

監修医師:
佐藤 浩樹(医師)
目次 -INDEX-
純型肺動脈閉鎖症の概要
純型肺動脈閉鎖症は、生まれつき肺動脈が閉鎖しており、心臓から肺へ血液を送ることができない先天性心疾患です。肺への血流が途絶えるため、酸素を取り込めず、重度のチアノーゼ(皮膚や唇が青紫色になる症状)を引き起こします。
この病気には大きく2つのタイプがあります。1つは心室中隔欠損症を伴うもの、もう1つが心室中隔欠損症を伴わないタイプ(純型)です。純型肺動脈閉鎖症は、出生数8,000〜10,000人に1人の割合で発症します。新生児心疾患の1〜3%で、生後1週間以内に発症する心疾患ではおよそ10%を占めています。その他の心疾患や心臓以外の疾患を合併する症例は少ないのが特徴です。
純型肺動脈閉鎖症の場合、右心室から肺動脈への血流がありません。生命維持のためには、動脈管(肺動脈と大動脈をつなぐ血管)や卵円孔(右心房と左心房をつなぐ小さな穴)などを通じて、血液が肺に送られるルートの確保が必要です。そのため、生後すぐに医療介入が必要となります。
純型肺動脈閉鎖症の原因
純型肺動脈閉鎖症の原因は明らかになっていません。遺伝要因や環境要因など多因子が関与しているとされています。一親等の家族内での再発率はおよそ2%とされています。
純型肺動脈閉鎖症の前兆や初期症状について
純型肺動脈閉鎖症の前兆や初期症状として、皮膚や唇が青紫色になるチアノーゼを認めます。出生数時間後からチアノーゼがみられ、時間の経過とともに悪化していくのが特徴です。生後に動脈管が自然に閉鎖し、酸素を得るための肺血流が減少するためです。
このような症状がみられた場合は、速やかに地域の基幹病院や総合病院の小児科・循環器内科・心臓血管外科の受診が必要です。専門病院や大学病院への紹介受診が必要になることもあります。
出生直後の新生児でチアノーゼが見られる場合には、救急搬送が必要になるケースも考えられます。
純型肺動脈閉鎖症の検査・診断
診断には心臓の構造を詳しく調べる検査が必要です。具体的には以下の検査が行われます。
- 視診・聴診
- 胸部X線検査
- 心電図検査
- 心臓超音波検査(心エコー)
- 心臓カテーテル検査
それぞれについて、詳しくみていきましょう。
視診・聴診
新生児の心臓や呼吸の状態、チアノーゼの程度などを確認します。心雑音が聞こえることもあります。
胸部X線検査
心臓の大きさや形、血流の状態を確認するために行われます。純型肺動脈閉鎖症では、肺動脈が細くなり、左胸側の血管の影(第2弓)が窪んで見えるのが特徴です。心奇形を併発している場合には、心臓全体が大きく写ることもあります。
心電図検査
心臓の電気的な活動を波形として記録する検査です。純型肺動脈閉鎖症では、左心室に負担がかかっている兆しが読み取れる場合があります。
心臓超音波検査(心エコー)
心エコーは、超音波で心臓の中の構造や血流を確認する検査です。純型肺動脈閉鎖症の場合、心臓の全体像としては左心室がやや大きく、右心室は小さくなっています。肺動脈は細く、閉鎖している状態が確認できます。
心臓カテーテル・造影検査
太ももや腕の血管から細い管(カテーテル)を心臓まで通し、造影剤を注入してX線撮影を行います。これにより、心臓の中の構造や血流の状態、圧力などをより詳しく調べられます。
純型肺動脈閉鎖症の場合、右心室は小さく、肺に向かう弁が閉じているのが特徴です。また、右心室の圧力が左心室より高くなることが多く、心臓にかかる負担を把握する手がかりになります。
この検査では、肺動脈が代わりに通じている別のルート(類洞交通)があるかどうかも調べられます。類洞交通とは、心臓に栄養を送る冠動脈と右心室が交通している状態です。純型肺動脈閉鎖症では、およそ20%の症例において類洞交通がみられます。
また心臓カテーテル・造影検査により、冠動脈の異常の有無を調べることが可能です。類洞交通を伴うケースでは、冠動脈の狭窄や途絶により治療が難しくなることが予想されます。さらに、右心室と右心房の間にある三尖弁の機能も確認でき、治療方針の判断に役立ちます。
