監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
ドラベ症候群の概要
ドラベ症候群は主に乳幼児に見られるけいれん発作を繰り返す病気です。
大半がSCN1Aというナトリウムチャネル遺伝子の異常によって起こり、多くの場合、1歳未満に最初のけいれん発作が起き、その後さまざまなタイプのけいれん発作を繰り返します。
けいれん発作は発熱や入浴、予防接種などで起こるケースが多いですが、突然現れることもあります。
1回の発作は長く続くことが特徴で、てんかん重積に移行し、突然死につながるケースもあります。
ドラベ症候群の国内の発症例は約3,000人です。
けいれん発作は学童期移行に減っていきますが、成人後も見られることがあります。
抗てんかん薬で十分に症状がコントロールできないこともあり、次第に自閉や多動、不注意などの発達の遅れが見られます。
手先の不器用さや、不安定な歩行なども見られるようになり、社会生活に影響を及ぼし、成人後も自立した生活が難しくなります。
(出典:厚生労働省 140 ドラベ症候群)
ドラベ症候群は乳幼児の熱性けいれんと異なり、高熱がない状態でも発作が出現します。
初発時期も熱性けいれんと比べて早いケースが多かったり、頻繁に発作を繰り返したりすることも特徴です。
特に初発時期は画像検査や脳波の検査をしても異常が発見されないことも多いため、診断には臨床症状の見極めや遺伝子検査が不可欠になります。
ドラベ症候群の原因
ドラベ症候群の8割はSCN1A遺伝子の異常によって起こり、2割は原因不明です。
まれに両親の遺伝によって発症するケースがあります。
けいれん発作は発熱や入浴、予防接種による体温の上昇が引き金となって起こることが多いです。
寝不足や疲れ、光の刺激、明暗差、感染症などで発症することもあります。
ドラベ症候群の前兆や初期症状について
ドラベ症候群の初期症状の多くは、1歳未満に現れる片側もしくは両側のけいれん発作です。
けいれん発作が5分以上続いててんかん重積に移行した場合は、命の危険にさらされます。
1歳以降は一瞬力が抜ける脱力発作、数秒間話しかけてもぼんやりする欠神発作、覚醒時に手足や顔をピクッと収縮させるミオクロニー発作などが現れることがあります。
ドラベ症候群の検査・診断
ドラベ症候群の診断では発作時の状態を確認した後、MRI検査や脳波の検査、遺伝子検査の結果から総合的に判断されます。
以下の検査以外にも、運動面や精神面の発達の遅れを確かめるために、運動発達の検査や高次機能検査をおこなうことがあります。
MRI検査
MRI検査は強力な磁場と電波を使用して、脳の断面を撮影する検査です。
初発時期では異常が認められないケースがほとんどですが、1歳以降に大脳や海馬の萎縮が認められることがあります。
脳波の検査
脳波の検査は頭部に電極を装着して脳の電気信号を測定し、てんかん特有の所見がないか調べる検査です。
初発時期では明らかな異常が見られないことが多いですが、1歳以降に背景活動の徐波化や広汎性多棘徐波、多焦点性棘波などの特徴的な所見が増加し、成長とともに減っていきます。
遺伝子検査
血液検査での変異が認められた場合は、ドラベ症候群が起きている可能性が高くなります。
しかし、SCN1A遺伝子の変異は他のてんかん症候群でも見られることがあるため、必ずしもドラベ症候群につながるわけではありません。
ドラベ症候群の治療
ドラベ症候群の主な治療は、発作出現時に投与する薬物療法です。
同居している家族は実際の場面で迅速に投与できるように、事前に慣れておく必要があります。
けいれん発作のリスクを抑えるために、普段の食事にてんかん食を取り入れることもあります。
抗てんかん発作薬の投与
けいれん発作が起きたときは、バルプロ酸やクロバザム、臭化カリウム、スチリペントール、トピラマートなどの抗てんかん発作薬を2〜3種類組み合わせて投与します。
けいれん発作のなかには薬剤に抵抗性を示すものが多いため、効果があるものを選択します。
てんかん食の摂取
医師の指示のもと、ケトン食や低糖質・高脂質食の修正アトキンス食などのてんかん食を摂取することがあります。
糖質ではなくケトン体を脳のエネルギーとして使用することで、けいれん発作が減少することがわかっています。
てんかん重積発作の治療
てんかん重積発作の治療にはジアゼパムやミダゾラムなどの薬剤を注射で投与します。
けいれん発作が自宅などで5分以上続いた場合は、てんかん重積発作の可能性を考慮し、その場でミダゾラム溶液を頬の粘膜から投与することもあります。
ドラベ症候群になりやすい人・予防の方法
ドラベ症候群になりやすい人の特徴はわかっていません。
けいれん発作が繰り返し起こる場合は、入浴時の湯温を下げたり、夏の外出時に保冷剤を身に着けたりするなど、体温上昇をできるだけ防ぎましょう。
感染症が起こった場合はジアゼパム座薬を投与することで、けいれん発作が抑えられることもあります。
光の点滅などがきっかけでけいれん発作が起こる場合は、テレビの光や特定の図形などが目に入らないようにしてください。
けいれん発作が起こったら、周りの人が安全な場所に横にさせて、服のボタンを外して呼吸しやすいようにしましょう。
食べ物や嘔吐物が口腔内にある場合は顔を横に向け、発作が起きている時間を測りながら症状の経過を観察してください。
意識が回復せず同じ発作を繰り返す場合や、けいれん発作が5分以上続く場合は、てんかん重積発作に移行している可能性があるため、救急車を呼びましょう。
関連する病気
- てんかん重積発作
- 自閉症
- アスペルガー症候群
- 学習障害
- 注意欠陥多動性障害
参考文献