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軟便
大坂 貴史

監修医師
大坂 貴史(医師)

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京都府立医科大学卒業。京都府立医科大学大学院医学研究科修了。現在は綾部市立病院 内分泌・糖尿病内科部長、京都府立医科大学大学院医学研究科 内分泌・糖尿病・代謝内科学講座 客員講師を務める。医学博士。日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

軟便の概要

軟便とは、通常よりも水分が多く、形状が崩れた柔らかい便を指します。便が硬くなく、どちらかというと泥状やクリーム状であり、排便時に力を入れずに出ることが多いのが特徴です。軟便そのものは一時的なものであり、特に健康上の問題を示すことはない場合もありますが、頻繁に続く場合やその他の症状を伴う場合には、何らかの健康問題のサインである可能性があります。
軟便の頻度や形状は個人差があり、生活習慣、食事、ストレス、病気などのさまざまな要因によって影響を受けます。一般的に、軟便は消化器官の不調や食事の変化などが原因で起こることが多く、一時的なものであれば特に治療を必要としないことがほとんどです。しかし、軟便が慢性化する場合や、腹痛、下痢、血便などの症状を伴う場合には、消化器疾患や腸のトラブルが原因である可能性もあり、医師の診察を受ける必要があります。

軟便の原因

軟便の原因は非常に多岐にわたります。以下は、主な原因として挙げられるものです。

食事内容の変化

食物繊維や水分を多く含む食べ物を摂取すると、便が柔らかくなり、軟便が生じることがあります。特に、果物や野菜、全粒穀物、豆類などを多く食べると、腸内の水分量が増え、便が柔らかくなる傾向があります。

2. ストレスや不安

精神的なストレスや不安が消化器系に影響を与え、腸の運動が過剰になったり、腸の水分吸収が乱れることがあります。これにより、便が軟らかくなりやすくなります。いわゆる「緊張するとお腹がゆるくなる」といった経験は、ストレスが腸に影響を与えている一例です。

3. 食物不耐症

乳糖不耐症グルテン不耐症のように、特定の食品を消化できない場合、腸内で水分が保持され、軟便や下痢が引き起こされることがあります。例えば、乳製品に含まれる乳糖を消化できない乳糖不耐症の人は、牛乳やヨーグルトを摂取すると、軟便が生じることがあります。

4. 消化器疾患

過敏性腸症候群(IBS)潰瘍性大腸炎クローン病などの腸の疾患は、軟便や下痢を引き起こすことがあります。これらの疾患は、腸の炎症や過敏反応が原因で、腸の正常な水分吸収や排便機能が障害されるためです。

5. 薬の副作用

一部の薬剤は、軟便を引き起こす副作用を持っています。例えば、抗生物質や一部の消炎薬、利尿薬などは腸内の細菌バランスや水分調整に影響を与えるため、便が柔らかくなることがあります。また、カフェインやアルコールなども原因になります。

6. ウイルスや細菌感染

胃腸炎食中毒など、ウイルスや細菌に感染すると、急に軟便や下痢が生じることがあります。これらは、感染によって腸内環境が乱れ、正常な消化や水分吸収が妨げられるためです。

軟便の前兆や初期症状について

軟便自体が問題でないことが多いものの、頻繁に軟便が続いたり、他の症状を伴う場合は注意が必要です。軟便が続く前に現れる前兆や初期症状として、以下のようなものがあります。

1. お腹の張りや違和感

軟便が出る前には、腸内でガスが溜まりやすくなり、お腹が張る感じや、違和感を覚えることがあります。これは、腸内の消化過程が通常よりも速く進み、水分の吸収が不十分なためです。

2. 急な便意

軟便が出る前に、急に強い便意を感じることがよくあります。腸の動きが活発になり、便が腸を通過するスピードが速くなるため、排便を我慢できなくなることが多いです。

3. お腹のゴロゴロ音

腸内でガスが発生し、腸が活発に動いている場合、ゴロゴロと音がすることがあります。これは、腸が過剰に動いているサインであり、軟便が出る前兆の一つです。

4. 軽い腹痛

軽い腹痛を伴う場合もあります。腸が過剰に動いているために起こる痛みであり、食後に発生することが多いです。この腹痛は、一時的で、便を出すと軽減することが一般的です。

軟便の検査・診断

軟便が一時的なものであれば特に検査を必要としないことがほとんどですが、症状が慢性的に続いたり、他の重篤な症状が見られる場合には、医師による検査や診断が必要となります。以下に、主な検査方法を紹介します。

