監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
血便の概要
血便とは、便に血液が混ざった状態で排泄されることで、主に痔や消化管からの出血が原因で起こります。一口に血便と言っても鮮血便や黒色便、ドロドロしたタール便など、出血している部位によって便の色や状態が異なります。
血便の原因となる消化器疾患には大腸がんをはじめとする重大な病気もあり、命に関わる場合もあります。「血便の原因は痔だろう」「すぐに血便が収まったから心配ないだろう」などと自己判断して放置するのは危険です。
血便が見られたり健診の便潜血検査で陽性が出たりした場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。
血便の原因を特定するためには、血液検査やCT検査、内視鏡検査などの検査が行われます。早期発見し、早期に治療を開始することで完治・改善につながります。
またストレスや食生活の乱れなどから過敏性腸症候群を発症し、下痢や便秘が続くことで切れ痔やいぼ痔を発症し、血便を起こすことがあります。ストレス解消法や生活習慣の見直しなど少しずつ工夫して、血便の原因となるものをできるだけ取り除きましょう。
血便の原因
血便の原因は、「痔」あるいは「消化管からの出血」です。
便に血液が混じっていると一般的には血便と言いますが、血便は出血部位によって色や状態が異なります。
痔:鮮血便
痔核(いぼ痔)では排便の刺激で肛門のいぼの部分が出血し、裂肛(切れ痔)では硬い便により肛門が切れて出血します。鮮血便(濁りのない真っ赤な血が混じった便)が出ます。いわゆる「血便」で最も多い原因と言われています。
上部消化管からの出血:黒色便(タール便)
胃や十二指腸、空腸など上部消化管からの出血があると、胃酸の作用で血液が黒くなるため黒色便(ドロドロしたタール便)が出ます。上部消化管からの出血のことを「下血」といいます。
下部消化管からの出血:鮮血便・暗赤色便
下部消化管から出血があると、鮮血便や暗赤色便が出ます。肛門や直腸から出血している場合は鮮血便、大腸や回腸からの出血がある場合は暗赤色便です。
血便の前兆や初期症状について
消化管からの出血があると、貧血症状や息切れ、頻脈、顔面蒼白などの症状が現れることがあります。このような自覚症状がある場合は血便を生じていないかも確認してみましょう。
みぞおちの痛みや不快感、胸やけなどの症状がある場合、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の疑いもありますので、血便が起こる可能性があります。
便に混じった血の量が少ないと、肉眼で確認ができず、自分では血便であるかの判断が難しい場合もあるため、必要に応じて便潜血検査などが行われます。
血便の検査・診断
血便がみられた場合は、血液検査やCT検査、内視鏡検査などを受け、原因や出血部位を調べます。受診の際は、血便をスマートフォンで撮影し、便の色や状態、ほかにどのような自覚症状があるか説明できるようにしておくと診断に役立ちます。
また、鮮血便でない場合や出血が少量のため血便であるかの判断が難しいときは便潜血検査を行います。健康診断でも行われている検査で、目に見えないような血液も検出可能です。
便潜血検査で陽性であった場合は、内視鏡検査でがんやポリープなどがないか確認する必要があります。陰性であった場合も、気になる症状があったり便の状態が以前と違ったりする場合は、内視鏡検査を受けることで大腸がんなどを早期発見できることもあります。
内視鏡検査で大腸がんが見つかった場合は、必要に応じて組織生検を行い確定診断します。
血便の治療
血便の治療は、出血原因に応じて行われます。
消化器の出血は大半が自然に止まりますが、患部の出血が続いている場合はまず内視鏡下で止血処置を行います。
腫瘍からの出血に対しては止血剤噴霧、憩室出血や血管拡張症に対しては止血クリップや焼灼鉗子などによる止血を行います。それでも出血が止まらない場合は、カテーテルによる止血、さらには出血部位の切除などを行うことがあります。
内視鏡検査でポリープが見つかった場合はそのまま切除してしまうこともあります。
痔核に対しては症状の程度に応じて、排便・生活指導や薬物治療などの保存的療法、薬液の注射による硬化療法、痔核を壊死させるゴム輪結紮療法、手術療法などを行います。
早期の大腸がんは大腸内視鏡で、進行がんは腹腔鏡手術で切除することが多く、開腹手術や人工肛門の永久的な設置は少なくなりました。
血便を起こしやすい人・予防の方法
下痢の多い方は切れ痔になりやすく、便秘がちの方は排便時に力が入りいぼ痔になりやすいため、血便を起こしやすいといえます。
特に過敏性腸症候群のある人は、下痢と便秘を繰り返すことで痔になりやすく、肛門からの出血が起きやすいです。過敏性腸症候群は、ストレスや食生活の乱れ、過度の飲酒、不規則な生活などが原因で腸が過敏になり下痢や便秘を繰り返す状態です。
腸の調子を整えるため、コーヒー・アルコール・香辛料などの刺激物、炭水化物・脂質などをとり過ぎないようにしましょう。
参考文献