純型肺動脈閉鎖症の治療
純型肺動脈閉鎖症の治療は、状態に応じて内科的治療と外科的治療を組み合わせて行います。
内科的治療
内科的治療として、主に以下の2つが行われます。
- プロスタグランジンE1の投与
- 心房中隔裂開術(BAS)
プロスタグランジンE1の投与
生後すぐに肺への血流を維持するためには、動脈管を開いた状態に保つ必要があります。本来、動脈管は生まれた後に自然と閉じてしまうものですが、それを防ぐために使われる薬がプロスタグランジンE1です。点滴で持続的に投与することで、肺への血流を確保し、全身へ酸素を届けます。
点滴を続けるだけでは効果が不十分な場合には、次に紹介する心房中隔裂開術(BAS)を行います。
心房中隔裂開術(BAS)
左右の心房の間にある心房中隔という壁に小さな穴があいていると、穴を通じて血液の流れを調整できます。しかし穴が小さすぎると血流が妨げられ、身体に酸素が十分届きません。
その場合に行われるのが、心房中隔裂開術(BAS)というカテーテル治療です。風船(バルーン)を使って心房中隔の穴を広げ、血液の流れを改善します。この治療による成功率は50〜100%とさまざまです。
心房中隔裂開術(BAS)は、右心室や三尖弁(右心房と右心室の間にある弁)の大きさが十分でないと行えません。大きさが不十分な場合、外科的治療が選択されます。
外科的治療
内科的なカテーテル治療が選択できない場合、外科手術を行います。手術方法は、右心室や三尖弁の大きさや状態によって異なります。
代表的な手術方法は、以下の4つです。
- 右室流出路拡大術
- 体動脈肺動脈短絡術(BTシャント術)
- グレン手術
- フォンタン手術(TCPC)
右心室・三尖弁の大きさが十分ある場合は、右室流出路拡大術が選択されます。
右心室・三尖弁の大きさが十分でない場合に選択されるのがフォンタン手術です。フォンタン手術に向けた段階的な手術として、体動脈肺動脈短絡術(BTシャント術)やグレン手術が行われます。
それぞれの手術について、一つひとつみていきましょう。
右室流出路拡大術
肥厚した筋肉によって狭まった右心室の出口を広げる手術です。右室流出路拡大術により、右心室から肺動脈へと血流を促します。
体動脈肺動脈短絡術(BTシャント術)
体動脈肺動脈短絡術は、肺への血流が少ない場合や肺動脈が細い場合に行われる一時的な手術です。
上半身に向かう動脈と肺動脈の間を人工血管でつなぎ、肺に血液を送る経路をつくります。
酸素濃度が低い場合や肺動脈の形を整える必要がある場合には、人工心肺を使用します。
グレン手術
上半身からの静脈血が集まる上大静脈と肺動脈をつなげる手術です。多くの場合、人工心肺を用いて行われ、手術後の酸素飽和度は約80%を見込めます。
手術を行う月齢は、一般的に生後3〜6ヶ月です。手術前には、心臓カテーテル検査にて、肺動脈の形や圧を確認します。
フォンタン手術(TCPC)
フォンタン手術(TCPC)は、全身から心臓に戻る静脈の血液を、肺の血管に直接つなぐ手術です。上半身と下半身からの静脈血を、直接肺に流すことで、酸素を多く含む血液が全身に届くようにします。
体動脈肺動脈短絡術(BTシャント術)やグレン手術などの手術の後、1歳以降に行われるのが一般的です。
フォンタン手術によりチアノーゼが改善し、酸素飽和度はほぼ正常になります。
純型肺動脈閉鎖症になりやすい人・予防の方法
純型肺動脈閉鎖症は先天性疾患であり、なりやすい方の特徴は明らかになっていません。また、純型肺動脈閉鎖症を予防する方法も現時点ではわかっていません。
遺伝的な要因は定かではないものの、遺伝要因も関与している可能性があります。家族に先天性心疾患のある方は、妊娠前に遺伝カウンセリングを受けることも一つの手段です。
関連する病気
- 肺動脈閉鎖症
- 先天性心疾患
- 右心不全
参考文献




