真菌性髄膜炎
勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

真菌性髄膜炎の概要

真菌性髄膜炎は、真菌(カビの一種)によって引き起こされる髄膜炎です。

髄膜は脳や脊髄の表面に存在し、これらを保護する膜です。外側から「硬膜」「くも膜」「軟膜」の3層で構成されており、脳とくも膜の間には栄養豊富な「脳脊髄液」という液体が貯留しています。

髄膜に細菌やウイルスなどが感染した状態を髄膜炎といいます。真菌性髄膜炎は、免疫力の低下や汚染された医療器具の使用などで真菌が体内に侵入し、髄膜まで広がった状態を指します。

原因となる真菌には「クリプトコッカス」や「カンジダ」「アスペルギルス」「ムーコル」「黒色真菌」などがあり、そのなかでもクリプトコッカスによるものが最も多く見られます。

真菌性髄膜炎は、真菌の種類によっても症状が異なることがありますが、発症すると頭痛や発熱、吐き気などの症状に加え、水頭症や脳内の腫瘤が発生することもあります。また、急激に症状が進行して発症から数日で死亡するケースもあります。

治療では、原因となる真菌に有効な抗真菌薬を用いた薬物療法がおこなわれます。

真菌性髄膜炎の原因

真菌性髄膜炎は、真菌が髄膜に感染することで発症します。本来、髄膜は無菌状態ですが、何らかの原因によって体内に真菌が侵入した際、中枢神経まで広がって髄膜炎を引き起こすことがあります。

真菌性髄膜炎は、健康な人にも発症することがあります。しかし、HIV感染症やがんに罹患している場合、副腎皮質ステロイド薬を使用している場合には、免疫力が低下することで真菌などの病原体に特に感染しやすくなります。

原因となる真菌には、クリプトコッカスやカンジダ、ムーコル、アスペルギルス、黒色真菌などが挙げられます。このうち、真菌性髄膜炎ではクリプトコッカスによるものが最も多く認められています。

クリプトコッカスはハトなどの鳥類の糞や、土壌、樹木などに生息する真菌です。鳥類の糞や土壌に含まれるクリプトコッカスを吸い込んだり、皮膚から体内に侵入したりすると、多くは肺に感染して炎症を起こします。さらに、皮膚や肺に侵入したクリプトコッカスが全身に広がって中枢神経まで及ぶと、髄膜炎を発症することがあります。

また、カンジダは消化管や皮膚などに存在する常在菌の一種ですが、免疫力の低下を機に増殖して髄膜に広がることがあります。長期間入院して療養生活を送る人に発症することが多いです。

ムーコルやアスペルギルスも自然界に広く存在する真菌であり、免疫力が低下することで感染しやすくなります。

黒色真菌は国内外の土壌や植物などに生息していることがあり、農業や園芸などの作用時に皮膚の傷から侵入して感染することがあります。

このほか、真菌性髄膜炎は、自然発生のほか医療処置が原因で引き起こされるケースもあります。

真菌性髄膜炎の前兆や初期症状について

原因となる真菌に感染しても、初期には無症状で経過し気付かないケースがあります。
しかし、肺や皮膚から侵入した真菌が髄膜まで及ぶと症状が現れます。発熱や頭痛、吐き気、嘔吐のほか、頸部硬直(首の後ろ側が硬くなる症状)、意識障害、性格の変化などを認めることがあります。

また、ムーコル症に感染することは比較的まれですが重症度が高く、顔の感覚鈍麻や鼻出血、けいれん、麻痺などを呈し、数日で死に至るケースもあります。

真菌性髄膜炎の検査・診断

真菌性髄膜炎の検査では、頭部CT検査や髄液検査がおこなわれます。

真菌性髄膜炎では、頭蓋内に大量の髄液が貯留する「水頭症」を併発することがあります。頭部CT検査は、水頭症や脳のむくみ、腫瘤の有無などを確認するためにおこなわれます。

一方、髄液検査では、背骨の間に針を刺して髄液を採取し、リンパ球の数や原因となる真菌への抗体の有無などを確認します。

背骨の位置から髄液が上手く採れないケースや、重症の場合には、脳室から直接髄液を採取して再度検査をおこなうこともあります。

真菌性髄膜炎の治療

真菌性髄膜炎の治療では、原因となる真菌に有効な抗真菌薬を用いた薬物療法がおこなわれます。

選択される薬剤としては「アムホテシリンB」と呼ばれる薬剤の使用頻度が高く、ほかに「フルコナゾール」「イタコナゾール」などが用いられることもあります。

薬物療法と併用して外科的に髄膜を洗浄する処置がおこなわれることもあります。

真菌性髄膜炎になりやすい人・予防の方法

真菌性髄膜炎の原因となる真菌は世界中に存在しています。免疫力が低下する疾患に罹患している人だけでなく、健康な人でも発症するケースがあるため注意が必要です。

真菌性髄膜炎を予防するには、免疫力の維持に努め、真菌への感染対策を講じることが重要です。免疫力を維持するには、バランスの取れた食生活や適度な運動、十分な睡眠を心がけるようにしましょう。

既にHIV感染症やがんなどに罹患している場合や、副腎皮質ステロイド薬で治療中の人などは、日常生活での注意点や感染対策について主治医の指示に従いましょう。

発症頻度の高いクリプトコッカスに対しては、現在のところ予防するためのワクチンはありません。クリプトコッカスは、鳩の糞や土壌などに含まれています。クリプトコッカスに感染することのないよう、屋外で土ぼこりにさらされる場合には、防塵マスクなどを使用すると良いでしょう。また、免疫力が低下している場合には、土ぼこりや鳥の糞に近寄らないようにしましょう。


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