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構音障害
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

構音障害の概要

構音障害は、言葉を発する際に音声を正しく発音できなくなる状態を指します。構音とは、口や舌、喉の筋肉を使って音を形成し、言葉を作り出す過程のことです。この機能が何らかの原因で障害されると、発音が不明瞭になり、他者に話している内容を理解してもらいにくくなることがあります。
構音障害は、発音そのものがうまくいかないために生じる障害であり、言語能力や知能には影響を与えません。つまり、話している内容自体は正しいのですが、物理的な発音の問題が生じているため、言葉が正しく伝わりにくくなる状態です。
この障害は幼児期の他、脳卒中や頭部外傷、神経疾患などが原因で成人に起こります。構音障害は、原因や症状の程度に応じて異なり、軽度のものから重度のものまで幅広く存在します。

構音障害の原因

構音障害は、さまざまな要因によって引き起こされます。
主な原因としては、脳や神経の障害、筋肉や構音器官の問題、発達遅延や外傷などが挙げられます。

脳や神経の障害

構音障害の原因の中でも、脳や神経系の障害は非常に重要です。
特に、脳卒中や頭部外傷などにより、脳の言語中枢や運動神経が損傷を受けると、発声や発音に必要な筋肉を適切に制御できなくなるため、構音障害が発生します。

  • 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
    脳の血流が阻害されると、言語を司る部分や運動機能を制御する部分がダメージを受け、構音障害が引き起こされることがあります。
  • 頭部外傷
    交通事故や転倒などで頭を強く打つと、脳に損傷が生じ、言葉を発する能力に影響を及ぼすことがあります。
  • 神経変性疾患
    パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など、神経の変性が進行する病気により、構音機能が徐々に低下することがあります。

筋肉や構音器官の問題

発音には、舌、唇、喉、声帯などの筋肉が連携して動くことが重要です。これらの筋肉がうまく動かない場合、音が正しく形成されず、構音障害が生じます。

  • 顔面神経麻痺
    顔の筋肉を動かす神経が麻痺すると、唇や舌がうまく動かなくなり、発音が不明瞭になります。
  • 口腔構造の異常
    口蓋裂(口の中の天井部分にある裂け目)などの先天性異常は、発音に影響を及ぼします。
  • 筋ジストロフィー
    筋肉が徐々に弱くなる疾患で、構音機能にも影響が出ることがあります。

発達遅延

子供が発達する過程で、構音器官の発達が遅れることがあります。
これは、言葉の学習に関わる問題や、口や舌の運動能力の未熟さが影響している場合があります。
幼児期に見られる発音の遅れや音の置き換えは、時間とともに自然に改善されることが多いですが、長期間改善が見られない場合には、専門的な治療が必要です。

構音障害の前兆や初期症状について

構音障害は、主に発音の不明瞭さとして現れますが、その他にもいくつかの前兆や初期症状があります。これらの症状を早期に認識し、適切な対処を行うことで、症状の進行を遅らせたり、改善を図ることが可能です。

発音の不明瞭さ

構音障害の最も顕著な症状は、言葉を発する際の発音の不明瞭さです。言葉の一部が聞き取りにくくなったり、特定の音を正しく発音できなくなることがあります。たとえば、「さ行」の音や「ら行」の音を正確に発音できないことが典型的です。

話すスピードの変化

構音障害がある場合、話すスピードが異常に速くなったり遅くなったりすることがあります。筋肉がうまく動かないために、言葉を発するペースが乱れることが原因です。

声のトーンや音量の変化

構音障害が進行すると、声のトーンや音量にも変化が現れます。特に、声が低くなったり、言葉の強弱がはっきりしないことがあります。また、声がかすれたり、小さな声しか出せなくなることもあります。

話す際の息切れ

呼吸と発音が連携して行われるため、呼吸がうまく調整できない場合、話している途中で息切れを感じることがあります。これは、発音に使う筋肉がうまく働かないことで生じます。

