液腫の検査・診断
心臓粘液腫の診断には主に画像検査が用いられます。特に有用なのは心エコー検査(超音波検査)です。心エコー検査では、胸にプローブという器具を当てて心臓を超音波で描写します。粘液腫がある場合、心臓内部に揺れ動く腫瘤として直接描き出すことができ、大きさ・形や付着している部位、腫瘍の動き方など詳細な情報が得られます。場合によっては、経食道心エコー検査を行い、さらに精密な観察をすることもあります。 心エコー検査以外にも、必要に応じて胸部X線、心電図、胸部CT検査、心臓MRI検査などが行われます。胸部CTやMRIでは心臓の断面像を撮影し、腫瘍の位置や周囲組織への広がりを評価します。MRIでは腫瘍内部の組織の特徴を映し出すことができ、粘液腫かほかの腫瘍かの鑑別に役立つ場合もあります。心エコーで腫瘍が確認されれば診断はほぼ確実ですが、まれに血栓と紛らわしい場合などは、手術で摘出して病理検査をして初めて確定診断となることもあります。心臓粘液腫の治療
心臓粘液腫の治療法は、基本的に手術による腫瘍の切除です。良性の腫瘍ではありますが、前述のように放置すれば重篤な合併症を招くおそれがあるため、診断がつき次第できるだけ早期に手術で取り除くことが推奨されます。 手術は通常、全身麻酔下で胸骨正中切開を行い、人工心肺装置を使って心臓を一時的に止めた状態で腫瘍を切除します。心臓粘液腫は手術で完全に摘出すれば根治が期待できます。また、手術を行うことで心臓粘液腫による塞栓症や突然死のリスクを減らすことができます。手術後は、定期的に心エコー検査などで経過観察を行います。通常、再発はまれであり、多くの患者さんでは一度の手術で治癒します。ただし、家族性の粘液腫(カーニー症候群など)の場合は新たな腫瘍が将来再び発生する可能性があるため、長期にわたって経過観察が必要です。心臓粘液腫になりやすい人・予防の方法
心臓粘液腫になりやすい方として知られているのは、上述した中年以降の女性です。一方、遺伝性の心臓粘液腫では若い年代で発症することがあります。家族に若くして心臓粘液腫を発症した方がいる場合、そのご家族は注意が必要です。このような方には遺伝カウンセリングや若い頃からの定期的な心エコー検査などが推奨される場合があります。 心臓粘液腫の予防についてですが、現時点で効果的な予防法は確立されていません。多くの心臓粘液腫は生活習慣や環境因子との明確な関連がなく、発症を完全に防ぐ方法がありません。ただし、日頃から定期健診を受け、心電図や胸部X線などで異常を指摘された場合に放置しないことは重要です。例えば、心雑音を指摘されたが症状がないからと放置していると、粘液腫が見逃される可能性があります。また、息切れや不明熱、塞栓症状などが続く場合には早めに医療機関を受診することが早期発見につながります。早期に発見し適切に対処すれば、心臓粘液腫は治癒が見込める疾患です。関連する病気
- 心臓腫瘍
- 心臓弁膜症
参考文献
- https://www.jcc.gr.jp/journal/backnumber/bk_jcold/pdf/284-7.pdf
- https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000240
- https://my.clevelandclinic.org/health/diseases/23241-myxoma
- https://www.google.com/url?q=https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26070596
- https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2672241/
- https://medlineplus.gov/ency/article/007273.htm




