監修医師:
小鷹 悠二(おだかクリニック)
心臓神経症の概要
心臓神経症は、実際には心臓の異常がないにもかかわらず、胸の痛みや動悸、息切れ、呼吸困難、めまいなど、心臓病に似た症状が現れる状態です。
心臓神経症は、「パニック障害」「不安神経症」「過呼吸症候群」という別の精神疾患の診断がつくこともあります。
たとえば、心臓病かもしれないと強く心配することで、実際に心臓病に似た症状を感じることがあります。
ストレスや不安が高まると、交感神経が刺激されて心臓の働きが活発になり心拍数が増えたり血圧が上がったりして、動悸が激しくなることがあり、なかには、発作を起こして救急車で運ばれる人もいます。
心臓神経症の症状は心臓病と非常に似ているため、内科や循環器科を受診するケースが多いですが、胸部X線検査や心電図などの一般的な心臓の検査では異常が見つからないことが特徴です。
心臓神経症の原因
心臓神経症のはっきりとした原因はわかっていません。
一般的には、ストレスや過労、極度の不安などが原因で引き起こされると考えられています。
強いストレスや不安を感じた場合、交感神経が活性化され、心拍数が増加し、血圧が上昇し、呼吸が速くなるなどの反応が起こります。
心臓神経症の前兆や初期症状について
心臓神経症は、特定の場所や時間に関係なく、突然心臓がドキドキしたり、胸が痛くなったり、息が苦しくなったり、めまいがしたりする症状が現れます。
また、強い恐怖感に襲われ、「このまま死んでしまうのではないか」と感じることもあります。
これらの発作が繰り返し起こるのが心臓神経症の特徴です。
発作を経験すると、その苦しさや恐怖から「また発作が起きたらどうしよう」と心配することがよくあります。このような心配を「予期不安」と呼びます。
不安を感じること自体は病気ではありませんが、不安が強すぎると、日常生活に支障をきたし仕事や勉強ができなくなることがあります。
心臓神経症の検査・診断
胸部には肺や心臓、骨、神経、筋肉、そして一部の消化器官があり、痛みの原因は多岐にわたります。
痛みの原因を特定するために、まずは詳細な問診と身体診察を行う必要があります。
具体的には、胸部レントゲンや心電図、血液検査などの検査を実施します。
これらの検査で異常が見つからない場合は、さらに詳しい検査として胸腹部のCTや腹部エコーを行うこともあります。
心臓病に似た症状があるにも関わらず、これらの検査が全て正常だった場合に、心臓神経症と診断されます。
心臓神経症の治療
一通りの検査をおこない、検査結果が問題なければ、安心して症状が落ち着くこともあります。
ただし、症状が改善しない場合は、心療内科の診察を受けることが必要です。
症状を和らげるためには、不安や緊張を減らさないといけません。
その場合、認知行動療法などの治療法が用いられます。
また、症状が強い場合には、精神安定剤や抗不安薬が処方されることもあります。
認知行動療法
不安を感じるとき、多くの人はその不安を強めるような考え方や行動をしてしまいます。
たとえば、「胸痛はどんどん悪化する」「この胸痛はずっと続く」「このまま死ぬかもしれない」といった考えが自動的に浮かび、不安を感じる状況を避けようとします。
認知行動療法は、不安を悪化させる考え方や行動を少しずつ修正し、不安をコントロールできる自信を取り戻すための治療法です。
薬物療法と同等かそれ以上の効果があることが知られており、不安症のタイプに応じてさまざまな方法が用いられます。
薬物療法
薬物療法で使われる主な薬には、抗うつ薬と抗不安薬があります。
抗うつ薬はうつ病の治療に使われますが、不安にも効果があるため心臓神経症などの不安障害にも使われます。
セロトニン再取り込み阻害薬が第一選択薬です。
効果が現れるまでには時間がかかることが多いですが、継続することで不安の軽減が期待できます。
副作用としては、飲み始めの1週間以内に吐き気や下痢などの胃腸症状が出ることがありますが、多くの場合時間とともに改善します。
まれに不安やイライラが強くなり、怒りっぽくなることもあるため、専門家の慎重な管理が必要です。
抗うつ薬の効果が出るまでには2〜4週間かかるため、その間は抗不安薬を併用することが一般的です。
抗不安薬は即効性がありますが、長期間使用すると依存のリスクがあります。
不安を避けるために抗不安薬を常用すると、薬に頼りすぎることになりかねません。
副作用として日中にぼんやりしたり、眠気や倦怠感を感じることがあります。
抗不安薬を使用する際には、認知行動療法などの心理的なサポートを併用し、薬に対する依存を防ぐことが大切です。
また、抗不安薬を長期間使用すると、薬の効果が弱くなる耐性が生じることがあります。
そのため、抗不安薬はなるべく短期間の使用が推奨されます。
心臓神経症になりやすい人・予防の方法
神経質な方やストレスを貯めこみやすい方は注意が必要です。
心臓神経症は心の健康とも深く関わっているため、心身のバランスを保つことが重要です。
規則正しい生活を心掛けて、体を動かしリラックスする時間をつくってください。
また、呼吸法は不安を軽減するのに効果的です。
まず、呼吸筋をリラックスさせるためにストレッチを行いましょう。
その後、ゆっくりと息を吐く練習をすることで、心の落ち着きを取り戻せます。
息を吐くときにお腹をへこませ、息を吸うときにお腹を膨らませるように意識すると、深い呼吸がしやすくなります。
カフェインやアルコールの摂取量には注意が必要です。
過剰摂取は不安感を悪化させることがあります。
まずは、少しずつ量を減らしてみると良いでしょう。
関連する病気
- パニック障害
- 不安神経症
- 過呼吸症候群
参考文献