言葉のつまずき

言葉を発しようとしても、うまく言葉が出てこなかったり、つっかえたりすることがあります。これは、口や舌の動きがスムーズに行われないためです。

構音障害の検査・診断

構音障害が疑われる場合、適切な診断を行い、原因を特定することが重要です。医師や言語聴覚士による診察や検査が行われ、発音に関わる器官や神経の機能を評価します。

問診と視診

まず、医師や言語聴覚士は、患者の言葉の状態や話す際の状況について詳しく聞き取ります。症状がいつから現れたのか、どのような状況で悪化するのか、家族歴や既往歴なども確認されます。また、発音を直接観察し、どの音や単語に問題があるのかを確認します。

発音検査

言語聴覚士は、さまざまな音や言葉を発音してもらい、どの音が不明瞭であるか、発音のパターンを評価します。また、単語や文章を声に出して読んでもらうことで、発音の正確さやスムーズさを確認します。

口腔・咽頭の機能評価

発音には、口や舌、声帯などの構音器官が関与しているため、これらの機能が正常に働いているかを評価します。特に、口腔内や喉の筋肉が正常に動いているか、麻痺や硬直がないかを確認することが重要です。

神経学的検査

脳卒中や神経変性疾患が原因である場合、神経学的な検査が行われます。CTやMRIを用いて、脳の状態を確認し、構音に関わる神経や脳の部分に異常がないかを調べます。また、筋電図検査などで筋肉の動きを評価することもあります。

構音障害の治療

構音障害の治療は、原因や症状の重さによって異なります。治療の目的は、発音の改善とコミュニケーション能力の向上を図ることです。治療には、言語療法、薬物療法、手術などが含まれます。

言語療法

言語療法は、構音障害の治療において最も重要なアプローチです。言語聴覚士による専門的な指導を通じて、正しい発音方法や口の筋肉を効果的に使う方法を学びます。

  • 発音の訓練
    発音の問題がある音や単語に焦点を当てて、繰り返し練習を行います。口や舌の動きを細かく調整し、正確な音を出す練習を行います。
  • 呼吸法の指導
    呼吸が発音に影響している場合、正しい呼吸法を学び、息を調整しながら言葉を発する訓練を行います。
  • コミュニケーションの強化
    話すスピードを調整したり、言葉をはっきり発音する方法を学び、日常生活でのコミュニケーション能力を高めます。

薬物療法

神経疾患や筋肉の問題が原因で構音障害が生じている場合、薬物療法が行われることがあります。たとえば、パーキンソン病やALSなどの神経変性疾患には、病気の進行を遅らせる薬が使用されることがあります。

手術

構音器官や脳に重篤な障害がある場合、外科的な処置が必要となることがあります。特に、先天性の口蓋裂や声帯の問題が原因で構音障害が生じている場合、手術での修復が行われることがあります。

補助的なコミュニケーション手段

構音障害が重度で、言葉によるコミュニケーションが難しい場合、補助的なコミュニケーション手段が利用されることがあります。これには、タブレットや文字盤、ジェスチャーなどを使ったコミュニケーション方法が含まれます。

構音障害になりやすい人・予防の方法

構音障害になりやすい人

  • 脳卒中や神経疾患の既往がある人
    脳卒中やパーキンソン病、ALSなどの神経疾患を持つ人は、構音障害を発症するリスクが高まります。
  • 先天性異常がある人
    口蓋裂などの先天性の異常がある場合、発音に問題が生じやすくなります。
  • 高齢者
    加齢に伴い、筋力の低下や神経機能の衰えが進行するため、構音障害が現れやすくなります。

予防の方法

構音障害を完全に予防することは難しい場合もありますが、いくつかの対策を講じることで、発症リスクを低減することができます。

  • 脳卒中の予防
    脳卒中は構音障害の主な原因の一つです。高血圧や糖尿病の管理、禁煙、バランスの取れた食事、定期的な運動を行うことで、脳卒中のリスクを減らすことができます。
  • 口腔ケア
    歯や歯茎、口腔内の健康を保つことで、口腔構造の問題による発音障害を防ぐことができます。
  • 早期発見と治療
    発音に異常を感じた場合は、早めに医師や言語聴覚士に相談することが大切です。


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