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乳糖不耐症
五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

乳糖不耐症の概要

乳糖不耐症とは、体内で乳糖を分解するラクターゼという酵素が不足している状態を指します。この酵素が少ないか、その働きが弱いために、乳糖を消化できず、消化不良を引き起こします。症状としては、下痢や腹部膨満、ガスの増加、時には腹痛などがあります。

乳糖不耐症の原因には、遺伝的要因によるものと、年齢とともにラクターゼの生産が自然に減少するものがあります。なかでも、成人に多く見られるこの症状は、小児期は酵素が十分に働いていても、成長するにつれて減少することがあります。

診断は、乳製品を摂取した後の症状の出現や、水素呼気試験を用いて行われます。治療としては、乳糖を含む食品の摂取を避けるか、ラクターゼ酵素を補うサプリメントが使用されます。

治療には、乳糖を含む食品の摂取を避けるか、ラクターゼ酵素を補うサプリメントの使用が推奨されます。市販されているラクトースフリーの乳製品や、ラクターゼ補充剤を使用することで、乳糖の消化を助け、症状の緩和が期待できます。

乳糖不耐症の原因

乳糖不耐症は、乳糖を分解する酵素ラクターゼの活性が低下することで発生します。この状態は遺伝的な要因による一次性乳糖不耐症と、年齢による自然な減少からくる発症後乳糖不耐症に大きく分けられます。なかでも、一次性乳糖不耐症は、アジアやアフリカ、南アメリカの方に多く見られる一方で、北ヨーロッパ系の方には少ないとされています。

また、疾患やその他の医療状況によって引き起こされる続発性乳糖不耐症もあります。胃腸炎やセリアック病、クローン病などが小腸の粘膜を損傷し、ラクターゼの分泌が一時的に減少することによって起こります。

さらに、稀ですが、先天性乳糖不耐症という生まれながらにしてラクターゼを生成できないケースもあります。この症状を持つ新生児には、重度の消化不良や栄養吸収障害を引き起こす可能性があるため、母乳や牛乳ベースのミルクではなく、乳糖を含まない特別なミルクが必要となります。

乳糖不耐症の前兆や初期症状について

乳糖不耐症の初期症状は、乳製品を摂取した後に現れるとされています。なかでも注意が必要な症状として、腹痛、腹部膨満、下痢、時には嘔吐が挙げられます。これらの症状は、乳糖が適切に消化されず、小腸で十分に吸収されないことにより生じます。未消化の乳糖は大腸に到達し、そこで細菌によって発酵され、ガスが発生し腹部の膨満感やガスの多発を引き起こします。

赤ちゃんにおいては、授乳後の異常な泣き方や不快感の表れも乳糖不耐症の兆候となることがあります。この場合、母乳やミルクが原因で消化不良や下痢を引き起こし、体重増加の遅れが見られることもあります。

また、乳糖不耐症の症状は乳製品を避けることで改善することが多いため、症状が現れた後に乳製品の摂取を控えた場合の変化も重要な診断指標となります。

小児に乳糖不耐症の症状が見られる場合は小児科での受診を、成人は消化器内科を受診するのが適切です。症状が日常生活に影響を及ぼす場合は、早めの受診を心がけましょう。

乳糖不耐症の検査・診断

乳糖不耐症の検査・診断は、乳糖負荷試験や呼気中水素測定法を用いて診断されます。

乳糖負荷試験では、患者さんが絶食状態の後に決められた量の乳糖を摂取し、その後の数時間に渡って定期的に血糖値を測定します。乳糖が適切に分解される場合、血糖値は急激に上昇します。しかし、乳糖不耐症の場合は血糖値の上昇が見られないか、緩やかな上昇に留まります。

呼気中水素測定法は、摂取した乳糖が小腸で消化されずに大腸に到達すると、腸内細菌によって発酵されて水素ガスが生成されます。この水素ガスは血液を通じて肺に運ばれ、呼気として体外に排出されるため、呼気中の水素量を測定することで乳糖不耐症の有無を確認できます。

