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勝木 将人

監修医師
勝木 将人(医師)

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2016年東北大学卒業 / 現在は諏訪日赤に脳外科医、頭痛外来で勤務。 / 専門は頭痛、データサイエンス、AI.

脳動脈瘤の概要

脳動脈瘤とは、脳の血管にできた瘤状の変化をいいます。人口の3%の人間が脳動脈瘤を保有しているともいわれており、決して珍しい病気ではありません。脳動脈瘤はさらに負荷がかかることで破裂する可能性があります。破れていない脳動脈瘤は未破裂脳動脈瘤、破裂したものを破裂脳動脈瘤と呼びます。
脳動脈瘤があるだけで破裂していない未破裂脳動脈瘤の状態では、無症状で日常生活に支障がないことも特徴です。脳動脈瘤が身体に大きな影響を及ぼすのは、破裂した場合です。脳動脈瘤が破裂した場合をくも膜下出血といいます。半身不随や認知症といった後遺症が残るほか、寝たきりになる可能性や亡くなる危険もあるとても危険な疾患です。
厚生労働省の人口動態調査からも、脳血管疾患による死亡は日本人の40代以上の年代別死因で常に上位4位以内に入っており、見過ごしてしまうことは危険といえるでしょう。なお、UCAS Japanという日本人を対象とした大規模研究によると、未破裂脳動脈瘤の平均破裂率は年間0.95%となっています。未破裂脳動脈瘤のなかでも破裂する危険性が高いとされるものについては治療が必要です。

脳動脈瘤の原因

主に脳の血管が枝分かれしている部分に血流の負荷がかかることで、血管の壁が弱くなり形成される風船状の変化をいいます。 血流に負荷をかける主な要因は高血圧と考えられています。

血圧とは、血液が血管を流れる際に内側にかかる圧力のことです。圧力が高くなると血管の壁に負担がかかるため、負荷のかかる部分では血管の壁が弱くなってしまいます。

弱くなった血管の壁にさらに高い圧力の血液が絶えず流れ続けることで、風船のように瘤が形成されていくといった流れで脳動脈瘤が発生します。

脳動脈瘤は未破裂状態では無症状であることがほとんどで、さらに脳動脈瘤と診断するためには検査が必要です。

そのため日常生活のなかで手軽に計測できる血圧で数値に異常が見られる場合には、早めに医療機関を受診するなど症状の改善に努めることが大切といえるでしょう。

脳動脈瘤の前兆や初期症状について

脳動脈瘤は未破裂状態では無症状であることがほとんどです。そのため前兆や初期症状で疾患に気付くことはあまりありません。脳ドックなどで偶然に発見されるケースが一般的です。

ただし一部の患者さんでは物が二重に見えたり、頭痛やめまいといった症状が現れることがあります。これらの症状はほかの疾患と区別することが難しい症状ですが、気になる症状が現れた場合にははやめに病院を受診することをおすすめします。

脳動脈瘤については脳神経外科の受診が適切です。また脳ドックの取り扱いのある医療機関で受診すると、適正な精密検査を受けられる可能性が高く今後の予防にもつながるでしょう。

なお脳動脈瘤が破裂したことにより出血した場合には、激しい頭痛や吐き気、嘔吐、意識障害などをきたします。とても重篤な状態となるため、救急外来で迅速な治療を受ける必要があります。

脳動脈瘤の検査・診断

脳動脈瘤の検査にはMRIやCT/CTA、脳血管造影を用いることが一般的です。脳動脈瘤は大きさや形状、部位などによって破裂の危険性の高さが変わることが知られています。

治療した方がよい脳動脈瘤かどうかは、検査結果をもとに部位の状況を見て判断します。

また脳動脈瘤そのものの診断とは異なりますが、治療の必要性を判断するうえでは、関連する腎疾患や高血圧症などの生活習慣病についての検査も行う必要があるといえるでしょう。総合的に判断して治療を必要とする脳動脈瘤であるかを含めた治療方針を決めていきます。

