

監修医師:
大坂 貴史(医師)
十二指腸憩室の概要
十二指腸憩室とは、十二指腸(胃のすぐ先にある腸)の壁の一部が外にふくらみ、袋のようになった状態のことです。憩室は大腸にもよく生じますが、十二指腸では大腸の次によく見られます。高齢の人ほど多くなり、1〜30%の人が十二指腸憩室を持っているとも言われています。症状はないことが殆どですが、炎症を起こしたり出血したりすることがあります。その場合、強い腹痛や吐き気、発熱などの症状が現れます。十二指腸憩室があっても症状がない限りは治療しませんが、炎症が起きている場合は抗菌薬や腸の減圧などを行います。出血が起きている場合は内視鏡を用いて止血を行うことが多いです。腸に穴が開くなど重症な場合は手術療法が行われることもあります。
十二指腸憩室の原因
十二指腸憩室には先天性のものと後天性のものがありますが、ほとんどの十二指腸憩室は年をとってからできる後天性です。
腸の壁の一部には、血管や胆管、膵管などが通るために生まれつき弱い部分があります。腸の動きによる圧力がかかったり、加齢で壁を支える力が弱くなったりして、粘膜が外に押し出されることで憩室が生じます。十二指腸の中でも特に胆管(胆汁や膵液などの消化液が分泌される場所)が開口している場所の近くは構造的に弱く、憩室ができやすい場所です。
十二指腸憩室の前兆や初期症状について
多くの場合、まったく症状はありません。一生のうちに症状が出る人は約10%で、その中で治療が必要になるのはさらに少なく、1%程度です。
ただし、袋の中に食べかすがたまって炎症を起こすと憩室炎になり、腹痛や発熱、下痢が生じます。また、炎症や腸の動きによって袋の中の血管が切れると血が出ます。腸の動きや、たまった食べかすによる炎症が原因になります。
重症化すると憩室に穴が開くこともあり、穿孔と言います。十二指腸憩室の穿孔はとても珍しく、これまでに約100例しか報告されていません。もし起きた場合は急に強い腹痛を感じます。腹膜まで炎症が及んでいる場合は、お腹を押して離すとさらに強い痛みを生じることもあります。
そして、胆管の開口部近くでは、胆汁や膵液の通り道がふさがれて炎症が起きることもあります。その結果、胆管炎や膵炎を合併し、腹痛や吐き気、発熱などの症状が出る場合もあります。
十二指腸憩室の検査・診断
十二指腸憩室の診断のためにはまず内視鏡検査が行われます。内視鏡検査は胃カメラとも呼ばれています。口もしくは鼻から柔らかい管を入れて、食道や胃・十二指腸の内側をカメラで確認する検査です。検査を行う際にはのどの麻酔を使って苦痛を減らして行います。十二指腸憩室をカメラで直接観察することができます。また、胆石を除くために内視鏡検査(ERCP:内視鏡的逆行性胆道膵管造影)は行われることがあり、この際に十二指腸憩室が偶然見つかることもあります。
十二指腸の奥の方にある憩室は内視鏡で見づらいため、CTやバリウム検査(消化管造影)が使われます。バリウム検査は、バリウムという白い液体の造影剤を飲んで、胃や食道、十二指腸の形や動きをレントゲンで調べる検査です。バリウムはレントゲンに写りやすいため、十二指腸から飛び出した憩室の形を確認することができます。検査では、バリウムを飲んだ後に体の向きを変えたり台を傾けたりしながら撮影し、いろいろな角度から確認します。内視鏡のように直接観察はできませんが、体への負担が少なく短時間で広い範囲を調べられるのが特徴です。
これらの検査で十二指腸憩室の形が確認されれば診断されます。
十二指腸憩室の治療
症状がない場合は治療を行う必要はありません。憩室炎を起こした場合は抗菌薬で治療し、出血がある場合は内視鏡で止血します。止血法は高張ナトリウムエピネフリンという薬を注射する、熱で焼く、クリップで止めるなどの方法があります。それでも血が止まらない場合は、血管を詰めるカテーテル治療や手術療法を行います。
また、もし穿孔をきたした場合、多くは手術で憩室を切除します。軽症の場合は抗菌薬や腸の減圧、絶食を行うことで治ることもあります。
胆管炎や膵炎を合併した場合は絶食や憩室の中身を取り除く治療が行われます。それでも効果が不十分な時は内視鏡で乳頭を切開する治療やステントと呼ばれる管を入れて胆汁や膵液の流れをよくする治療が行われることもあります。
十二指腸憩室になりやすい人・予防の方法
十二指腸憩室は、調査によっては人口の1〜30%で見つかります。年をとるほどできやすく、数や大きさも増える傾向があります。また、内視鏡検査や内視鏡的な治療を行った人では30%ほどで発見されるという報告もあります。
予防する方法ははっきり分かっていませんが、十二指腸憩室を持つ人は食物繊維を多く含む野菜や果物、穀物を食べるよう意識すると良いと言われています。また、便秘を避けるために、水をたくさん飲んだり、定期的に運動したりすることも良いかもしれません。
そして、十二指腸憩室を持つ人は以下のような状況になったら早めに医療機関を受診しましょう。
- 38度以上の熱がある、または寒気を感じて震える場合
- 腹痛がだんだん強くなった場合
- 吐いたものがコーヒー色をしていた場合
- 便が赤かったり黒かったりした場合
- 便の硬さが急に変わった場合
参考文献
- 矢崎義雄 et al.「内科學第11版」(朝倉書店、2017年)1010ページ
- 南学正臣 et al.「内科学書1 改訂第9版」(中山書店、2019年)118-120ページ
- UpToDate. “Patient education: Diverticulosis (The Basics)” (最終更新日2025年8月16日、最終閲覧日2025年8月16日)