これらの検査を通じて乳糖不耐症の診断がなされた後、類似の症状を示すほかの消化器系疾患との鑑別が重要となります。例えば、過敏性腸症候群や炎症性腸疾患なども似た症状を引き起こすことがあるため、医師はこれらの可能性を排除するために追加の検査を行うことがあります。このプロセスには、詳細な問診、臨床検査、場合によっては内視鏡検査が含まれます。

乳糖不耐症の治療

乳糖不耐症の治療には主に乳糖の回避とラクターゼの補充が中心となります。

まず、乳糖を含む食品、乳製品の摂取を控えることが基本です。一部の乳製品、例えばヨーグルトや熟成されたチーズは乳糖が少ないため、乳糖不耐症の方でも摂取できることがあります。また、市販されているラクトースフリーの牛乳や乳製品も代替として利用できます。

乳製品を避けることが難しい場合、ラクターゼ酵素を補うサプリメントを利用することが推奨されます。これらのサプリメントは、乳糖を含む食事を摂る前に服用することで、乳糖の消化を助け、症状の発現を抑制します。

また、乳糖不耐症の方はカルシウムの摂取にも注意が必要です。そのため、カルシウムサプリメントの摂取や、ブロッコリー、カルシウム強化食品、豆類などカルシウムが豊富な非乳製品の食事への積極的な取り入れが推奨されます。

なかでも先天性乳糖不耐症を持つ子どもは母乳やミルクではなく、無乳糖ミルクへと早期に切り替える必要があります。この切り替えは、子どもの発育に必要な栄養を確保しつつ、乳糖不耐症による不快な症状を防ぐために重要です。医師や栄養士と密接に協力しながら、適切な食品選びを行うことが必須となります。

乳糖不耐症のなりやすい人・予防の方法

乳糖不耐症は、人種、年齢、および健康状態によって発症しやすいとされています。以下の特徴に当てはまる方は注意が必要です。

アジア系・アフリカ系・南アメリカ系の方 乳糖不耐症の発症は、人種によって大きく異なりますが、アジア系、アフリカ系、または南アメリカ系の方に発症しやすいとされています。一方で、北ヨーロッパ系の方は乳糖不耐症を発症しにくいとされています。

成人から高齢者の方 乳幼児期には乳糖を消化するラクターゼの量が多いため、乳糖不耐症は少ないですが、年齢とともにラクターゼの生成が減少し、成人になると乳糖をうまく消化できなくなります。そのため、高齢者は乳糖不耐症になりやすい傾向にあります。

急性腸炎などの腸の疾患にかかっている方 一過性の乳糖不耐症は、急性腸炎などの腸の疾患が原因で一時的に発生することがあります。腸の炎症や損傷はラクターゼの産生を低下させ、乳糖の消化能力が一時的に低下します。

また、乳糖不耐症を予防するためには、以下のような対策が有効です。

感染症予防 感染性腸炎によってラクターゼの活性が一時的に低下することで、乳糖不耐症が引き起こされる場合があります。感染症が流行する季節には、手洗いを徹底する、生の食品の摂取を避ける、十分な調理を心がけるなど、基本的な感染症対策を行うことが予防につながります。

食生活の調整 乳糖の摂取量を調節することで、乳糖不耐症の症状の発現を遅らせる、または軽減できる場合があります。例えば、大量の乳製品を一度に摂取するのではなく、少量ずつ摂る、または乳製品の摂取量を徐々に増やして体を慣らすなどの方法があります。

ラクターゼの補充 乳糖を含む食事を摂る際にラクターゼのサプリメントを利用することで、乳糖の分解を助け、症状を予防できます。乳糖不耐症の症状を感じやすい方が外食時の食事で乳製品を避けることが難しい場合に有効です。

乳糖低減食品の摂取 市販されているラクトースフリーまたは低ラクトースの牛乳や乳製品を摂取することも、乳糖の摂取量を制御し、乳糖不耐症の症状を予防する手段となります。

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