

監修医師:
大坂 貴史(医師)
プロフィールをもっと見る
京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。
目次 -INDEX-
ロタウイルス下痢症の概要
ロタウイルス下痢症はロタウイルスに感染して起こる疾患です。ロタウイルスは主に乳幼児期に多い疾患で、5歳になるまでにほぼ全てのお子さんが感染するとされています (参考文献 1, 2) 。入院が必要になる場合も多く、5歳までにロタウイルス関連の胃腸炎で入院する人の割合は15~43人に1人、その中の多くは2歳以下という報告があります (参考文献 1) 。 症状として発熱、吐き気・嘔吐の後に下痢が現れ、通常1~2週間で症状は軽快しますが、一部では重度の脱水で入院が必要になったり、中枢神経系の後遺症が残る方もいます (参考文献 1) 。 ロタウイルスに感染した際の特別な治療はなく、下痢や嘔吐で身体の外へ出ていった水分を補うためにしっかりと水分を口から補給することや、経口摂取が難しい人は点滴で水分補給をしてもらうといった支持療法が中心になります (参考文献 1) 。 非常に感染力が強いウイルスなので、適切な対策をしても感染自体を完全に防ぐことは難しいですが、2回目以降の感染では症状が比較的軽いという特徴を利用して、ワクチン接種による重症化予防ができます (参考文献 1) 。ロタウイルス下痢症の原因
ロタウイルス下痢症はその名の通り「ロタウイルス」というウイルスに感染して起こる病気です。ロタウイルスの主な感染経路は人と人の間で起こり、便から排出されるウイルスが口から入って感染する糞口感染という形で伝染します (参考文献 1) 。ロタウイルスの感染力は非常に強く、ほんのわずかな数のウイルスの粒子でも感染するとされており、ロタウイルスに感染している子供に接触した成人のうち 30~50% が感染するとされています (参考文献 1) 。感染者の便を触った手を十分に洗わず食事すると感染するということはイメージしやすいかと思いますが、汚染された水や食べ物を触った手を介して感染が成立する可能性も指摘されています (参考文献 1) 。ロタウイルス下痢症の前兆や初期症状について
2日程度の潜伏期間の後に発熱・吐き気・嘔吐の症状で発症し、1~2日経つと下痢が現れるというのが一般的な発症様式です (参考文献 1) 。 1~2週間の経過で回復することが多いですが、ロタウイルス感染症の脱水は、他の原因による胃腸炎に比べて重症度が高くなることが多く、次のような合併症につながることがあり、場合によっては死に至ります (参考文献 1) 。- 重度の脱水によるショック
- 腎不全
- ロタウイルス脳炎・脳症といった中枢神経の病気:難治性のけいれんが特徴で約4割に後遺症が残ります




