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症候性てんかん
中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

症候性てんかんの概要

てんかんとは、脳の神経細胞の異常な電気活動によってくり返し発作が起こる病気です。てんかんのうち、脳に何らかの障害や傷があることが原因となって起こるものを「症候性てんかん」と呼びます。

症候性てんかんは後天的に発症するものが多く、全年齢層で発症する可能性があります。最近では、高齢者の症候性てんかんが増加しています。

てんかん発作の症状は脳のどの部位から電気信号が発生するかで異なるため、さまざまな症状がみられることが特徴です。症状の持続時間は数秒から数分間と短時間ですが、数時間にわたり発作が持続する「てんかん重責状態」が起こることもあります。

治療法は薬物療法、外科治療、食事療法の3つが挙げられます。
腫瘍などが原因の症候性てんかんの場合、外科治療により症状の改善が期待できます。ただし、外科治療が適応にならないケースでは、抗てんかん薬を使用し、てんかん発作の発生頻度を下げ、最終的には発作をゼロにすることが治療の目標となります。

てんかん患者の60~70%は抗てんかん薬を内服することで発作は止まることがわかっています。発作は通常数秒から数分間でおさまり、発作が起こっていない時間は普通の社会生活を送ることが可能です。てんかんの既往があるからといって、過剰に活動が制限されないよう周囲の理解を得ることも重要です。

子どものころは発達や就学、大人になると就労や車の運転、女性では妊娠や出産など、ライフステージに応じて継続的なサポートが必要となります。

発作が止まらない難治性のてんかんに対しては、繰り返す発作による脳機能障害や心理的・社会面の障害に対するサポートも重要となり、福祉制度を利用することも求められます。

症候性てんかん

症候性てんかんの原因

症候性てんかんは、脳に何らかの障害や傷があることが原因で生じます。全ての年齢層で発症する可能性がありますが、特に子どもと高齢者に発症することが多いです。

生まれつきのもの

脳の構造異常や代謝異常、遺伝子の異常が挙げられます。また生まれた時の仮死状態や低酸素が原因となる場合もあります。

子ども~高齢者におこるもの

頭部外傷や中枢神経感染症、脳卒中、自己免疫性脳炎、認知症などの脳疾患があります。

症候性てんかんの前兆や初期症状について

症候性てんかんの発作症状は、脳のどの部位から異常な電気信号が発生しているかによって異なります。脳の一部からおこる「部分発作」と脳全体が一気に興奮する「全般発作」の2つに分類されます。

ほとんどの場合、発作の持続時間は数秒から数分ですが、数時間以上続く「てんかん重積状態」が出現する場合もあります。

部分発作(焦点発作)

部分発作では、患者が発作を覚えている場合と覚えていない場合があります。

  • 運動発作
    意識がもうろうとしたり、手足を大きくばたつかせたりするなど、大きな動きが特徴の発作です。前頭葉から過剰な電気信号が始まる「前頭葉てんかん」でみられます。
  • 非運動発作
    けいれんなどのぱっと見ただけでわかるような動きがない発作のことを指します。
    動作が止まる、呼びかけに反応しない、一点を見つめているなどの症状が現れます。発作前後の記憶が飛んでいることが多いです。
    過剰な電気信号の始まりが側頭葉にある「側頭葉てんかん」で多くみられます。

全般発作

  • 強直間代発作
    大発作とよばれる全身のけいれん発作です。
    意識がなくなり、手足がけいれんした後に全身ががくがくするけいれんに移行します。
  • 欠神発作
    突然反応がなくなり数秒間ぼーっと宙を見つめる発作です。
    発作中は目がうつろになることが多いですが、転倒したりけいれんしたりすることもないので、周囲から気づかれづらいです。発作後は何事もなかったかのように、それまでの作業を再開します。

症候性てんかんの検査・診断

症候性てんかんの診断は、症状がてんかんによるものなのか、または違う疾患による症状ではないかを見極めます。

診断のためには、発作時の自覚症状や家族からみた発作の様子をくわしく確認することが重要です。発作が起きた際にスマートフォンで動画を撮影し、診察時に主治医に見せることも診断に役立ちます。
問診以外では脳波やMRIをおこないます。脳全体をくわしく調べ、脳のどの部位にどんな原因があるかを診断します。

血液検査・尿検査

てんかん発作は中枢神経の感染症によっても起こることがあるため、それらを除外するために血液検査と尿検査をおこないます。

脳波

脳波は頭皮に電極を着けて脳の電気信号を記録する検査です。
過剰な電気信号がでているかどうか、どこからどのようにでているかを調べます。診断だけでなくてんかんの発作型も判定できます。

MRI

脳のMRIによって脳の異常を細かく観察することができるため、異常な電気的興奮がどこから発生しているかを調べることが可能です。

症候性てんかんの治療

症候性てんかんの治療は、薬物療法、外科治療、食事療法の3つがあります。

てんかん発作で突然意識がなくなったり、自分の意思に反して体が動いてしまったりすることは、日常生活の質の低下につながります。また事故にあう危険性が高まったり、就学や就職、運転などに対してハンディキャップとなることもあります。

てんかんの治療はてんかんの発作をおこさないこと、できる限り発作の回数を減らし、最終的には発作をゼロにすることが目標となります。

薬物療法

薬物療法では、抗てんかん薬を用います。脳の電気的な興奮を抑えたり、電気信号が周りの神経に広がらないようにすることで、発作を抑えます。
適切な服薬管理で、発作の消失や発生頻度を減らすことができます。

外科治療

内服治療の効果がみられない場合は、外科手術が検討されます。外科手術はすべてのてんかんに対して適応となるわけではなく、切除しても障害が残らないと判断される場合のみ手術が可能です。
病気を完全に治すことを目的とした根治手術と発作の程度や頻度を改善する緩和手術があります。

食事療法

抗てんかん薬の内服でも発作を抑えられない、治りづらいてんかんの場合に検討されます。てんかんの食事療法には、ケトン食療法が挙げられます。てんかん発作が減る効果があるとされています。

症候性てんかんになりやすい人・予防の方法

症候性てんかんはさまざまな年代で発症する可能性があり、近年では高齢者での発症が多く報告されています。
脳になんらかの異常がある方は、症候性てんかんになりやすいです。

抗てんかん薬を飲んでいても、日常生活が乱れるとてんかん発作が再発することがあります。以下に注意して生活しましょう。

服薬を継続する

薬を飲み忘れると発作が起きやすくなります。薬を内服し忘れたときの対応について、主治医へ確認しておくことをおすすめします。また、発作が収まっていても自己中断せずに飲み続けましょう。

規則正しい生活をおくる

不規則な生活は発作を起こしやすくします。昼夜逆転を避け、毎日決まった時間に眠りましょう。また十分な睡眠時間をとるようにしましょう。

疲労やストレスをためない

身体的・精神的ストレスがあると、発作が現れることがあります。過労や睡眠不足を避け、ストレスをためないようにしましょう。ゆっくりお風呂に入る、趣味を楽しむ時間をつくるなど、1日の中でリラックスする時間を確保しましょう。

アルコールは飲み過ぎない

アルコールを飲みすぎた後、酔いが醒めるときに発作が再発することがあります。アルコールは適量を守りましょう。

発作を記録する

どんなときに発作が起こったのか、メモを残しておくようにしましょう。何時に発作がおきたか、何をしていたときにおきたか、疲労がたまっていなかったか、寝不足ではなかったか、薬の飲み忘れはなかったか、どんな症状だったかなど、わかる範囲で記録しておくことをおすすめします。診察時に持参すると治療にも役立つでしょう。


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