1. 問診

医師はまず、患者の症状や病歴、食事内容、ストレス状況、薬の服用歴などを詳しく聞き取ります。これにより、軟便の原因を特定するための手がかりを得ます。

2. 便検査

便のサンプルを採取して、便中にウイルスや細菌、寄生虫が存在するかどうかを調べることがあります。特に、感染症が疑われる場合には、便検査が有効です。また、便に血液が含まれていないかどうかを調べることで、腸の出血や炎症の有無も確認できます。

3. 血液検査

血液検査では、感染症炎症のマーカー栄養状態を確認することができます。特に、慢性的な軟便や体重減少を伴う場合には、血液検査が必要となることがあります。

4. 内視鏡検査

軟便が続く場合や消化器系の疾患が疑われる場合には、内視鏡検査(大腸内視鏡など)が行われることがあります。これにより、腸の内部を直接観察し、炎症や腫瘍などの異常を確認します。

軟便の治療

軟便の治療は、原因に応じて異なります。一般的な治療法を以下に紹介します。

1. 食事療法

軟便の改善には、食事の見直しが効果的です。食物繊維を適度に摂取し、水分補給をバランスよく行うことで、便の硬さを調整できます。具体的には、次のような対策が有効です。

  • 食物繊維の摂取量を調整: 食物繊維は便のかさを増やし、腸内での水分吸収を助けるため、適度に摂取することが重要です。ただし、過剰に摂取すると逆効果になることがあるため、バランスを保つことが大切です。
  • 水分摂取量を調整: 水分を多く摂りすぎると便が軟らかくなりやすいため、必要以上に水分を摂らないようにしましょう。
  • 脂肪分や刺激物を控える: 脂肪分やカフェイン、アルコールなどの刺激物は、腸の動きを活発にし、軟便を引き起こすことがあります。これらの食品を控えることで症状が改善することがあります。

2. 薬物療法

原因に応じて、薬物療法が行われることがあります。

  • 整腸剤: 腸内の環境を整えるために、乳酸菌やビフィズス菌を含む整腸剤が使用されることがあります。これにより、腸内のバランスが改善され、軟便が解消されることがあります。
  • 止瀉薬(下痢止め): 一時的に軟便を抑えるために止瀉薬が使用されることがあります。ただし、原因が感染症の場合は、止瀉薬の使用は推奨されないことがあるため、医師の指示に従うことが重要です。
  • 抗生物質: 細菌感染による軟便が確認された場合には、抗生物質が処方されることがあります。

3. ストレス管理

ストレスが原因で軟便が生じている場合、ストレス管理が治療の一環として重要です。リラックス法や生活習慣の改善、カウンセリングなどが役立つことがあります。

軟便になりやすい人・予防の方法

軟便になりやすい人

  • ストレスを感じやすい人: ストレスが腸に影響を与えるため、緊張や不安を感じやすい人は、軟便が出やすくなります。
  • 食事のバランスが悪い人: 食物繊維や水分を過剰に摂取したり、脂肪分や刺激物を多く摂る人は、軟便になるリスクが高くなります。
  • 消化器疾患を持つ人: 過敏性腸症候群や炎症性腸疾患など、消化器系の問題を抱えている人は、軟便が慢性的に続くことがあります。
  • 食物不耐症のある人: 乳糖不耐症やグルテン不耐症などの食物不耐症を持つ人は、特定の食品を摂取した際に軟便が出やすくなります。

予防の方法

軟便を予防するためには、生活習慣や食事の管理が重要です。以下に、予防のポイントを紹介します。

  • バランスの取れた食事
    適度な食物繊維の摂取や、脂肪分や刺激物の摂取を控えることで、腸内環境を整え、軟便の発生を防ぐことができます。食事内容を見直し、消化しやすい食品を選ぶことが予防につながります。
  • ストレスの管理
    ストレスが軟便の原因となる場合には、リラックスする時間を持つことや、適度な運動を行うことが効果的です。ヨガ瞑想など、ストレス解消法を取り入れることもおすすめです。
  • 食物不耐症の確認
    食物不耐症が疑われる場合は、特定の食品を避けることで症状を予防できます。乳糖不耐症やグルテン不耐症が原因である場合は、該当する食品を摂取しないように心がけましょう。

これらの予防策を実践することで、軟便を防ぎ、健康的な腸内環境を維持することができます。

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