すべての患者さんに対して手術や治療を勧めるわけではありません。具体的には脳動脈瘤の大きさが5〜7mmの場合には治療を勧められるケースがあるといえます。

また5mm未満でも過去の病歴や脳動脈瘤の形状、脳動脈瘤のできている部位といった条件から治療を勧めることがあります。7mmを超える大きな脳動脈瘤をもつ患者さんに対しては、破裂の可能性の観点だけで考えれば積極的な治療が必要です。

ただし治療の安全性の観点からは必ずしも適切とはいえず、主治医と相談して治療方針を決めていく必要があるといえるでしょう。

脳動脈瘤の治療

破裂の危険性が高い未破裂脳動脈瘤に対しては破裂予防手術を行います。脳動脈瘤の治療には大きく分けてクリッピング手術と血管内治療があります。

どのような治療方法をとるかは患者さんの状況によってさまざまです。一般的には、まずは手術における患者さんへのダメージをより少なくできる可能性のある血管内治療を、優先するケースが少なくないといえるでしょう。

ただし脳動脈瘤の発生している場所が脳のどのあたりにあるかという部位の問題や、どの程度の大きさの脳動脈瘤かといった状況によって必要とされる治療法が異なります。さまざまなリスクを総合的に判断して、必要な治療法を検討します。

また先進的な治療のなかには、開頭手術、血管内治療の両方を組み合わせた治療も行うケースも出てきているため、主治医の先生とよく相談して治療方針を決めていくことが大切です。

また破裂の危険性が低い場合には、破裂の危険性が高まったと判断される場合に破裂予防手術へつなげるため、経過観察となるケースも考えられるでしょう。この場合には定期的な検査と、原因として考えられる高血圧などの治療を継続することが大切です。

ここでは主な破裂予防手術として考えられるクリッピング手術と血管内治療について解説します。

クリッピング手術

クリッピング術とは、脳動脈瘤の根元にあたる部分を金属のクリップで挟み、脳動脈瘤内への血流を止める方法です。脳動脈瘤に直接処置を行うことから、開頭手術が必要となります。血流を止めることで完治する可能性が高い点がメリットといえるでしょう。特に小さな脳動脈瘤の場合には有効な治療法になりやすいとされています。

血管内治療

血管内治療とは、脳動脈瘤内にカテーテルを通してやわらかく細いコイルを挿入するコイル塞栓術という方法をとります。クリッピング術と異なり、開頭手術を必要としないため傷口という観点では身体的な負担が少ないとされやすいでしょう。また開頭手術を伴わないことは、治療や術後の回復に必要な期間が短い点もメリットとして挙げられます。ほかに血流の流れを変化させることで、脳動脈瘤を血栓化させるフローダイバーター治療といった方法をとるケースもあります。クリッピング術と比較して歴史の浅い治療法ではあるため、医療機関によって治療法が異なる可能性があるでしょう。

脳動脈瘤になりやすい人・予防の方法

脳動脈瘤をはじめとする脳血管障害には高血圧、喫煙、飲酒といった生活習慣が大きく関わっているとされています。

高血圧の要因はさまざまですが、食塩のとりすぎなどの食生活面での乱れや、睡眠と休養の不足といった習慣が関連しているといえるでしょう。肥満やメタボリックシンドロームも影響を及ぼしていると考えられます。

喫煙や飲酒を避けるとともに、野菜や果物・大豆製品といった食品を積極的に摂取することでも一定の効果があります。ウォーキングなどの軽い有酸素運動で血流をよくすることも大切です。

基本的な生活習慣の見直しが高血圧の改善や脳血管疾患の予防につながるといえるでしょう。また医療機関のなかには生活習慣病外来を受け入れている施設も少なくありません。

高血圧やメタボリックシンドロームと診断された場合には、脳動脈瘤の形成や破裂といった重大疾病につながる前に、早めに治療を進めることで予防につながるといえるでしょう。


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